↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界樹は夢を見る  作者: 深月
スーリヤ学術都市
140/201

139

・・・あたたかい。ふかふかと包まれている感じ。

目を開けると、暗い部屋の中にいた。キッチンで床に倒れたはずなのに妙にふかふかすると思ったら、ベッドの中だ。いつの間に、移動したんだっけ?

すごく寒かったのも、今は大丈夫。お布団があったかいからだろうか。


右腕が、少し重い。持ち上げようとしてみたけれど、なんだか上から抑えられているような感覚。何かの下敷きに?

顔を向けると、暗い中にぼんやりと人影が見えた。私の手を掴んで、まるで祈るような姿勢で。


「だれ・・・?」


私の声に、弾かれたように顔を上げたその人は、泣きそうな顔をしていた。


「ティエラ・・・!」


「・・・ザルツ様?どうして」


「ティエラ!よかった、本当によかった・・・」


泣きそうな顔が更に崩れて、暗闇の中、涙が光るのが見えた。




バタバタと階段を上がってくるような音が聞こえた。他にも誰かいるのだろうか。そもそも何故家の中に?私の部屋、なのは間違いない。


「カナデ、起きた!?」


ドアが開かれて、廊下から漏れる光が少し眩しい。


「明かりくらいつけときなよー、ザルツ」


入ってきた人は、ウルド、だ。


「ウルドさん?どうして・・・?」


「はい、お水ー」


「あ、ありがとうございます」


受け取って一口飲むと、少しむせてしまった。


「少しずつ、一口ずつねー」


ウルドに言われるまま、ゆっくりと水を飲み下す。


「うん。起き上がれそー?」


ふらついたりということもない。多分、大丈夫だと思う。


「大丈夫です。ご心配おかけしたみたいで・・・」


「うん、取り敢えず体拭いて、着替えもしたいでしょー?

リビングで待ってるからー。

ほら行くよーザルツー」


「ウルド、良かったです、ほんとに、良かったです・・・!」


「うんうんー、わかったから行くよー」


ウルドがザルツを連れて行って、部屋に一人になった私はゆっくりと立ち上がった。うん、大丈夫。


「カナデ、大丈夫?」


「うん、ごめんねレイ、心配かけて。もう大丈夫」


「よかったよ、カナデ・・・」


レイの小さな目もうるうると潤んでいた。もう一度、ごめんねを伝えて、私は浴室へと向かった。



体を流してさっぱりしてから、服も着替えた。森を歩き回ったままの服は土で汚れていて、汗を吸ったせいかごわごわしていた。ラフなワンピースに着替えると、肌触りの良さで気分がいい。

リビングに入ると、ザルツとウルドだけでなく、ロッシュもそこにいた。驚く私にひらひらと手を振るロッシュ。耳もピンと立ち上がって、多分元気になったことを喜んでくれているんだろうと思う。


「みなさん、ご心配おかけして申し訳ありませんでした」


どういう経緯かはわからないが、倒れた私を介抱して、傍についていてくれたのだろう。


「うん、無事でよかったよ」


「カナデー、座って座って」


ソファを勧めてくるウルドの言葉に従って、私は腰を下ろした。低くなった私の目線に合わせるようにウルドが顔をのぞき込んで、にへらと笑う。


ぱしん。

左の頬に、じんじんと残る痛み。


「ウルド・・・っ!」


それを咎めるように声を掛けるザルツ。その顔は随分疲弊しているように見える。私よりもよほど具合が悪そうだ。


ロッシュが近づいてきて、私の頭にげんこつが落とされた。・・・痛い、けど。

2人とも、手加減してくれているのはわかる。

心配、してくれたんだ。


「ロッシュまで!やめて下さい2人とも!」


「いえ」


止めようとするザルツを遮る。私には叩かれる理由がある。それなのに2人は手加減してくれた。それもきっと、私が病み上がりだから。


「すみませんでした。それから・・・ありがとうございます」


私の言葉を聞いて、2人はうんうんと頷く。それから、いつものように、両側から頭をぽんぽん、と。


「心配かけやがって」


「無事でよかったよー」


お湯が沸いた音がする。ウルドがキッチンに入って、少ししてスープを持ってきてくれた。


「固形のやつだけどー、少し何か食べたほうがいいからねー」


「ありがとうございます、いただきます」


「火傷すんなよ?ゆっくり飲め」


「はい」


「じゃあ、俺達は隣にいるから」


「またあとでねーカナデー」


スープを私に持たせて、2人は出ていった。隣、というのはザルツの家だろうか。

残されたザルツと私。

・・・ザルツは何も言わない。


「ご心配をおかけして、すみませんでした」


「・・・いえ。無事なら、それで」


まっすぐにザルツを見る私とは対称的に、視線を合わせようとはしないザルツ。彼の様子から、すごく心配をしてくれたんだとは思う。それこそ、痩せこけて見えるほどに。


それなら、と思ってしまう。

それならどうして、私にあんなものを見せるの?

どうして、弁解もしないの?

心配をかけてと怒ることも、無事でよかったと抱きしめることもない。

だからといって部屋を出ることもしない。


このひとがなにを考えているのか、今の私には、わからない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。