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「カナデどのには負担をかけるが、よろしくお願い申し上げる」
「ええ、必ずすぐにロロを送って報告致します」
遺跡から南下すると、途中精霊の泉のある森が西側に少し逸れたところにあるらしい。例の魔物増加の原因を探るべく、帰路で立ち寄ることになったのだ。
将軍と兵士たちに見送られ、私達は遺跡を離れた。馬車を置いてあるところまで、再び浮遊しながらもと来た道を進む。
「問題はあの魔力充填量でどれだけ先延ばしできるか、だなぁ」
そう、兵士たちの前では口には出せなかったが、問題の先送りしかできていないのだ。いっそ私やハルがいる今、あの場で封印が解けるのを待ったほうが根本的解決としては正解だったかも知れない。
とはいえここはトリスやアルディアとは違う。アイゼストには軍も騎士も精鋭揃いだという自負があるだろうし、現在王都では魔人討伐のために自国内の転生者を掻き集めてもいるらしい。討伐の準備が整うまで時間稼ぎができればいいというのがアイゼスト側の姿勢なのである。
尚且つ自国の問題を他国の人間に全て任せてしまうことは、アイゼストの場合国内の不和に繋がりかねない。元々小国が現在の王を認める形で一国を成しているのだ。王の手腕に疑問を抱かれて元の小国単位でアイゼストからの離脱、再び小競り合いの日々となっては最悪のケースと言える。つまり私達はあくまで協力者という立ち位置でアイゼストの面子も気にして動かなければならないわけだ。
「次の一報が討伐完了の報せであることを祈るのみ、ですね」
ようやく馬車の場所まで帰りついた私達は、再び馬車に揺られ今度はまっすぐ南を目指した。来るときには大分無茶をしたものだから、遺跡に行っている時間は馬たちにとってはいい休憩時間となったようだった。帰りはあまり急がず、こまめに休憩を取ってあげたいものだ。
「ロキに会うのは久々ね!」
無事精霊の泉があるという森に辿り着き、皆が野営の準備をしている間に私は泉へと向かう。レイも実体化して一緒だ。
「怪我したりしてないといいのだけど・・・」
「そうね、心配だわ」
泉には誰もおらず、冷たい空気だけが静かに流れていた。これでは話をしている間に体が冷えてしまう。
レイと自分の周りの空気だけを暖め、どこかに座っては腰が冷えそうだったので空中に小さな結界のブロックを作ってそこに腰掛けた。これで少しは落ち着いて話ができるだろう。
『ロキ、久しぶり』
念話で話しかけると、いつもの明るく元気な少年の声が頭に響いた。
『ティエラ!レイも!来てくれたんだね!』
『久しぶりね、ロキ!』
声音からは怪我をしたりしているようには思えないが・・・
『ねぇロキ、どこかまた痛いところがあったりしていない?』
『うん、大丈夫だよ?』
やはり元気そうだ。ならば北の魔物の増加というのは世界樹とは関係がないということか。
『そうだ、ティエラ!
ティエラは、ニホンっていうところから来たの?』
『ええ、転生前は日本という国にいたけど・・・
どうして知っているの?』
『夢で見たんだよ!
ニホンっていうところで、なんだかよくわからない物に囲まれて、カナデって呼ばれてて・・・えーと・・・なんだかつまらなそうな顔してた!』
つまらなそう・・・確かに今と比べて色んなことに希望を持っていなかったし、人間関係もとても希薄ではあった。他者から見るとそんな風だったのか、それは随分と感じの悪かったことだろう、それにしても・・・私の記憶を夢で見たのだろうか?レイを通じて世界に返したという記憶を、ロキが見たということだろうか。
『ロキは、夢で他の人の記憶を見たりするの?』
『うん!多分色んな人の記憶なんだと思う。
ティエラはレイにカナデって呼ばれてたから、これはきっとティエラの記憶なんだなってわかったんだよ!
僕は動けないから、誰かの記憶を見ていろんなことを知るんだ』
なるほど、世界樹が記憶をほしがっているというのはそういうことか。どこかに行って何かを体験することもできないから、他人の記憶を見て疑似体験するわけだ。それをどれだけの長い年月我慢しているのか。自分だったら耐えられるだろうか?
『そういえば、他にも懐かしい夢も見たよ』
『懐かしい?』
『うん、あれも誰かの記憶なのかな?
お父さんが出てきたんだ』
ロキの父親・・・魔人たちを封印し、世界樹を作り出した魔道士、だろうか。
『・・・詳しく聞いてもいい?』
『うん!
僕のお父さんはね、すごい、すっごい魔法使いだったんだ!』
父親の話をするロキは、嬉しそうだ。今の状態になったことで父親を恨んだりしたことはないのだろうか。ロキが純粋さを保っていられることが奇跡だとすら思う。
『でも、僕が生まれた頃から少しずつ魔法が使えなくなっていったんだって。
お父さんは、世界の魔力がこかつしてる、とか言ってたけどよくわからなかったな。
それでも色んな魔法が使えて、空を飛んだり海の中を散歩したりしてたんだ!
すごく楽しかったんだけど、お父さんは段々悲しそうな顔をすることが多くなって・・・
僕が、病気になっちゃったから』




