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世界樹は夢を見る  作者: 深月
スーリヤ学術都市
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マジックボックスから出現した品々は、ティーカップ1つ、お皿の1枚ですら素晴らしいものばかりだった。価値がある無いは詳しくないのでわからないが、描かれている絵は緻密で繊細でとても美しい。そんなたくさんの品々を前にその目録を鋭意製作中である。

ふと、ザルツが何かに気がついたように顔を上げた。何か気になる物でもあっただろうか?


「ティエラのマジックボックスに収納すれば、目録いらなくないです?」


盲点だった。

私のマジックボックスには備忘録的な機能がついている。それを利用すれば確かに目録などいらないような気がする。


「いやでも、大量に中身が浮かんでくると他のものを探すのが大変になりそうな気も・・・」


「あれ使いましょうか、猫の小箱。

分けておけば問題ないですよね」


うん、どうせマジックボックスは量産できるのだから、分けておけるならそれに越したことはないのだ。なんとも贅沢な話だけれど。


「本の目録だけは作っておきましょうか。

研究室に持っていくことになるでしょうし、そうなるとザルツ様のカバンに入れるでしょう?」


「様付けはやり直しですけど、そうですね。そうしましょう」


久々に聞いたフレーズに思わず笑みが溢れる。

しかし本だけでも数十冊はある。しばらくは解読表と格闘することになりそうだ。


「いくつか小箱型のマジックボックスを作っておいてもいいかもしれないですねぇ。家具用、食器用、タオル用・・・至るところに置いておけばお家が広くなりそう」


「十分広いですけどね。

それにティエラの屋敷はあまり物がないでしょう」


「おっしゃる通りで」


「魔導具のアイディア探しですか?

それなら・・・そうですねぇ、空間転移と異空間収納を利用して異空間ルームを作ればお家が際限なく広くなりますね」


「おもしろいですね、それ」


うまく作れれば、遠征中の野営なんかで快適に過ごせるどこでもルームみたいなものができるかもしれない。問題は出入り口だけ外に露出することだろうか。寝ている間に出入り口が壊れて出られないなんてことになったら目も当てられない。

いや、単純に転移先のマーカーみたいなものを設置して自宅に戻ればそれでいいような。うん、転移マーカー、いいかもしれない。要所要所に設置しておけばいちいちその場所を思い浮かべてなくても入り口を開けるようになるのではないだろうか。


「何か、浮かびました?」


「おかげさまで!」




研究室では、なんとか出来上がった目録を片っ端から解読し始める作業が待っていた。本のタイトルだけ先に翻訳し、目ぼしい書籍をリストアップしてから中身の翻訳に入る予定だ。タイトルだけならば既存の解読表だけでもある程度は翻訳ができる。目ぼしいものを、とは言ったものの、どの本もその道の研究者が見れば喉から手が出るほど欲しい代物ばかりだ。


「そういえばさー、そろそろあれじゃないー?」


「ああ、あれか。面倒くさいなぁ」


ウルドとロッシュの言うあれとはなんだろうか。


「うちは募集してないんだしー、外してくれてもいいのにねー」


全く話が見えない。素直に聞いて見るに限る。


「あれってなんですか?」


「あれだよー、高等学園の生徒の研究棟見学ツアー」


そんな行事があったのか。初耳。


「確か1年生は強制参加なんだよねー。だからぞろぞろいっぱい来るんだよー」


高等学園の1年生は、研究棟を見学して自分がどの授業を選択していくかの判断材料にするため、強制参加なのだそうだ。2,3年生は任意での参加になる。研究員を募集している研究室は猛烈アピールするべく気合が入るが、そうでない研究室にとっては面倒なだけの行事。特にザルツの研究室はザルツの講義の人気も相まって非常に高い。その割に研究員の募集は一切していないのだが、それでも見学ツアーにはお付き合いしなければいけないのだとか。そして無理やり存在しない枠に入り込もうと必死にアピールしてくる生徒も多いらしい。

そもそも研究棟の見学は、全く無いわけではないがこのツアー以外でその機会を得られる者は少ない。私はザルツの紹介があったから簡単に、しかも数日に渡って見学をさせてもらえたが、それは特例と言ってもいい。

私が数日に見学を分けたように、研究棟には数多くの研究室がある。それを全ての生徒が全て見て回ることになるので、その日数も一週間と非常に長い。確かにお付き合いだけされるほうとしては勘弁してくれと言いたくなるのもわかる。


「そんなのがあったんですねぇ」


しみじみと言ってしまう。


「何か準備とかするんですか?」


「いや、うちは毎年質疑応答だけだから、なにも」


それならばそこまで面倒臭がるものでもないように思うが・・・いや、研究が一週間ストップするだけでも確かに勘弁してくれ、だけども。


「毎年数名は爆弾がいるんだよなぁ」


「今年は既にあからさまなのが、いるしねぇー」


研究棟にまで名を轟かす1年生がいるのか・・・

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