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「見つけました!
森の外、西北西・・・少し逸れていますが、王都方面、です」
少し南に逸れているのが救いだが、急いで向かわなくてはならない。
「騎士団の討伐隊を!」
いや、それには問題がある。魔力が、大きすぎる。
「待って下さい、もう一度探知を」
今度は同じ場所の、精霊の力を探知する。透明な、揺らぎのない小さな多くの反応に混じって、それは真っ黒に私の探知に、映った。
タリムの時と、同じ。精霊を宿し、食らった証拠がそこにはあった。
「既に、精霊を・・・」
言いよどむ私の言葉に、ザルツもまた絶望的な表情に変わる。
しかし、それでも、なんとかしなくてはこの国が危険だ。行かなくては・・・!
「待って下さい、ティエラが全ての危険を引き受けることはないんです!
まずは騎士団に要請を。
落ち着いて下さい、ティエラ。彼らは訓練を積んで、魔物の討伐もしている。
見届けないと気がすまないなら、討伐隊と共に行きましょう。それが、僕に出来る最大限の譲歩です」
ザルツの言葉はもっともだ。騎士団はこの国の精鋭であり、実際に魔物の討伐を任されるのは彼らだ。私よりもよほど場数を踏んでいるし、厳しい訓練も積んでいる。
「王城に、空間をつなげます!」
宣言して、ザルツの部屋へと転移の門をつなげる。急いで2人で駆け込み、謁見の間へ。手続きなど踏んでいる時間はない!
「兄上!魔人が王都の南に向かっています!
討伐隊をすぐに!!」
「なっ!それは本当かザルツ!」
「石碑は既に割れていました、ティエラの探知魔法で追跡中です!」
「・・・しかし、討伐隊は既に出立しておるっ」
「彼らのルートは!?」
「まっすぐ森へ向かったはずだ。南東に直進する形で」
今なら追いつけるだろうか。いや、追いかけるしか無い。討伐隊が仮に魔人の進行ルートに間に合わなくても、急ぎ戻って王都の守りを固める必要だってある。
「ザルツ様、追いかけましょう」
謁見の間のテラスに出て、そこから直接浮上する。森への最短距離を、最低限の探知をしながら進めば討伐隊を見つけることはできるだろうか。
しかし、迷っている暇はなかった。
「さっきより加速しますからね!」
最初からトップスピードに乗るつもりで、私は加速した。はやく、もっとはやく。そう願えば願うほど、スピードは増していく。
地上に探知の範囲を絞り、しばらく進む。一向に彼らの反応がない。
そのまま森に突き当たってしまった。もう森に入っているのか・・・?
「ティエラ、落ち着いて。もう一度探知魔法を」
言われて精霊の力を改めて探っていく。森の中・・・隊列を組んで歩いているとすれば、その反応は目立つはずだ。もう少し北にも、反応はない。西に、範囲を広げていくと。
それらしき反応は、あった。しかし、これは。
「交戦中、です。向かいます!」
私が捉えた反応は、楽観視できるようなものではなかった。討伐隊が何人で編成されているかは、わからない。しかし。
「魔人の反応の近くには、5人しか・・・」
いや、少数精鋭で挑んだ可能性もある。絶望するには、まだ早い。
反応があった場所から少し離れて、地面に降りる。このまま走れば討伐隊の背後に出る位置だ。ザルツの手を無理やり引っ張り、体を抱き寄せるようにして走る。ザルツだけ王都に送り返すことも考えたが、彼の強い意志の篭った瞳が、それを許さなかった。
「見えた!」
視界の先に映る、人影。その多くが地に伏していて、探知魔法に既にその反応はない。残っている反応は、魔人のものと、先ほどと同じく人の反応が5つ。
戦況は、どうだろうか。魔人の前に立つ5人は、魔人を追い詰めているだろうか。
その時だった。
目の前で、巨大な火球が膨れ上がり、彼らを包もうとして・・・
「っ障壁!」
間一髪、火球の目前に滑り込んで、ドーム型の障壁を張る。振り返ると、5人はかろうじて立っている、という状況だった。
「回復します!」
短く言い放ち、障壁内の全ての傷が癒えるように回復魔法を使う。彼らの傷はこれで塞がったはずだが、失った血液までは戻らない。そこまでの治療をしているほど、相手は時間をくれはしないだろう。
「まさか、ザルツ様・・・!何故このようなところに・・・っ」
障壁の外側で、火球が爆ぜる。私の障壁はその炎どころか、そよ風ひとつ通しはしない。
「ザルツ様、彼らはお任せしますね!」
「お待ち下さい!ザルツ様も姫君も、お逃げ下さい!!」
どこに逃げる場所があるというのか。ここで魔人を通してしまったら、この国のどこにも逃げ場など無い。
爆風が収まり、その奥には小さな人影が見えた。
少女、だ。日傘をさして、小脇にはうさぎのぬいぐるみを抱えた、私と同じくらいの年頃の・・・
「新しいお友達ね!はじめまして、あたしはレーヴェ!
あなたの名前は?」
心の底から楽しそうに、その魔人ーーーレーヴェは笑って、私に問いかけた。




