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「報告書を待っている場合ではないかもしれませんね。
すぐに兄上にロロを飛ばして、僕達は王都に向かいましょう」
その場にいる全員が、頷く。
「それで、ティエラ、ちょっと相談が」
個室に手招きするようにザルツが呼ぶので、2人で移動する。ドアを閉めてから、ザルツは外に漏れないように気にしながら、小声で話し始めた。
「もし、ティエラが大丈夫だと思ってくれるなら、ですが・・・
この場にいる3人に、空間転移のことを開かしてもらえないかと」
「そうすればすぐに王都に行けますし、報告書ができ次第取りに戻ることもできる、ということですね?」
「ええ。ティエラの魔法頼みになるのは心苦しいのですが・・・」
「そんなことを言っていられる状況でないのはわかっています。
私としては、異論ありません」
「ありがとうございます、ではすぐにでも王都に発ちましょう」
「はい。あと今後の状況次第ではありますが、ハルさんにも協力をお願いしたほうがいいかもしれません」
「ハル、ですか?」
「恐らくですけど・・・ハルさんは、私と同程度に魔法が使えます。
まあ、今後の状況と、本人の意思次第、ですけどね」
「わかりました、考慮に入れておきます」
そこまで相談して共有スペースに戻ると、3人は簡単な報告書をまとめてくれていた。王都行きの手紙に同封できるように、ということだろう。その報告書はありがたく、直接手渡させてもらおう。
「3人に、秘密を抱えてもらいたいと思います!」
・・・ザルツ、その言い出し方はどうかと思います。
「なになにー?秘密にするよー」
「なんだ?なんかカミングアウトでもするのか」
「僕達付き合ってます、とかなら殴るぞ」
ほら、こういう反応になるじゃない。
「私の魔法についてです。見てもらったほうが、早いと思うので」
そう言って、私は転移の入り口を開く。どこにつなげるべきか悩んだのだけれど、どうせこのまま移動するしと思って王都のザルツの部屋につなげることにした。
「どうぞ」
ザルツに先に行かせて、陽炎のように揺らめくその空間に侵入できることを示す。3人にもどうぞ、と促して・・・
「え、なにこれ、入れるの?」
「物は試し、行くしかないでしょー」
「よかったわ、真面目な話で」
賑やかに入り口を潜り抜けて行く3人。私も後を追って、全員がいることを確認して一度入り口を閉じた。共有スペースに入り口を開いたものだから、誰か来たらまずい。
「「「何ここ・・・どこ?」」」
「王都の、僕の部屋です・・・なんで僕の部屋なんですかティエラ・・・」
「他にいい場所が思い浮かばなかったので」
「スーリヤの自宅とかでもよかったじゃないですか」
「でも、どうせ王都にすぐ来るんですし」
「いいから!一回自宅につなげてください!」
何か見られてまずいものでもあるんですかね。仕方なく私は再度、今度はザルツの自宅のリビングに入り口をつなげた。
「はい、どうぞ」
入り口をくぐった先では、全員が見知った部屋に感嘆の声を洩らしていた。
「こんな感じで、一度行って記憶にある場所なら大体どこにでも行けるんです。
なので、王都に行ってもすぐに戻ってこれますので」
「遺跡の調査報告書が出来たらすぐに取りに来られる、ってことか」
「はい」
「あああああ!これか!!」
突如大きな声を出したのは、ロッシュだった。
「東の森から帰ってきたときの!俺たちずっと庭にいたのにどこから家に入ったのかずっと疑問だったんだよ!」
おお、なるほど。確かに3人は私が転移してきてすぐに助けに入ってくれたんだよなぁ。直接見られなくてもそういう問題もあるのか、覚えておかないと。
「はい、あのときもこの魔法で帰ってきました。
・・・そういえばあの時どうやって入ったんです?鍵、かかってましたよね」
「レイが鍵あけてくれたんだよー」
なるほど、そのおかげで助かったわけか。ありがと、レイ。
「話が逸れましたが、そういうわけで僕達は王都に向かいます。
連絡は・・・いつもミーティングする時間には一度戻りますので」
「「「了解」」」
「じゃあ、一度研究室に戻りますね」
空間転移、大活躍である。研究室に戻り、最低限必要な石碑の文字の複写と3人が書いてくれた報告書を持って、私達は王都へ。
ザルツの部屋に転移したはいいが、そういえば。
「王城の皆さん、転移のこと知りませんよね?」
「・・・王都の適当な場所に」
その適当な場所が思い浮かばないのだが・・・
「東門の、外につなげます」
「お手数おかけします・・・」
改めて、今度は徒歩で王都に入り、そのまま王城へ向かう。跳ね橋は降りていなかったので、見張りの兵舎に行くと、さすがザルツは顔パスで通らせてくれた。・・・当然である。
急いで王であるモーガンとの謁見の約束を取り付けてから、時間までザルツの部屋で寛ぐことになった。随分遠回りをして結局この部屋に戻るのだから、締まらないものだ。




