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沈黙に包まれたまま、時間だけが過ぎる。
口に含んだスープがあたたかい。その熱が胃に広がっていくような感じ。それと同時に、急激に胃が収縮するような、そんな痛みがあった。
水分を受け付けないほど、食べていなかったのだろうか。どれくらい眠っていたんだろう?
「ずっと」
ザルツが口を開いた。
「ずっと、目を覚まさなくて」
やはり、長く眠っていたのだろうか。
「このまま、目を覚まさなかったらどうしようって・・・
悪いほうにばかり、考えてしまって、怖くて」
自分の身を抱きしめるようにして震えながら続けられたザルツの次の言葉からは、嗚咽が混じっていた。
「本当に、よかったです、ほんとに、ほんとに・・・!」
「なら、どうして・・・」
言ってはいけないと思いながらも、止められない。恨み言が、口から溢れるのを、もう自分で止めることができない。
「どうしてあんな風に私に見せつけるようなことをするんですか。
あんなもの、見たくなかったです・・・!
誰かにまとわりつかれる姿も、口紅も、なにも見たくなかった!
弁解もされないのなら知らないでいたかった!
あんなものを見せても平気だというのなら、ザルツ様にとって私は妹ですら無いじゃないですか、そんなの知りたくなかった!!」
まるで積み上げてきた何かが一気に崩れ去るように、私の中ではじけた言葉は一度こぼれたらすべてを押し流すようにあふれて、止められなくて、その衝動のままに私は一気にまくし立てるように言った。それは叫びに近い声だったと思う。言い終えて、気持ちの昂りに体がついていかなくて、涙があふれた。
「僕は・・・っ」
聞きたくなかった。今更、弁解も謝罪も言い訳も、受け入れられる気がしなかった。だから耳をふさいだ。
「聞いて下さい、ティエラ、僕は!」
うるさいうるさいうるさい!!!
私は何も聞きたくない、何も見たくない、何も喋りたくない!!!!
そして、私は失った。
瞳は光を、耳は、喉は、振動を。
真っ暗で、ただただ静かな、世界。
胸の中にあるレイの気配だけが、私を包んでいた。
『辛かったね、カナデ。
少し、休もう?』
『うん、レイ。
少しくらい、いいよね?』
私は眠ることにした。
『任せていい?』
『うん、おやすみ、カナデ』
おやすみ、レイ。
「ティエラ!ティエラ!?」
肩を掴む大きな手を、あたしは振り払った。
「眠った」
「え・・・?」
「カナデは眠ったわ」
「ティエ・・・ラ?」
放心するような顔。うざったい。
「あたしはレイよ!カナデに会いたいなら、起こせるものなら起こしてみなさいよ!
あんたなんか口だけじゃない!
スーリヤに来てカナデがどんなに喜んでたか、大嫌いな学校から抜け出して、いろんな人に認められて、あの子がどんなに嬉しかったか!
それを台無しにしたのはあんたじゃない!!」
そうよ、傷つくことをこわがって人と関わりを持たなかったあの子を、人の中にひっぱり出したのはこいつじゃない。
それなのに一番カナデを傷つけたのはこいつじゃない。
欲しかったものを与えておいて、それを奪うような真似をしたのはこいつじゃない!
「レイ・・・?
じゃあティエラは?ティエラはどうしたんですか!!」
「眠ってるわよ、目も耳も言葉も全部閉ざして!」
騒ぎを聞きつけたのかしら。バタバタとうるさいわね。
でもあの2人のほうがよほど信用できるわ。それこそ、カナデのお兄ちゃんたちみたい。
「どうした!?」
「また喧嘩ー?仲直りしないのー??」
「ロッシュ、ウルド!こいつ連れて帰ってよ!
カナデを傷つける奴なんて大嫌い!!」
「・・・これどゆことー?」
「二重人格、とか?」
「いいから早く連れてって!2人はともかくこいつは嫌よ!」
ようやく、ザルツはロッシュに連れられてやっと出ていってくれた。
ウルドだけが残っているけど、あたしだっていつまでも起きてるつもりはないのよね。
そうね、ヴォイドたちを心配させるわけにはいかないわ。
「ウルド、一週間よ」
「一週間?」
なにが?って顔をしてるウルド。
「次のアルの日までは、そっとしておいて。
心配はいらないわ、少し眠るだけ。
ロッシュとあいつにもそう伝えて?」
そうして、ウルドも出ていった。
さぁ、あたしも眠ろう。カナデの体を勝手に使うのは申し訳ないもの。
大丈夫、夢の中でいろんな話ができるはず。
そうしてカナデが少し元気になったら、そうしたら起こしてあげればいい。
カナデの体に一番負担がかからない方法は、どれかしら。
立ってるよりは横になってたほうがいいわよね?
うん、楽な服装でベッドに横になろう。
カナデがいつもそうやって眠っているみたいに。




