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世界樹は夢を見る  作者: 深月
スーリヤ学術都市
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その後も加速を続けた私は、目まぐるしく変わる地上の景色を眺めながら、そろそろいいかというところでゆっくりと止まった。

丁度森の中心部あたり、その上空である。


「ザルツ様、遺跡、どの辺りですか」


下を見回しながら問いかけるが、返事がない。手はしっかり握られているし、気を失ったりということはなさそうだが。


「ザルツ様?・・・大丈夫ですか?」


顔面蒼白になったザルツがそこにいた。


「ティエラ、よく、平気ですね・・・」


「空を飛ぶのは気持ちよくて好きですけど」


「ちょっと、あまり下を見れないんですけど・・・森の中央からだと、少し東側、ですね」


高いところが苦手だっただろうか。いや、自分で飛んでいるわけでないから余計に怖いのかも知れない。怖がらせることが目的なわけではないので、少し高度を下げようか。

木の上数メートルくらいの高さを、今度は少し駆け足程度の速さで東へ。


「ああ、これくらいなら、まだ・・・」


うん、やはり高すぎて怖かったようだ。これなら道案内もお願いできそう。


「少し背の低い木が密集してる場所があるんですが・・・あ、あの辺です!」


ザルツが指で示した先は、確かに他の場所と比べると少し凹んだように見える。丁度その真上まで行ったところで、ゆっくりと地面に降りた。

辺りを見渡してみるが、遺跡らしいものが見当たらない。


「ここ、であってます?」


「ええ、こちらのほうに」


そう言って手を引いて歩いていくザルツ。彼が立ち止まったその目の前にあったのは3本の太い木。それが寄り集まって、木の根本にある地下への階段を隠していた。


「これは・・・兵士の皆さん、見つけられるでしょうか」


「そう言われると、不安はありますね・・・」


とはいえここでそんな心配をしていても仕方がない。

生み出した明かりを空中に浮かべ、ゆっくりと階段を降りる。


「ところどころ滑りやすくなっているので、気をつけて」


ザルツの言う通り、時折石の階段には苔が生していて、湿った苔を直接踏んでしまうと転んでしまいそうだ。


「こんな遺跡、よく見つけましたね」


「ええ、偶々あの巨木の前で転びまして」


「・・・それはラッキー、でしたね」


聞かなければよかったかも知れない。

地下2階相当分くらい降りたところで階段は終わり、天井の高い真四角の部屋に辿り着いた。丁度階段の対角線上に、他の部屋に続いているらしき通路が見える。


「あの奥です」


そう言ってザルツは再び手を引いて歩いていく。このまま万が一戦闘ということになったら、危ないのではなかろうか。


「あの、手を」


「お断りします」


・・・


説得は諦めて、私はそのままザルツの後ろを歩いた。通路の先もまた部屋になっており、石で出来たテーブルのようなものや、棚らしき物がある。住居跡なのだろうか。


「ここにマジックボックスがあったんですけどね。

住居のようですし書物の類も期待したんですが、見つからなくて」


「一冊も、ですか?」


「ええ。家具やら食器なんかもありませんでした。

ただ、マジックボックスの横に日記のようなものが置いてありまして」


随分と妙な話だ。


「善き人にこれが渡ることを願う、という言葉と一緒にマジックボックスの使い方が記されていたんです」


それは、もしかして・・・


「マジックボックスの中身、わからないんですか?」


「ティエラのあの小箱に触れてその可能性を思い出して、試行錯誤してみたんですが・・・」


残念ながら、と肩をすくめた。しかし、あのカバンにこの家にあったもの全てが収納されている可能性は高いように思う。中に入っているものを覚えていなければ出せないという弊害がこんなところに現れるとは。


「石碑はこの奥の部屋です」


おっと。一旦マジックボックスのことは置いておかなくては。

ここまで何事も無かったし、なんとなく楽観的な気分ではあるが、それでも少しの緊張を胸に、通路を進む。

問題の部屋もまた、真四角だった。石造りの部屋は決して広くはない。あの洞窟はかなり広かったが、こちらはもしかしたら部屋が魔導具の一部ということはないのかもしれない。


「部屋の、隅に」


しかしそこにあったのは、黒い細かな破片だけ。砕け散った、後だ。


「すぐに付近の捜索を!」


ここまでゆっくり歩いてきたその道程を、逆方向に急ぐ。慌てて階段を上がろうとして少し足を滑らせたりもしたが、大事ない。

一体いつ石碑が割れたのか、わからない。もしかしたら悪食の石碑が割れる前に既に割れていたのかもしれないが、そうでないことを、まだ魔人が人間と遭遇していないことを、ただ祈りながら捜すしかない!


地上に出て、探知魔法を広げる。魔力そのものを。もう精霊の力と混同はしない、ただ純粋に魔力のみを探知する。

あちこちにある小さな反応、もっと広く森全体を!もっと、もっと広く!


頭が情報量でパンクしそうだ。それでも、なにか手がかりを。

街まで範囲を広げると人の反応で隠れてしまう。なにより私の処理能力が追いつかないだろう。その手前で、なんとか見つかってほしいものだが。


東西南北虱潰しに探していく。そして、見つけた。

他の反応よりも明らかに強い反応!

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