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世界樹は夢を見る  作者: 深月
スーリヤ学術都市
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ここしばらく、私達はそれぞれの個室に篭っている。ザルツのマジックボックスから出てきた本のいくつかを解読しているのだ。

といっても私は東の森の調査報告をまとめたり霊石についての論文をまとめたりでまだ解読に参加できていない。


私を除く3人が解読を進める中、もっとも注目されている一冊がある。それは書籍ではなく、立派な装丁のノートに書かれた日記。タイトルがつけられておらず、中身も手書きであったために一部を解読してみたら日記であるということがわかったのだ。これに関してはザルツが最優先で翻訳を急いでいる。

石碑があったことを考えると、あの森の中の遺跡も古代文明末期の遺跡であると予想される。日記の内容によっては古代文明の滅びの様子がわかるかもしれないのだ。


解読にはどうしても時間がかかる。既にわかっている文字であれば解読表を使って翻訳が可能だが、書籍一冊、あるいはノート丸一冊ともなるとそういう文字ばかりではない。地道な作業を続ける間に九の月にはいり、ザルツは21回目の誕生日を迎えた。節目は去年やったので、と今回は王都に戻ることもなかったため、それならばと4人でささやかな祝いの食事会。・・・という名の飲み会が開催された。


「「「誕生日おめでとう」」」


乾杯から始まった飲み会は、4人だけとはいえ賑やかだった。最近はデスクワークばかりでストレスが溜まっていたのだろう、ソルの日であることも手伝って、大人3人はダメ街道まっしぐら。まあ祝いの席なのだし多少ダメになっても構わないが、多少で済むかどうか怪しいペースである。


「いやー酒がうまい。久々だから余計うまい!」


ロッシュの尻尾がふりふりと揺れている。この中で恐らく一番行動派のロッシュにとって、連日のデスクワークはなかなか辛いものがあるようだ。


「料理来たー!お腹減ってもう死にそうだよー」


嬉々として自分のお皿に料理を盛るウルド。本当に一体どこに栄養がいっているのか。


「あ、ウルド!ちゃんと残しておいてくださいね?」


ウルドの勢いに危機感を持った今日の主役が釘を差す。主役だからって先に取り分けてもらえるなんてことはないのである。


こういう席ではできるだけ研究に関する話はしないことにしている。必要ならばミーティングで話せばいい。飲み会に雑念は不要なのだ。

そして雑念を取り払って飲んで食べて話して、結果として生まれたのは3人のダメな大人たち。とはいえ自力で帰れそうな状態ではある。以前のように魔法で運ぶ羽目にはならずに済んだようだった。


翌日はザルツの自宅でゆったりと過ごした。私が焼いたケーキはやはり好評で、幸せそうに頬張るザルツの姿は年相応、あるいはもっと若く見えるほど。砂糖はさほど高価ではないのに生菓子があまり普及していないため、特別な日の物、という意識は日本に居た頃より強いのかもしれない。


週があけるとまた古代文明文字と睨み合う日々。日々はあまりにも平穏だった。ある日、王都からのロロが到着するまでは。




その日、ザルツ主導の緊急ミーティングでは見知った顔が集まった。ゲインにギィ、そしてハル。呼び出されたハル自身は、何故自分まで呼ばれたのかわからないといった様子だった。元々水中調査チームとの共同研究は多くない。にも関わらずハルが呼ばれたのは、事態を重く見たザルツが、以前私が言ったことを考慮してくれた結果だろう。


「兄上から報告が届きました。

アイゼストの北西で石碑が見つかったそうです」


ロロが届けた手紙に記されていたのは、アイゼストの調査報告。私達が待っていたような、しかしこのまま忘れていたかった、石碑の確認報告である。


「・・・石碑の状況は?」


魔人に遭遇しているゲインやハルの顔は険しい。一方のギィは、事態の深刻さは理解してはいるのだろうけれどどこか少し他人事。


「幸い、無事です。既に警備、及び討伐隊が派遣されているそうです」


全員から漏れる、安堵のため息。

石碑が無事だということは、すなわちギィの出番である。


「石碑に刻まれた文字については、すぐに王都に行って確認してきます。

その間にギィ、例の魔導具の完成を急いでください」


「カナデの助言のおかげで機能は問題ない物が出来てる。

問題は供給元になる霊石が不足してることだな。

膨大な量の供給が必要なんだろう?」


既に魔導具に魔力を供給する魔導具、それ自体は完成しているようだ。霊石については・・・


「私がストックしている霊石は全て出します」


今でも魔導具作りは続けているため、暇さえあれば霊石を作るという習慣は変わっていない。以前のように授業の時間も全てそれに当てるようなことはできなくなった分ペースは落ちてはいるものの、それなりの数はあるはずだ。

死蔵している巨大な霊石もある。多少の足しにはなるだろう。


「ゲインは遠征準備の指揮をお願いします」


「任せとけ」


そして、残る一人、ハルは。


「ハル、これは研究とは関係のない依頼になってしまいます。

危険が伴いますし勿論断って頂いても構いません。

・・・遠征に行くメンバーの護衛、そして万が一の場合には魔人の討伐を手伝ってもらえないでしょうか?」


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