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「世界は魔力を急速に失いつつある。
我々は魔力を使いすぎたのかも知れない。
世界は闇に覆われ、木々は枯れ、魔法の力は衰えた。
5人の魔人はそれでも猛威を振るい続ける。
我らの魔法ではもう倒すことはできない。
魔導具に封じ、未来に遺すことを許されよ。
壊れかけた世界のために、魔力を生み、管理する存在が必要だ。
残された最後の魔力とこの命を、幼い苗木に託す。
願わくば、死に瀕した我が息子が、苗木の中で命をつないでくれることを祈る。
・・・壁画に添えられていた古代文明文字は、これで全部だ」
多少の覚悟はしていた。その可能性に思い至った時から。
それでも、その内容を飲み込むのは・・・感情が、なかなかそれを許してはくれなかった。ロキは、やはり話した印象そのままに、幼い少年で。
「しかしこの書き方だと、世界樹に自我を与えるつもりはなかったのかもなぁ。
ただ息子に生きていて欲しいと、そう願っただけなのかも」
そう、なのかもしれない。だが、現実は残酷だ。一体どれほどの時間をロキは世界樹と共に過ごしてきたのか。そして、これからも永遠にも等しい時間を、そうやって過ごしていかなければいけない。初めて友達ができたと喜んでくれたロキにとって、私の一生など瞬きの間に過ぎないはずだ。
「しかし、魔法文明が魔力不足で滅びたとは・・・
いまいちこの魔力の概念がわかっていないんですけどね」
うーん、それもトリス王に論文として報告しなければいけないのだった。やるべきことは山積みだ。
「えぇと、精霊の力を仮に霊力と呼びますね。
霊力は精霊が私達の記憶や知識を力に変換したものです。
精霊は霊力を使って世界とつながって、記憶や知識を世界に還すのだそうです・・・これが世界を示すのか世界樹を示すのかはわかりませんけど。
私達はそのつながりをパイプにして、世界から魔法を使うための力、すなわち魔力を取り込んでいるんです」
「精霊の力とは別ってことかー」
「はい。私もずっと精霊の力で魔法を使っていると思っていたんですけどね」
「しかし、魔人は精霊の存在を知らないようなことを言ってなかったか?」
「恐らく、古代文明時代に精霊はいなかったのだと思います。
東の領域で出会った種族も、精霊無しで魔法は使えると言っていました。
ただし、東の領域限定で、ですけど」
「魔力の取り込み方が違う、ということですか」
「古代文明時代には大気中に魔力が漂っていたのだと思うんです。
東の領域も同じで、それが行き来した人間の体調に影響を与えるのかな、と」
あくまで推論ではあるが、筋は通っていると思う。大幅に違うということは無いと思うのだが。
「しかし、魔力が減った世界でも魔人は力を振るっていたんだろ?」
「そこがわからないんですよねぇ・・・」
より多くの魔力を取り込む力を持っていた、とか、取り込んだ魔力を増幅させることができたとかだろうか。しかし困ったことに検証のしようがないのである。
「まあ、目下の懸念事項は残り4つの石碑、だな。
しばらくは王都に残って情報のやり取り、だろ?」
「ええ。そろそろ各国からもロロが戻ってくる頃だと思います」
「じゃあ、俺達は出せる情報を少しでも増やさないとねー」
「分析を丸投げしてしまって申し訳ないです」
「そっちはそっちで大変でしょー、いいのいいのー」
これから忙しくなるであろうことは、事実だ。まあまだあまり何もしていないのだけど。
「で、トリス中央部の遺跡は?」
「結構深い森の中ですから・・・警備の兵が着いたかどうかも微妙なところですね」
「うーん・・・カナデ、一人で見に行くのは無しだよー?」
・・・読まれている。
「ティエラ、その顔・・・そのつもりでしたね?」
「いや、まあ、ちゃんと言ってから行くつもりでしたよ?」
「僕も行きますからね」
・・・先手を打たれてしまった。
「移動手段に文句は言わせませんからね」
一応、これだけは釘を刺しておこうと思う。
「瞬間移動を連続して!とかじゃなければ、言いませんよ」
言質は取った。そういうことなら、王都に戻り次第早速行くことにしようか。
「では、また明日同じ時間に」
そう言い残して、私達は王都へと戻った。
さて、では早速。
「ザルツ様、行きましょうか」
「はい。でも様付けはやり直しですよ」
「ここは研究棟ではありませんから」
悲しげな目になるザルツ。このやり取り、もう何回かやってるんだけどなぁ。
子犬のような表情を無視して、私はまず王都の南側に空間をつなげた。大人しくそれを通過していくザルツを追って、私も転移する。
街道を逸れた辺りだ。目撃者は・・・うん、無し。遺跡のある場所は行ったことがないので直接転移できないのである。
「お手を」
差し出された手を掴み、手をつなぐような形に。しかし、これだとちょっと不安が残る。
所謂恋人繋ぎの状態にしてから、ザルツに言った。
「絶対に手は離さないでくださいね」
それだけを伝えて、私はザルツ共々空中へと浮かび上がり、そして森の方にむけて少しずつ加速する。風景が流れていくのと同時に、その速度に不釣り合いなほど穏やかな風が頬を叩く。うん、やっぱり空を飛ぶのは、気持ちがいい!




