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バイゼル将軍にギィ、ゲイン、ハルを紹介すると、私達はすぐにまた馬車に乗り込んだ。バイゼル将軍が同行することになり、詳しい話は道中でということになった分王城に長くとどまる意味もなくなったのだ。
事前にトリスから手紙で伝えていたため、バイゼル将軍はアイゼストでかき集めたという霊石を用意してくれていた。結構な数になるそれを全て使っても、恐らくフル充電には満たないだろうが、充填する魔力は少しでも多いほうがいい。
「ところでカナデ殿、世界樹の様子に変化はなかったであろうか?」
「最近はあまり精霊の泉に行っていないので・・・
なにか気になることが?」
しばらくロキには会いに行っていない。最後に話した頃には特に変わりはなかったように思うが、バイゼル将軍が理由もなしに世界樹のことを聞いてくるとも思えなかった。
「うむ・・・
西の最果てではその後魔物が増えたという報告はない。
恐らくやはり西の異変は世界樹の傷が原因だったのだろう。
一方、アイゼストの北部では魔物の目撃例がここしばらくで随分と増えているのだ」
なるほど、アイゼストの魔物の増加も世界樹に異変があったからではないか、ということか。それも捨て置けない問題だ。
「鬼の石碑の件が落ち着いたら、ロキに会いに行ってみます」
後回しになってしまうのは心苦しいが、今は石碑が最優先だ。それでよろしいですか?と将軍の顔を窺うと、彼は頷いてくれた。
「アイゼストの問題であるのにカナデ殿には申し訳ないが、どうかよろしく頼む」
その後、2体の魔人が出現した時の状況やその力などを将軍に説明しているうちに、その日は夕暮れを迎えた。
バイゼル将軍の案内によって遺跡があるという渓谷に辿り着いた私達は、ひたすら川辺を上流へと向かって歩いていた。小さな石が積み重なって非常に歩きづらい。馬車が入れるはずもなく徒歩での移動になったわけだが、途中から私とハルはふよふよと空中を移動している。とはいえそのペースは他の4人に合わせているわけでかなり遅いペースだ。
「うーん・・・これは時間の無駄かもしれませんね」
「ボクたちは楽だけど、この足場じゃ疲れるよね」
「地面に障壁を張って平らにします?」
「それよりも4人抱えて飛べないの?カナデ」
確かに地面を均して歩くよりも飛んだほうが早そうだ。
「・・・嫌な思い出が・・・」
ザルツが苦々しい顔をしているのは、以前抱えて飛んだときのことを思い出してるからだろう。
「いや、今回は高いところ飛びませんから」
「それなら、まぁ・・・」
了承を得たので、早速全員を障壁で包んで、障壁ごと地上1mほど浮かび上がらせる。これでかなりペースアップするはずだ。
「バイゼル将軍、案内お願いします。
速度はハルさんに合わせますね」
「ボクそれなりにスピード出せるよ?」
「なんとかします!」
その言葉を受けて、ハルは一気に加速を始めた。うん、なかなかの速度。けれど風を思いっきり受けてしまっていて見ているこっちが寒くなる。ハルの周囲にも風よけの障壁を展開し、私もまた加速した。馬車より早いペースで上流へと向かっていくと、下に見える石が少しずつ大きくなって、段々岩が転がる風景へと変わる。川を囲む山にはあまり木々がなく、荒涼とした雰囲気だ。
「そろそろ見張りの兵士が見えてくる頃かと思う。
・・・しかし随分と楽をさせてもらってしまった、カナデ殿、礼を言う」
「お気になさらず。
ああ、確かに人影が」
ハルもまた人影に気づき、少し速度を落とした。駆け足くらいの速度で近づくと、その人影は確かにアイゼストの兵士のようだった。
「バイゼル将軍!皆様もお待ちしておりました。
遺跡はこちらです!」
兵士はびしっと敬礼し、地面に降り立った私達を案内してくれる。ぞろぞろとついていくと、兵士が指し示した場所は山肌に面した大きな岩だった。
「こちらから中に入れます」
「石碑はどうか」
「はっ!特に変化はございません」
どうやら間に合ったようだ。やっと少しだけ安心できる。
岩に隠されるように、山肌にぽっかりと空いた穴。そこから中に入ると、広いドーム状の部屋が広がっていた。壁は石を積んで整えられており、中は兵士たちの持ち込んだ魔導具で既に明かりが設置されていた。
その中央に鎮座する、黒い石碑。私達は素早く刻まれている文章を確認すると、確かにトリスで報告を受けた通り、”ここに眠るは鬼”の文字。目的の石碑に間違いない。
「ギィ、早速始めましょう」
そう言ってザルツはマジックボックスからギィの作った魔導具を取り出した。例の、いわゆる充電器である。
ギィはそれを受け取ると石碑の前に設置し、将軍と兵士たちに使い方を説明しながら準備を整えていった。バイゼル将軍の持ち込んだ霊石を手に取り、セットしていく。あとは魔導具を起動させれば、充填用の霊石が割れる度に新しいものをセットして再稼働させるという単純作業の繰り返しになる。まずはある程度魔力を補給して、”鬼”の復活を阻止しなくては!




