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「まずは私の魔法についてですが・・・」
ここに集まった4人には話してもいいということだと思うが、念の為ヴォイドの顔をうかがう。真剣な顔で頷く父王の姿を確認してから、続けた。
「”転移門”という魔法があります。異なる2地点の空間をつなげ、そこをつなぐ門を作り出す魔法です。
ざっくりと言えば、一度行ったことのある場所であればその魔法で行き来が可能です」
すごくざっくりとした説明だが、わかってもらえているだろうか。わかりづらいようならば後で実践して見せればいいか。
「それを踏まえて、ですが。
検問を通らずに高空を飛んでミュール国内に入り、ミュール東の林で転移門を作れそうな場所を見繕って参りました」
「つまり、姫様はいつでもミュールに入ることができる、と?」
「はい。
それだけではなく、転移門は開きさえすれば誰でも通過できますので」
「諜報員を送り込むこともできる、ということですか」
「その気になれば軍の総員でも」
「それは・・・なんとも規格外な魔法ですな・・・」
アルディアの頭脳と言われるだけあって、モーガンもバラドックも理解が早い。
「この魔法については、魔人の石碑騒動への対処の折にスーリヤの研究者数名には明かしていますが、信頼できる人物に限定しています。
少なくともミュール、アイゼストには転移門の存在は知られていないはずです。
それからもう一つ」
もう一つは、完全に私ともう一人しか知らない。
「私とトリスのザルツ様しか知らない魔導具があります。
手元に予備がないのでこれから作ることにはなりますが、それほど時間はかかりません」
「それはどのような?」
「遠距離で通信が可能な魔導具です。
対になった魔導具を起動することで離れていても会話ができます。
仮に諜報員を送り込むならば、この魔導具があれば逐一情報をやり取りできるかと」
押し黙る5人。
「・・・姫様が、アルディアの姫で良かったですな・・・・・・」
「まったくだ」
「ふむ・・・」
ここまで聞いて腕組みをして考え込むヴォイド。
「フォルティエラよ」
父としてのヴォイドには普段見られない、感情の色の見えない表情。これは娘ティエラに対してではなく、アルディアの民フォルティエラに対しての言葉に違いないと思えた。
「その魔導具を2対、至急製作せよ」
「は!」
「リッド、サイファ。
通信機を受け取り次第、2人にはミュールに潜入してもらう」
「「は!!」」
「急ぎ準備せよ。
モールド、バラドック。会議に戻るぞ」
そうして、短い謁見の時間は終わった。後に残ったリッドとサイファには近況の話なんかも聞きたいのだが・・・そんな時間を取っている場合でもないだろう。
通信機はリッドとサイファが使うことになる。その形状や機能に、私では思いつかない考えがあるかもしれない。2人の意見を聞くことにして、以前工房として使用していた訓練所へと移動した。
どういうことができるのか、できないのかといった説明をした上で、2人から出た意見。やはり話をしてよかったと思える。
まず、一見して魔導具とわからないようにして欲しい、という点。これに関しては問題ない。そもそも私の使う最上級の霊石は、一般にそれが霊石であるということがわからないのだ。
次に、身につけるもので、尚且つ仮に捕らわれても没収されないもの。武器や防具に組み込む形では、何かあった時に手放さなくてはならない。というか、一般人を装って潜入するのであれば、そういった形のものでは不自然だ。指輪でも目立ってしまうかも知れないし・・・服の下に隠せるという点では、ネックレス。あるいはピアス型、がいいだろうか?
2人との打ち合わせの末、2対の通信機は仕様の違うものを作ることにした。
一方は念話型。一方は周囲の音を拾うことができ、相手からの通信は念話で聞こえるもの。電話型と念話型を組み合わせた感じだ。形状はどちらもネックレス型にする。身につけるものにしても、あまり外から見えないほうがいいと思ったからだ。
報告を聞くのが誰なのかも問題になるが、場合によっては録音機能が必須になるかもしれない。今は有事であるから、24時間報告がないか張り付いていることになるだろうから問題にならないのかもしれないが。今後の課題として録音機能は構想を練っておくことにしよう。
「姫様」
「はい?」
いつになく、少しきりりとした表情のサイファ。
「いや・・・かっこいいの、お願いしますよ」
真面目な顔で言うことがそれ!?
何かを、言いかけたように見えなくもないが・・・私は、微笑んで答えた。
「期待しないで待ってて下さい」
打ち合わせはこうして終わり、私はスーリヤ自宅の工房へと戻った。




