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世界樹は夢を見る  作者: 深月
スーリヤ学術都市
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「ボクが呼ばれたのはそーいうわけか、なるほどね」


背もたれにもたれたまま、ハルは納得の表情を浮かべた。魔人との戦いを経験した彼だ、慎重に判断を下してくれるだろう。


「いいよー、了解」


慎重に・・・判断?

ちょっとお遣いを頼まれたかのような気安さで、ハルは即座に答えた。


「・・・いいんですか?」


「うん、いいよ」


ハルの周りではその言葉に同意するかのように、アキが優しい表情で飛び回っている。


「仮に複数の魔人が復活したとしたらカナデだけじゃ手が足りないでしょ。

悪いけどその辺の兵士や騎士でなんとかできるとは思えないしね。

アイゼストの転生者たちの実力は知らないけど、さ」


魔法研に在籍していたこともある彼は、周囲の魔法の実力を知っているはずだ。そして彼自身の魔法がずば抜けているということも。その上でこの発言をされると、アイゼストの兵士たちのことが心配になってしまう。それくらい、ハルの言葉には重みがあった。

さらに、私が出会った転生者、つまりあの旅で一緒だった4人のことを考えると、正直あまり頼りにできるとは思えない。安請け合いして大丈夫かという心配もあるが、ハルが同行してくれるという安心感は大きい。


「ありがとうございます、ハル。

では早速僕はティエラと王都へ。特殊な交通手段を取りますので、すぐに戻ってきます」


そうして緊急会議は解散となった。

私とザルツはすぐに転移で王都へ移動し、モーガンとの約束を取り付けて、一息。


「なんだか一気に、動き出しましたね・・・」


「ええ・・・」


急すぎて心の整理もついていない。なんとかしなくてはという思い、何故私が渦中にいるのかという疑問、これから起こる出来事への不安、そして恐怖。

スーリヤに住む前ならば、きっと完全に他人事だった。アルディアに差し迫った危機はなく、ザルツが関わっていると聞いたとしても実感なんて無かったはずだ。

しかし、私は出会ってしまった。二人の魔人に。その危険性を知ってしまった。

それ以上に、私は人と関わりすぎた。スーリヤに住む人々の多くはトリス国外の出身だ。そしてそういう人たちが多い分、国の区別の意識があまりない。国同士の垣根が低い、とでも言えばいいのだろうか。何か新しい発見があればそれは”世界的な”話であり、何か問題があればそれもまた”世界全体の”問題なのだ。勿論各国の歴史や文化を研究する者もいる。全体のひと握りであるそう言った人たち以外にとっては、国という単位はあまり意味がないのである。そして私にとっても、既にそれは同じ。アイゼスト国内で終わる話だとは思えないというのもあるが、他人事でいられる心境ではないのだった。





「ザルツ、待たせてすまない」


謁見の間ではなく、直接王城の執務室に案内された私達をモーガンは厳しい顔で迎えた。既に2人の魔人が自国で出現しているのだ、彼にとってもこの魔人騒動は決して他人事ではない。


「それで、石碑の内容は?」


「ああ、これがアイゼストからの書簡だ。

手紙に記載できればよかったのだが、描き写して万一間違ってしまうわけにもいかなくてな・・・」


「解読を急ぎます。

スーリヤでは既にアイゼストへの出発準備を始めてもらっています」


「すまぬな、お前と小さな姫君に重荷を背負わせて・・・」


苦々しげな表情に浮かぶ憂いの理由は、私達への気遣いであったようだ。それでもザルツを頼らざるを得ないのは、ザルツの人柄や実力だけが理由ではない。広く事件を公表してしまえば世界中がパニックに陥る可能性もある。だからこそできるだけ今いる人材で内々に事を進めなくてはならないのだ。


「復活を阻止する方向で動けるのはモーガン様がアイゼストと交渉してくださった結果なのですから。大変なのは同じでしょう?」


「ティエラの言う通りですね。

折角事前に手を打てるのです、復活する前にアイゼストにたどり着かなくては。

慌ただしくて申し訳ありませんが、すぐにスーリヤに戻ります。

・・・吉報をお持ち出来るよう全力をつくして参ります、兄上」


「ああ、頼む。頼りにしておるぞ、2人とも」


少し微笑んでみせて、私達は執務室から直接研究室へと戻った。




帰ってすぐに、私達のチーム総出で解読に取り掛かった。石碑の文章自体は同じで、解読すべき部分はほんの一部。しかし一番重要な部分である。

解読表に対応する文字の記載はなかった。そうなるとこの短い文章では糸口が見つからない。そこで、遺跡から発掘された本の数々をひたすらめくり、同じ文字が載っていないかを必死で探すところから始めた。

途中ゲインたちとミーティングを行い、出発は2日後に決まった。それまでに解読できればいいが、できなければ遠征後の持ち越しになる。封印されているのだから魔人の特徴がわからなくても復活を阻止することができればそれでいい。しかし間に合わなかった場合のことを考えれば、事前に情報があるに越したことはない。


「ありました!しかもこの記述は、恐らく5人の魔人に関するものです・・・!」


ザルツが手に持っていたのは、一冊だけタイトルの無かったもの。ーーー日記、であった。

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