137 side:ザルツ
「それにしても、どこに行ったんでしょうか・・・」
ソルの日にティエラが一人でどこかへ行ってから、もう4日が過ぎた。明日のアルの日が過ぎれば丸々一週間になる。アルディアにロロを飛ばすべきだろうか。
「自宅は?」
「様子を見には行っているんですけど、戻った気配がないんです」
「ザルツの家、カナデの家に近いのー?」
「ええ」
「俺も様子見に行きたいー」
「あ、俺も。さすがに心配だわ」
やはりウルドもロッシュも心配なのは一緒のようだ。ただ・・・勝手に自宅の場所を教えていいものだろうか?
ギィに意見を求めると、緊急事態だし仕方ないだろ、という答えが返ってきた。
うん、まぁ確かにその通りかも知れない。
「では、僕の家に集まって何度か様子を見に行く形でいいですか?」
「そうしよう。場合によっては家の前で交代で待ってもいいしな」
「今から出発ー」
「荷物取ってくるからちょっと待っててくれよ、俺も行く」
こうして、ウルドとロッシュとギィが、家に来ることになった。
順番に家の前で待つという手段がとれるのは、人数がいてこそだ。戻ってきたのを見逃すよりはいい。
とりあえずひと目無事を確認したい。心配で心配で仕方ないのだ。僕にその心配をする権利があるかどうかはわからないけれど。
自宅に戻って、荷物を置く。3人をリビングに通して、まずは一度様子を見に行こう。
「早速ちょっと、見てきますので。
荷物を置いて寛いでてください」
「「「了解」」」
もうソルの日の夕方も過ぎている。そろそろ帰ってきてくれてもいいんじゃないか・・・?
祈るような気持ちで隣の屋敷の門を抜ける。
明かりは、相変わらずついていない。鍵も、かかったまま。呼び鈴を何度か押して見るが反応もない。相変わらず、人気がない。
どこに行ったんですか、あの子は!こんな何日も、家をあけて・・・まだ8歳だというのに!・・・いえ、9歳になったんでしたか。僕が、気づかない間に。
自宅に戻ると、ギィが台所を漁って紅茶を淹れていた。
「どうだった?」
「戻った気配が、ありません」
腕組みして考える、大人4人。
「で、カナデの自宅どこー?」
「・・・隣、です」
「は?隣って、あれか?」
「あんな屋敷に独り暮らしかよ・・・
しっかりした子ではあるけど大丈夫なのかそれ」
ロッシュの言葉ももっともだ。転生者であるせいか年齢不相応にしっかりしているからつい何かと任せてしまうが、それでもティエラはまだ9歳なのだ。
ますます心配になる。帰らないんじゃなくて、帰れなくなっているんじゃないのか・・・?
「取り敢えず、ザルツは少し寝ろ」
「いえ、様子を見に・・・」
「俺達が見とく。寝ろ。
心配で眠れてないんだろ、ひでぇ顔だぞ」
「モテ男が台無しー」
「そんな顔でカナデに会ったら、あっちが心配しちまう」
「でも・・・!」
「「「寝ろ」」」
眠れる気がしない。それでも、ウルの日から眠れていないのは事実だ。そんなにひどい顔をしているだろうか。
「俺達がちゃんと見とく。なにかあったら叩き起こす。
だから寝ろ」
ギィにそう言われて、渋々ながら僕は休むことにした。
寝室の前で3人には、絶対に起こしてくださいね、と念押ししておいた。
なんて情けないんだろう。でも、誰かが見ていてくれるなら、少しは安心できる。
気づけば、朝。
3人のことを、僕は自分で思っている以上に信頼しているらしい。ゆっくり眠れたお陰で、少し頭もクリアになった気がする。
階下に降りると、リビングの窓からウルドが隣の屋敷を見ていた。ロッシュとギィはソファで眠っている。交代で、見ていてくれたんだろう。
「おはようございます、ウルド」
「おはよー。眠れた?」
「ええ、お陰様で」
4人分、軽い朝食を用意しよう。しかし、最近あまり買い物をして帰ることもなかったせいで、食材もほとんどない。
そう言えばマジックボックスに遠征の荷物が入ったままだ。固形のスープが入っていたことを思い出して、収納から取り出した。
あとは、乾麺はあるからパスタくらいなら、なんとか。
ロッシュとギィが起きて少しして、食事の準備ができた。
食べながら、今日の予定を相談しよう。もう少し周りを頼るべきだったんだ、僕は。
「今日の夕方まで戻らなかったら、アルディアにロロを飛ばそうと思うんですが」
「うん」
「一人だと、不安で、心配で・・・」
「おう」
「よかったら、今日一日付き合ってもらえませんか」
「そのつもりー」
「天気も良さそうだし、全員でカナデの家の庭でごろごろしながら待つのもいいんじゃないか?」
「そうだな、いちいち行き来しなくても」
「賛成ー」
3人のなんて心強いことか。
「ありがとう、ございます・・・っ」
友人に恵まれたことを、これほど感謝したことはない。
あとはティエラさえ、戻ってくれれば、無事でいてくれれば。
帰ってくるのが、僕の下でなくてもいいから。




