↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界樹は夢を見る  作者: 深月
スーリヤ学術都市
134/201

133

歩いては休憩し、また歩く。時々小さな動物を見かけるが、それだけだ。森に大きな変化はないまま、野営を繰り返しながらただただ歩く日が、それから3日続いた。



いつものように木の上で目を覚ますと、薄っすらと広がる霧に包まれていた。

しかし、マントが湿った様子がないし、体が変に冷えているということもない。


「やっぱりこの霧、おかしいね」


探知魔法にもなんの反応もない。今のところ危険はない、か?


「カナデ、この霧・・・」


「何かわかった?」


「ううん、でも、同じ感じがする」


「同じ?」


何と?


「うん、あたしと同じ感じ」


レイと?実体化した精霊という意味だろうか。それとも精霊そのもの?


「うーん、霧全体がってこと?」


「そこまでは、ごめん、わからないわ」


ふむ。しかしこの霧に精霊が関わっているのだとしたら、この奥に世界樹に関連する何かはきっとある。

重力を軽減しながら枝から飛び降りる。ふわり、と地面に降り立って、進行方向を確認するために探知魔法に意識を集中すると。

何も反応がない。これはさっきと同じ結果だ。でもおかしい。

入り口の魔導具の反応どころか、動物の反応すら無いのだ。かといってこの霧が何らかの反応を示すこともなく・・・


「少しずつ濃くなってる?」


相変わらず水分を含まないその霧は、徐々に濃度を増しているように見える。濡れて体温が低下する心配はないが、安心できる状況ではない。

正直どうすべきか、いい案が浮かばない。しかしここで立ち尽くしていても状況は悪くなるだけだ。


「当初の予定通り、直進しよう」


幸い木の下で切り払った草はそのままだった。自分で作ったその一人分のスペースと、仮眠に使った木の位置関係から方向を決めて、進む。足元の生い茂る草をかき分けながらなので、まっすぐ歩けているかわからない。不安が滲みを作るかのように胸に広がっていく。


しばらく進むと、1m先も見えないくらいに濃い霧に包まれた。うん、これは先人たちが進めなかったのも納得だ。一旦立ち止まり、目指していた方角を見失わないよう、その辺りに生えていた木の枝を3本折り取って、矢印の形にして遠方に浮かべる。


「やっぱり、同じ感じがする」


レイが先程と同じことを繰り返す。この霧が精霊なのだとしたら、意思疎通ができるだろうか?


「ねぇ、聞こえている?私はフォルティエラ」


声に出して呼びかけてみるが、反応はない。

・・・実体化した精霊だとして、今まで会話ができたのはレイだけだ。それなら、念話のほうがまだ可能性がある。


『ねぇ、聞こえる?』


辺り全体に響かせるようなイメージで、魔力を乗せて呼びかけてみる。反応は無い。しかし・・・一瞬だけ、霧の流れが止まったような?

その後再び呼びかけても同じような変化は見られない。気のせいだったのだろうか。


『私はフォルティエラ。ロキの友達よ!』


もう一度、そう呼びかけた。

ざわり、と木々が鳴る音がする。無風だった私の周囲の風が動くのを感じる。

ロキの名前に、反応した!


『ロキにはティエラって呼ばれているわ!』


風の動きが少しずつ速くなっていく。そして少しずつ霧が晴れて・・・

前方の霧だけが晴れて、霧の間に私が通れるくらいの細い小道が出げした。

罠、ということは無いと思いたい。


『こっちに進めばいいの?』


返事はない。ただ小道がそこにあるだけだ。


「行くしか、ないよねっ」


そうして私は、足元の草を払いながら、小道を進んでいった。




3時間ほど歩いただろうか。草は腰辺りまで高くなり、ますます歩きづらい。しかしそれはつまり、私が入り口に向かって歩いているわけではないということだ。

そろそろ休憩を取りたい。どこまでこの小道が続くかはわからないが、すぐに霧を抜けられると思うのは楽観的すぎる。空中に障壁を展開し、その上に座る。意識して維持しなければいけないが、立ったまま休憩を取るよりはマシだろう。

マジックボックスから携帯食を取り出して、齧る。カップに固形のスープを入れて、水を注ぎ、魔法で加熱して熱いスープにした。まだ六の月、日差しの入らない森の中、しかも霧の中は少し寒い。温かい飲み物があるというだけで落ち着く感じがする。


探知魔法には相変わらず動物の反応すらみられ無い。この霧の中だからなのかもしれない。なにか魔法的な力が働いているのだろうか。魔法自体が発動しないわけではないので、アルディアの王宮のような魔法妨害でないことは確かだ。



十分に休憩を取ってから、再び小道を進む。そこからまた同じだけ歩いた頃、ついに周囲の霧は薄くなり、そして、晴れた。

目の前には背の低い草に覆われた、踏みならされた道が出現していた。霧を完全に抜けたようだ。


「さすがにちょっと疲れたね」


「あたしは別に疲れてないわ!」


「そりゃレイはずっと肩の上にいたじゃない・・・」


今日の探索はここまでに切り上げて、再び私は丈夫な木の上で仮眠を取ることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。