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世界樹は夢を見る  作者: 深月
スーリヤ学術都市
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「では、始めます」


少し緊張した声音のギィの宣言とともに、魔導具が起動された。何度もテストを繰り返していたとはいえ、実際に魔人の復活を左右する現場では張り詰めた空気がある。


魔力充填の魔導具は、音もなくセットされた霊石から魔力を吸い上げ、石碑へと魔力を送っていく。石碑に変化は、ない。なんらかの力が働くことで人為的に封印が解けてしまうかもしれない、というのが最大の懸念材料であったが、無事何事もなく魔力充填を行えているようだ。


パキン、と軽い音を立てて最初にセットした霊石が割れる。ギィは魔力の充填速度を、充填先の霊石が割れないギリギリのスピードに設定するために、何度も魔導具に改良を重ねていた。そのため魔力の供給は霊石を作成する場合よりも大幅に早い。小さな霊石ならば魔力を吸い出しきって割れてしまうまでそれほどの時間はかからないのだ。

それでも、やはり石碑に変化はない。何度か同じ工程を繰り返し、特に問題はない。安全性は確認できたと言えると思う。

唯一の問題は、果たして本当にこれで封印を長引かせることができているのか、というのが不明瞭であることだ。これまでの実験から魔力が充填されていることは確かなはずだが、その供給した魔力が元のどれくらいに当たるのかがわからない。霊石としてはかなり巨大な石碑が黒色化するほど魔力を持っていたのだから、小さな霊石を大量に費やしたところで焼け石に水だろうとは思う。現状では無いよりはあったほうがいいのは確かだが・・・


「ギィさん、これを」


そういって、私は自分では魔法の付与を断念してお蔵入りしていた大きな最上級品を差し出した。


「・・・これ、使っていいのか?」


「霊石にしたはいいものの、大きすぎて付与ができないんです。

なので気にせず使って下さい」


「カナデ殿、この対価、必ずお支払する」


使えないものだし惜しくもなんともないのだが・・・巨大な霊石自体貴重なものだし使うのが躊躇われるのだろう。手に持ったまま躊躇するギィに、私はもう一度使って下さいと伝え、他の霊石がはいった袋を取り出す。勿論、ザルツのマジックボックスから取り出したように装って、自分のマジックボックスから取り出した。なんだかもう色々明かしているしマジックボックスの秘匿も必要ないような気はするのだけれどね。


取り出した袋の中には3cm級の霊石から1cm程度のものまで、全て最上級品が多数入っている。バイゼル将軍が持ち込んだ霊石は良くて濃紺のものばかりだったので、恐らく充填できる魔力の総量で言えば私の霊石のほうが遥かに多いはず。今は取り敢えず出来るだけ早く、出来るだけ多くの魔力を充填できたほうがいい。霊石をセットしなおす時間のロスですら惜しいのだ。


「大きいものから先に」


袋ごと、ギィではなくバイゼル将軍に手渡す。

安全性が確かめられた以上、いつまでもギィが操作をする必要はない。今後の作業はアイゼストに任せて、私達は先に戻ることになるだろう。ならば私達がいるうちにしっかりと操作を覚えてもらうべきだ。といっても指定の場所に霊石を入れて起動するだけなんだけれど。それでも技術者に質問できる状況で一度魔導具に触れておくことが無駄だとは思わない。


「うーん、それにしても残存魔力を測る魔導具なんかが欲しいところですね・・・」


魔力充填の魔導具を作る際も、魔力がきちんと供給されたかどうかは霊石が割れるまでの時間が延びたかどうかで判断していた。どれくらいの残存魔力になったかがどうしてもわからないのだ。魔力を測る数値基準がないので、それを確立するかあるいは割合だけでもわかれば今後の実験にも役立ちそうなのだが。


バイゼル将軍を始めとし、兵士たちが次々と魔導具を起動させ魔力を充填していくのを眺めながら、私とギィはそんな話をしていた。ザルツとゲインは相変わらず日記の解読に集中しており、その手伝いをしていたハルが、ふとこちらの会話に口を挟んだ。


「乾電池の残量を見る機械なんてあったっけ?

でも携帯電話のバッテリーとかは%表示されてたっけな・・・」


その言葉に、ギィは何を言ってるんだ?と怪訝な顔をしたが、私にとっては衝撃の一言である。


「もしかしてハルさんって。

・・・元日本人ですか?」


これまでなんとなくそうかもと思っていた疑問を、ついついぶつけてしまった。乾電池とか携帯電話とかバッテリーとか、少なくともこの世界にはないし、そもそも電気という概念がこの世界にはない。せいぜい雷がエネルギーを持っていることがわかっている程度だろう。魔法が発展している分科学はそこまで進んでいないのだ。ならば転生前の記憶なのだろうけれど、他のファンタジー世界に同じような言葉があるとも思えないし、地球出身、あるいは科学文明が発展した世界からの転生者であると考えるのは当然だ。


「あー、名前からなんとなくそうかもと思ってたけど、カナデもやっぱそうなんだ」


ハルもまた私に対して同様の疑問は持っていたようだ。

異世界の知り合いの出身(?)が同じとは、なかなか不思議な縁である。

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