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世界樹は夢を見る  作者: 深月
スーリヤ学術都市
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戦争。

この世界は盗賊がいたり魔物が出たり、何かと物騒な世界ではある。武器だって普通に売られているわけだし。

しかし、国家間での争いとは全くの無縁な世界だと思っていた。他国との関係はずっと良好であったし、それは私が転生するずっと前から変わらず続いているものだということも習っていた。アイゼストが統一される前は小国同士の争いはあったそうだがそれだって100年単位で昔の話。

はっきり言って戦争が始まると言われてもピンと来ない。戦争に発展するような理由にも思い当たらない。


「ミュールは何故戦争を•••?」


「さぁなぁ•••俺もそれほど噂に詳しいわけじゃないんでね」


アルディアにもこの噂は流れているのだろうか。いや、元々商人が多い国だ、交易のために外に出る者も多い。まったく流れていないということはありえないだろう。


屋台のおじさんに礼を言い、一先ず落ち着ける拠点を得るためおすすめされた宿へと向かう。まとわりつく重たい空気。これからミュールに入るかどうか、皆改めて思案しているのだと思う。




眠る羊亭はすぐに見つかった。1階が食堂になっていて、昼時を既に大分過ぎているにも関わらずテーブルには食事をとったりゆったりとお茶を飲む客の姿がちらほら。とはいえ混雑のピークは過ぎているのだろう、店員と思しきエプロン姿の少女が空いたテーブルの上を片付ける手を止めてこちらへと向かってきた。


「いらっしゃいませ、お食事ですか?ご宿泊ですか?」


少しふっくらとした少女の三つ編みから覗くのは、ぺたりと垂れ下がった小さな白い耳。羊の耳ってこんなだっただろうか、あまり記憶になくて曖昧だがおそらく宿の名前からしても羊の獣人なのだと思う。


「宿泊をお願いしたいのだが、部屋は空いてるか?」


ゲインが答えると、少女は私達をぐるりと見回してから悩ましげに答えた。


「大部屋一部屋か、それとも部屋をお分けしますか?」


部屋を分けるとなにかと相談しにくそうではあるが•••とはいえ大部屋では恐らく男性陣のほうが気を遣ってしまうかもしれない。申し訳ない気もするが、一人部屋をひとつ取らせてもらおうか。


「4人部屋と1人部屋で分かれることはできますか?」


「ええ、大丈夫です」


「ではそれでお願いします」


2部屋お願いして鍵を受け取る。客室は2階になっているようで、一先う4人部屋の方に集まって作戦会議だ。


「さて、問題はミュールに入っていいものかどうか、だ」


「ティエラに危険がある可能性がありますし、僕は反対です」


ザルツが反対を真っ先に唱えた。私の出自がばれると確かに厄介なことになるかもしれない。その場で捕らえられて人質に、なんてこともあるかもしれない。・・・大人しく捕らえられるつもりは毛頭ないけれど。


「俺も反対、だな」


カナデは?とギィがこちらを向く。


「気持ちは半々、ですね・・・」


少し意外そうな表情を浮かべるギィとザルツ。私、そんなに無茶しそうですかね?


「今のうちにミュールに入って情報収集をしたいとか、ミュールに入れるルートを確保しておきたい気持ちは強いです。

かといって皆を危険に巻き込む可能性があるというのが」


「自分の危険はどうでもいいあたり、やっぱりティエラでした」


少し慎重になってくれたかと思ったのに、と嘆くのはザルツである。・・・私そんなに無茶してますかね・・・?


「入るだけなら検問を通らなくても、気づかれないくらい高空を飛んでいけばいいと思うけどね。

情報収集はちょっと無茶なんじゃない?」


ハルの言葉も尤もかもしれない。ちょっと飛んでミュールに入って、空間転移の転移先を見繕って出てくるというのは1つの手だ。


「まあ、ハルの提案が妥協点だとは思うが・・・

入ったところでルートの確保ができるとは限らんだろ?」


ゲインとハルには空間転移のことを伝えていない。ザルツに話していいかうかがうように顔を向けると、小さく頷いてくれたので簡単に説明することにした。



「・・・なるほど、便利な魔法だな」


「カナデ、それあとで教えてよね」


確かにハルになら使えるかも知れない。


「今までなんとなく秘匿してきた魔法ですが・・・

今の状況であれば私の魔法や魔導具は強みになるのかもしれませんね」


そう、空間転移もそうだが、通信の魔導具をアルディア用にいくつか作ればそれだけでもかなりのアドバンテージが得られるだろう。仮にミュールと本当に戦争になった場合、陸路では直接トリスにも、アイゼストにも渡ることはできなくなる。一度西の国に入ってミュールを迂回すれば入れないことはないが、かなりの時間のロスになってしまう。あとは海路でトリスに入るルートもあるが、物資はともかく情報をそれらの経路でやり取りしていては時間がかかりすぎる。


「では、ハルとティエラでこっそりトリスに入ってすぐに戻る、ということでいいですか?」


「了解」


「はい」


「ハル、ティエラが無茶しないように監視お願いしますね」


・・・私そんなに無茶・・・してきたんだろうなぁ・・・

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