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沈みこんでいくような浮遊感。ぬるま湯の中にいるような。でも不安も恐怖もない。包まれているような安心感すらある。
ここに、こんな静かな場所に、レイはいつもいるのかな。
『いつもはもっと賑やかよ!今は、眠っているから』
そっか、眠っているんだった。
でもなんだか不思議。
『不思議?』
うん、意識だけがあるの。すごく不思議な感じ。
自分がいるようないないような、曖昧な、感じ?
『体が無いのって、すごく自由よ?』
私の体の中に、レイがいるんだと思っていたの。
でも、そうじゃなかったんだね。
私の意識の中にレイがいて、そこには私もいて・・・
『うん』
そう、もっと自由だったんだ。
レイの力を感じるときも、レイの力と自分を分けて考えてた。
本当は、同じだったんだ。
無理して意識しなくても、レイは私で、私はレイで・・・
『うん』
そこにあるのが当然のものを、無理に探そうとしてた。
『少し落ち着いた?』
うん。今は穏やかな気分。
『そっか。じゃあ少し、夢でも見よう?』
うん。
「具現化するって、こんな感じなんだね」
「そう、意識が夢を見るようなものよ」
私と同じくらいの身長のレイが、当然のように笑った。
「なんでもできそうな気がする」
今は私も、体はないのに姿はある。体という拘束が無いままに存在している。
「なんでも出来るわ!カナデはいつも考えすぎるのよ」
「そうだね、夢を見るように考えればよかったんだ」
「それを現実にするのが、魔法だもの!」
ただレイと私がいるだけのこの場所のことを考える。
「何をしたい?」
「そうね、空を飛びたい。きっと気持ちいいもの」
そう思ったら、そこには空があった。
空があるのに地面はない、私が地面を願っていないから。
「カナデは空を飛ぶのが好きね!」
「だって、なんだか自由な感じがするじゃない」
「カナデはいつも自由よ!」
レイの言葉に、思わず笑ってしまった。
自分で自分を縛っていたことに気がついたから。
「体も、陸も空も海も、関係なかったんだね」
「そう、ただ力に乗せて願えばいい。想像すればいい。それだけよ!」
重力が、とか、風が、とか。考える必要なんてない。
私は空を飛びたいし、飛べるんだもの。
いくらでも早く飛べる。いくらでも早く走れる。
「でも、どうせ飛ぶなら、風を感じたい」
そう思ったら、風が吹いた。決して私を吹き飛ばそうとはしない、気持ちのいい風。
「記憶や知識が、そのまま力に変わっているんだと思ってた。
だから、魔法を使うためには考えないといけないと思っていたの」
「あたしに出来るのは、世界と道をつなぐ力を作ることだけよ」
「そうなの?」
「そう、精霊は記憶を力にして世界とつながって、その記憶を世界に還すの。
その通り道から魔法を使う力をもらうのよ」
「でも、じゃあ本当は魔法の力に記憶の量なんて関係ないんじゃないの?」
「記憶は入り口なの。あたしと世界をつなぐ通り道の」
「そっか、入り口は広いほうがいいものね」
「そういうことよ!」
胸を張るレイと顔を見合わせて、くすくす笑った。
「記憶が精霊の糧になる、って言うから、食べられちゃうのかと思ったの」
「だって、何かに宿って記憶を還さないと、力をもらえないんだもの」
「ずーっともらえないと、どうなるの?」
「多分、消えちゃうんじゃないかしら」
「レイが消えたら、寂しいわ」
「消えないわ!カナデがいるもの!」
もう一度私達は、くすくす笑った。
「なんでもできるね」
「あたし達が一緒なら、なんでもできるわ!」
外から何か、聞こえた気がした。
「誰か、呼んでる?」
「そうね、そろそろ、起きる?」
「うん、もう大丈夫」
私達は手を繋いで、それから離した。
「また向こうで」
「ええ!またね、カナデ」
また、現実で。




