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魔人の封印が解けた石碑は2箇所。残り3箇所については、トリス国外にあるのではないかと言う推測が立てられていた。その根拠はただ単に、トリス国内の遺跡は既にかなり発掘されているから。学術都市を擁するだけあって国内では多くの遺跡が発見され、そして発掘されている。それに比べて国外は手薄だ。特にアイゼストは面積も広く、そのほとんどが古代文明時代の土地と目されているため、アイゼストの遺跡に注目が集まっている。
トリス国からの要請を受けて、アイゼスト国内では遺跡の捜索が行われている真っ最中だ。かといってそんなにすぐ見つかるようなものではない。仮に石碑があるとしても、魔人の復活による何かしらの被害があってから見つかることも大いにありうる話だ。
そんな状況であるために、各国から戻ってきたロロによって届けられた手紙には石碑の扱い方や遺跡の保全に関わる情報を求めるものは無く、そもそもどういったところに遺跡があると予想されるかという質問ばかりが寄せられた。トリスの2箇所の石碑はまるで意図的に隠されたような遺跡に存在していたため、この傾向についてはザルツが既に各国に伝えている。
今は遺跡発掘チームが必死にアイゼストの地図とにらみ合いを続けている状況だ。幸い魔人復活の報は未だ無い。
少なくとも遺跡の発見があるか、そうでなくとも大体の位置に予測が立てられるまでは、私達のチームにできることは殆ど無いため、魔導具研究チームと協力して”起動中の魔導具の霊石に魔力を充填する方法”を模索しているところだ。
これも、既にすべての石碑が割れてしまった後ではなんの意味もなさなくなってしまうが、何もしないよりは、マシだった。
「そういえば、マジックボックスの話ですけど」
「ああ、そういえばそんな話してましたね」
ずっと気になっていたザルツのマジックボックスの中身だが、どうにか確かめることは出来ないだろうか。
「使い方はどんな感じなんですか?」
「ティエラのマジックボックスは、出し入れしたい物に命令する形じゃないですか。
そうではなくて、それが出入りする様子を映像として思い浮かべることで起動するんです」
ふむ、なるほど。道理でザルツのカバンから鍵を取り出そうとしてもできなかったわけだ。
「試させてもらってもいいですか?」
「ええ、どうぞ」
私はザルツのカバンを借りると、それを肩からかけて蓋を開ける。適当にそのへんに転がっていたペンを手に取り、マジックボックスに吸い込まれる様子を想像する。
「おお、こういう方法もあるんですねぇ」
見事にカバンに収納されたペンを、今度は取り出してみる。カバンからペンを掴んで引っ張りだすような様子をイメージすると、ペンは私の手の平に現れた。
「なんとなく出したいものの姿形がわからないと想像のしようがなくて・・・」
「ああ、確かにそうですね。・・・これ、今結構いっぱい収納されてます?」
一つ、試してみたいことがあった。
「今は遠征の道具なんかも入っていませんし、それほどは」
「試してみたいことがあるんですけど」
「どうぞ。中身の容量が心配でしたら、庭に出ましょうか」
ザルツのマジックボックスを持って、庭へと2人で移動すると、私は早速カバンの蓋を開けて、霊石に触れた。あの遺跡にあったかもしれないもの・・・ティーカップを思い浮かべて取り出そうと試みるが、何も出ては来なかった。イメージが曖昧すぎてはダメなのかも知れない。
「では、いざ!」
カバンから物が出てくる様子をイメージしなければいけないのなら、中に入ってる物全てが一気に出てくる様子を思い浮かべてみればいいじゃない、ということで。カバンの口を下に向けて振り、中身全部を落としてやるのを想像しながら、実際カバン自体も同様にしてみる。
「ああ、その手がありましたか」
感心するように言うザルツだが、果たして・・・
果たして、庭には小高い荷物の山ができたのであった。
落とすのをイメージしたせいか、かなり乱雑にちらばってしまった。割れ物とか、大丈夫だろうか。出てきたのは食器類やそれを入れていた棚、他にも椅子などの家具や、いかにも魔道士といったローブなどの衣類、杖、そして待望の、本の山。魔導具と思しき霊石の嵌った何かもちらほら見える。
「ザルツ様!本!本がいっぱい!」
手にとってぱらぱらとめくってみるが・・・読めるわけがなかった。なんせ全て古代文明文字で書かれているのだから。宝の山を目の前に、内容が読めないとはなんたることか。地道に解読するしかないのだが、それをするには途方もない量である。
「あ、ティエラ。このティーカップ素敵ですよ」
歴史的遺産の数々を前に、私達はなんとも呑気なものだ。取り敢えず目録を作ってマジックボックスに収納し直さないと。それも速やかに、雨が降る前に。




