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気づけば、辺りは薄暗い。深く眠ってしまったのだろうか。気温がだいぶ下がっている。・・・夕方、だろうか?
疲れていたのは確かだが、自分の迂闊さに呆れてしまう。何事もなかったからいいものの、魔物にでも見つかっていたらと思うとぞっとする。探索のペースを落とすことを決めた。浅い眠りで済む程度の疲労におさえていかなければ。
探知魔法を広げる。あの霧は今も色濃く背後に見えているが、そこにはやはりなんの反応もない。しかし、獣道の奥へとつながる領域は・・・ぼんやりと全体が霞んだように感じる。そこには生物らしき反応はない。
反応はないが、なんらかの生物がいるのは間違いない。でなければあんなふうに踏みならされた道ができるはずがないのだ。ここも探知はあてにならないようだ。探知がきかないのか、それとも精霊の力を探知しようとするから、なのか。
別のマーカーを模索するべきかも知れない。生命探知・・・は具体的に何を探知すればいいかわからない。音、も同じ。ならば熱源か。
魔力を周囲に広げて熱を探してみると、反応はあるのだが感度が低い。対象のイメージが大雑把すぎるのだろうか?
動物の体温がどれくらいかはわからないが、試しに30度から40度位の熱を感知することを意識してみる。かなりぬるいお湯くらい。
すると、さっきよりも感度はかなり上がった。これなら使える。精霊の力を探知するよりも、熱源のサイズ感がわかる分こちらのほうがいいぐらい。
しかし、妙だ。
獣道の少し先に、ほとんど動かない熱源が、5つ。・・・炎が焚かれているか、そうでなければ、恐らく人間。
魔力探知に反応がないのに熱源はあるというのも妙だ。この世界ではほとんどの生物が精霊を宿している。ほぼすべてと言ってもいい。だからこそ魔力探知が有効なのだ。
それがきかないということは、この領域の生物が精霊を宿していないということではないだろうか。
なんにせよ最大限の警戒をすべきだ。動かない5つの熱源に、接触してみるべきか否か。
よし。
「多分だけど、人がいる。接触してみよう」
木から舞い降りると、障壁を展開。今まで頼っていた魔力探知が無力だったのだから、熱源探知も例外がある可能性は否定できない。全方位を守れるようにドーム型の障壁にした。
獣道に沿って、奥へ。問題の反応までおよそ800m。動きはないが、こちらをうかがってるのならば視認されているだろう。
ゆっくりと進む。あと500m。こちらからは姿が見えない。300m・・・200m・・・
残り100m。5つの熱源反応のうち4つが動いた。両側へ回り込むように動くその反応。囲まれるとまずい、だろうか。いや、しかし、だ。
問題は彼らの目的だ。あの霧や森の位置からすれば、外敵から何かを守っているような、そんな印象を受ける。仮にこの奥にあるのが世界樹で、それを守っているのだとすれば、彼らと敵対する理由はない。
「私はフォルティエラ=カナデ=アルディア。話はできませんか」
動いていた反応が止まる。私に気づかれていることを悟ったのだろう。
返事はないが、動きも止まったまま。言葉が通じないということはなさそうだ。
「あなたがたが何かを守護しているのなら、それを穢すようなことは致しません」
私は両手を上げて、抵抗の意思がないことを示した。
「お話をさせていただけませんか」
やはり返事はない。強行突破する気もないし、このまま立ち去るべきか。
そう思った時、前方から声がかかった。
「人の子よ、ならば質問に答えなさい」
言語も問題ない。
「どうやって霧を抜けた?」
「念話で素性を明かしたら、道を開けて下さいました」
「・・・素性とは?」
一瞬、迷う。霧は精霊と関係があると思ったからロキの名前を簡単に出したが・・・いや、ここで黙っていては先に進めない。相手がロキの名を知らないならば、誰それ?で終わる気もするし。
「ロキの友人である、と」
「・・・!」
この反応は、ロキの名を知っている、か。
「ティエラと呼ばれています」
「いいでしょう。皆、武器を下げなさい」
そうして前方から現れたのは、長い髪を三つ編みでまとめた女性。先の細い体に、特徴的な尖った耳。・・・エルフ?
私を囲もうと散開していた4人も姿を見せた。皆同じ尖った耳を持っている。彼らは弓を持っていた。武器を下げて、ということは狙撃されそうだったということか。危ないところだったのね、私。
「改めまして。フォルティエラと申します」
手をおろしていいものか迷ったが、武器は下げてくれたのだ、大丈夫だろう。
「私達は固有の名前を持ちません。
フォルティエラ。世界樹の嘆きを止めたのは、あなたですか?」
嘆きというのは・・・怪我をして泣いていたときのことだろうか?
「3年ほど前の話であれば、そうです」
「・・・あなたを客人と認めましょう」
なんとか友好的に話をさせてもらえそうだ。




