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「そういうことでしたら、お父上としてではなく国王としての立場であられる時に正式に謁見されたほうが良いかも知れませんな」
ふむ。しかし今の状況で謁見の順番に割り込むことはできるだろうか。それができないのならば今夜ヴォイドが屋敷に戻るのを待ったほうが早い。
「情報は鮮度が命、新情報の報告は会議より優先されるでしょう」
「では謁見を申し込むことにします」
「手続きは私が。
その間にお嬢様はお着替えをお済ませ下さい」
考えてみれば旅姿のままである。この姿で謁見室に入ることは・・・できなくはないだろうが時間があるなら確かに着替えたほうが良さそうだ。
頷いて、セルガが屋敷を出るのを見届けてから自室へ戻った。クローゼットにはシエラが選んだたくさんのドレスやワンピースが溢れている。色味の鮮やかなものが多いが・・・なんとか落ち着いたワンピースとジャケットを見つけて袖を通す。
「意外と、育ってるんだなぁ・・・」
ワンピースはともかくジャケットがきつい。主に肩幅が。考えてみれば成長期なのだ。
着れないことはないが、これで王族の正装と言い張るのはちょっと情けない。シエラやエルミラに借りるのも無理があるだろう、主に胸が。スーリヤの自宅にかっちりした服なんて用意していないし、どうしたものか少し考えて、思い浮かんだ一着の服。あれしか無い、と思う。
転移門を開いて自宅に戻り、着替えて再び屋敷へ。
この服を着るのは2度めだが、こういうときに頼りになるのが制服というものだ。そう、スーリヤ高等学園の制服である。日本にいた頃も公の場には制服を着ていけばいいという気軽さに助けられたことは何度かあった。この世界で正装という位置づけになるかは不明だが、華やかなドレスを着るよりはよほど心象がいいはずだ。
それから屋敷でセルガが戻るのを待っていると、それほども経たずに謁見の時間を調整してきてくれた。会議の最中ではあったようだが、私の魔法を秘匿している都合上、会議室で大勢の前で報告するのではなく、限られた数名がヴォイドと共に応接室に出てきてくれるそうだ。さすがセルガ、何も言わずに送り出したのに素晴らしい気遣いである。
セルガに礼を言って王城へと向かう。王城でヴォイドに会うのはー謁見という形で父王に会うのは初めてで、少し緊張する。
応接室は謁見の間の手前にあったはずだ。正直な話、王城内部に出入りした事自体があまり無い。迷ったりしないだろうかと不安になったが、王城の入り口まで行くと近衛の騎士がすぐにやってきて案内してくれるという。考えてみれば、謁見の予定があるからと言っても外部の人間を自由に歩き回らせるはずもない。案内のシステムがあるのは当然だった。
「こちらでお待ち下さい」
騎士はそう言って、入り口のドアのあたりに控えた。
・・・これがアルディア王城の応接室。自国の、住んでいた屋敷の敷地内だというのについキョロキョロと見回してしまう。華美になること無く高級感のある室内には、ソファセットの他にも広いテーブルとふかふかの椅子が並べられている。他国からの使者とはここで会議ができるようにもなっているのだろう、テーブルはいくつかが組み合わさっていて、移動して形を変えられるようになっているようだ。
部屋の様子を観察しながら待つこと10分ほど。現れたのは父王ヴォイドと、老齢の男性が2人、そして見覚えのある男性が2人・・・トリスの旅で護衛を務めてくれていた、リッドとサイファの2人だった。
見知った2人を見て思わず少し顔が綻ぶ。あまり弛緩するのも良くないと慌ててヴォイドに向き直ったが、おかげで程よくリラックスして話ができそうだ。自分でも思っていた以上に緊張していたことに気づく。
「フォルティエラ、ただいまアイゼストより帰還いたしました。
アイゼスト南、ラーサの街にてミュール議会の過半数が開戦派になったとの情報を得ましたが・・・ミュール内部に入っての情報収集は断念致しました故、真偽については定かではございません」
「懸命な判断だ、フォルティエラ。
諜報に長けた者でも危険を伴うであろうからな。
・・・リッドとサイファは存じておるな」
そう言って、ヴォイドは残る老齢の2人を紹介してくれる。
「アルディアの頭脳とも言うべき二人だ。
外交に詳しいモールド=アイヴァン殿と、軍部の参謀であるバラドック殿だ」
「一度ご挨拶致しましたな、大きくなられたものだ」
目を細めて笑うモールドと、静かに臣下の礼を取るバラドック。モールドは確か・・・
「パーティーで、ご挨拶をさせて頂きました・・・ディスト君のお祖父様、ですよね?」
「覚えていてくださったとは、光栄ですな」
笑みを深めるモールド。なるほど、確かあのパーティーの当時もヴォイドの相談役を務めてらしたはずだ。穏やかな笑顔を見ると人のいいおじいさんといった感じだが、立場を知っていると逆にその笑顔が余裕の現れのように見えてしまう。
「バラドック様、末子フォルティエラでございます。
リッド、サイファ、お久しぶりです」
謁見にそれほどの時間は割けないはずだ。挨拶もそこそこに、本題に入ることにした。




