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世界樹は夢を見る  作者: 深月
スーリヤ学術都市
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ラーファの街に戻って、ようやく皆の緊張も解けたようだった。人の気配が、日常に戻ってきたという実感を与えてくれたのだと思う。


「しっかし、カナデは強かったなぁ!」


そう言ってゲインが背中を叩くものだから、持っていたフォークを落としそうになった。今は全員揃って食事の真っ最中である。


「そういえばハルさんは魔法を使う時詠唱みたいなのをしてましたよね。

転生前もああやって魔法を使っていたんですか?」


「ボクのいた世界に魔法なんて無かったよ。

本とか・・・そういうので出てきた魔法をイメージして使ってるだけ」


なるほど、確かに私も本や漫画の知識でイメージしやすい王道の魔法みたいなものは結構ある。それをそのまま魔法として発現させているわけか。それなら考えすぎることもないし、攻撃魔法としては便利かも知れない。


「魔法が無い世界なのに、本には魔法が出てくるのか?」


「無いからこそ、なんじゃない?

空想の産物として魔法が出てくる物語は数知れず」


「魔法が無い世界かー、不便そうだねー」


「ボクからしてみればこの世界のほうが数倍不便だね!」


「魔法も魔導具もあるのにー?」


「うーん、なんていうのかな・・・

超高性能かつ多機能な魔導具みたいなのが大量に普及してたんだよ。安価でね」


「へー・・・」


聞けば聞くほど、ハルの話は地球での暮らしとの共通点が多すぎる。魔法が無いから同じような発展を遂げただけという可能性も勿論あるのだけど。

しかしこれだけ詳細に、それこそ転生前に読んだ本の内容すら覚えているというのに、アキは喋らない。私との差はなんなんだろうか。若くして亡くなって知識量が少ないとか?


「さて、この後だが・・・急ぎ馬車に乗ってスーリヤに戻ろうと思う。

反対の者はいるか?」


異を唱える者は・・・いない。


「よし、それじゃあ帰るとするか!

やるべきことは山積みだ、馬車で眠れそうならしっかり寝ておけよ!」


ゲインの号令で私達はスーリヤへ向けて、再び乗合馬車に揺られることになったのだった。





スーリヤに戻った私達は早速壁画の内容を考察したり、壁に刻まれていた古代文明文字を解読したり。その傍らで私が担当したのは、魔導具である石碑についての考察である。その一環として、霊石の色の変化と性能差についての論文も急ピッチで仕上げた。今はその論文と石碑の残骸を前に、魔導具研究室のギィを混じえてミーティングを行っている。


「悪食という石碑の一文は、確かにあの魔人の性質を表していたと思います」


「魔力を食べる・・・吸収する、か」


魔人の死体は魔物研究室のほうに既に回している。しかしタリムの時同様、恐らくあまり得られる情報は多くはないだろう。元々魔物とそうでないものの身体構造の差はほとんどない。その強靭さくらいのものなのだ。


「うーん・・・」


「ティエラ、何か気になることが?」


「石碑自体が魔導具なのではなくて、あの洞窟自体が魔導具だったのかもしれません」


「あー、魔人が出現した位置、だねー?」


「はい」


魔人は確かにあの洞窟の中央に出現した。石碑だけが魔導具なのだとしたら、石碑が割れた位置に出現するのが普通ではないかと思ったのだ。


「ということは、他の遺跡でもそうである可能性は高いな。

遺跡が破壊されたら、石碑が残っていても封印が解けてしまうかも」


「ザルツが石碑を発見したっていう遺跡も、早急に警備とか手配しないとまずいな」


石碑は今回発見したものだけではない。場所がわかっているものだけでも、なんとか対策を講じなければいけないわけだが・・・


「そもそも、なんで今回、石碑が割れたんだ?」


「問題はそこですよね・・・誰も手を触れていませんし」


石碑が割れた理由がわからないことには、対策の取りようがないのである。一応の推論はなくもないのだが、正直それは当たっていて欲しくない代物だ。


「最悪のケースとして、ですが・・・一応推論は1つ」


可能性がある以上、共有しておくべきだろう。正しいかそうでないかは、別問題だ。

4人の視線が私に集まる。ギィはなんとなく嫌そうな顔をしているし、多分私と同じ考えに辿り着いたんだろうなぁ。


「連続使用限界、の可能性があります」


「連続使用・・・?なにそれー?」


「水中探索用の魔導具作ってた時にな。

最初は触れると起動して空気を生成し続ける魔導具として作ったんだが、起動してしばらくすると霊石が割れちまってたんだよ」


そう言って、ギィがその時の詳しい状況や私の立てた仮説、それからそれに基づいて魔導具を改良したことなどを説明してくれた。

それを聞く3人の表情が、次第に暗くなっていく。


「もしその仮定が正しいとすれば・・・」


「まずいねー」


「ええ、他の石碑も時間の問題、ということに」


私の仮定ーー霊石に込められた魔力の枯渇、それが本当に石碑が割れた原因であれば、他の石碑も遅かれ早かれ、誰が触れたり壊したりしなくとも、自然に壊れてしまうということになる。


「今回私達が居合わせたのは全くの偶然で、その偶然のおかげで魔人は弱体化したまま容易に討伐できたとするなら。

他の石碑も早急に探し出さないと」


魔人が魔力を取り込む術を手にいれてしまってからでは、どんな被害が出るかわからない。封印が解けるのを止められないのなら、せめて魔人への対策は、とらなければいけないのだ。

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