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いつか体験したような、ゆらゆらと不規則に体が振れる感覚。船が小さいからか、客船で感じたそれよりも振れ幅は大きく感じられる。準備を終え船上に並ぶ私達に吹き付ける風はそれなりに強い。
波の動きに合わせ水上に浮かぶ鮮やかなオレンジ色の浮きが、探索のスタート地点。ここから海に潜り、海中をもう少し南東へと泳ぐと目的の洞窟があるそうだ。
顔を見合わせて頷き合い、私達は海へ。
ダイビングスーツのようなものはこの世界にはない。出来るだけ体にフィットした、泳ぎを阻害しないような服を各自が用意しているが、当然水を吸って衣服は重くなる。水中呼吸の魔導具がなかったらパニックになっていてもおかしくなかったかもしれない。
物資の運搬は各班とも水中での行動に慣れた水中調査チームのメンバーが行っている。革や布製では中身が濡れてしまうので、素材は金属。しかし、この中には必要最低限の物しか入っていない。それほど多くの、調査メンバー全員分の荷物が入るようなものではないのだ。これが、今回の調査で私達の復帰を待っていた重大な理由の1つでもある。
要は、ザルツのマジックボックスなしで調査に必要な道具を運ぶことが不可能だったのだ。遠征でマジックボックスは大活躍である。万が一何かあったらザルツのマジックボックスが紛失する可能性もあるのだが・・・それでもなんの躊躇いもなくカバンを差し出す辺り、ザルツはやはり研究者なのだ。
海底洞窟の入り口はそれなりに広い。3人くらいなら並んで侵入できそうなくらい。ハルが洞窟に入り、私達がそれに続く。光の差し込まない内部は暗く、それぞれが明かりの魔導具を作動させた。
光に照らされる洞窟の内部。水中でどのように岩が浸食を受けるとかの知識がないため、洞窟が人工物かどうかはわからない。受ける印象からは、自然のものに少し手を加えて整えた、という感じに見えなくもないが・・・何よりもこの洞窟、勾配がある。緩やかに、だが確実に上へ向かって。
大きく曲がりくねることもなく続いていく洞窟を抜ける。広さが狭まることもない。やはり、何らかの手が加えられていると考えていいんじゃないだろうか。思わず大きくなる期待を胸に、しばらく進んだ先で、ハルが止まった。
後ろの私達を振り返り、前方を指で示す。そこにあるのは巨大な岩の壁。行き止まり、である。どこかに抜け道があるかも知れない。後続の2班にも行き止まりを示してから、私達は明かりを手に洞窟の壁面をくまなく見ていく。
ふと、誰かが洞窟の天井を照らしたまま動かした明かりが、不自然に途切れ、そしてまた、壁面を照らした。その部分に光を当ててみると、光は反射せず、まだ先に吸い込まれるように・・・縦穴だ。
今までよりも少し狭くなっていたため、私達はハルを先頭に、1列にならんでその縦穴を浮上していく。潜った分と浮上した分、その差はどれくらいだろうか。水中では距離感がよくわからない。そしてまた、進行が止まる。上からハンドサインが送られてくる。”上陸する”・・・上陸!どこかに出たということか!
私はそのハンドサインを後続に伝え、リレー式にそれは後ろまで伝わっていく。
前を進むゲインがまた少し浮上した。ハルが地上に出たのだろう。そしてゲインが海から上がっていき、私もそれに続く。
両手で体を持ち上げ、地上へ。足場があるという安心感。後続の邪魔にならないよう、ハルたちの方へ近づく。
「明かり、つけていい?」
ハルが尋ねる。ここから先はハルではなく、遺跡発掘チームのゲインが指揮をとる。
「最初は小さな明かりで、頼む」
ゲインの指示通り、ハルが小さな電球ほどの明かりを生み出し、まだ来ていないメンバーのために縦穴の出口付近を照らす。
地面が、平らだ。ゴツゴツした岩山などではない。整備されたグラウンドのような。しかし日の光が入ってこない。外とつながっていたわけではなく、ここも未だ洞窟内部ということだろう。
全員が無事海から上がった。
「ハル、明かりをゆっくりと上に上げていってくれ」
「了解」
小さな明かりがゆっくりと上がっていく。徐々に照らされる範囲が広がり、私達の周囲だけが明るくなる。まだ、洞窟の壁面は見えない。天井も。かなり広い空間になっているようだ。
「一旦そこでとめて」
これ以上高く持ち上げてしまうと私達の足元が暗くなってしまう。すでに私達の周囲5mほどは目視できているが、その外は未だ闇の中。
「全員、明かりを直視しないように。
ハル、光量上げて」
「みんな準備いい?いくよ」
今までとは違う煌々とした白い光に照らされた洞窟内部は、相当に広かった。
円柱形に切り抜かれたような、丸い部屋。壁から壁まで50mほどはあるだろうか。その壁に浮かび上がる、鮮やかな色で描かれた壁画。ここは例の岩山の内部、だろうか?
何にせよ、大当たりだ!




