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この日は私への説明を混じえていたため、ミーティングは夕方まで続いた。
南東の遠征は遺跡の発掘調査なのだそうだ。水中の調査などを行っている研究チームが、海中で洞窟を発見したらしい。それがだいぶ深くまで続いていて、全容は未だ明らかになっていない。尚且つ、トリスの南東には切り立った巨大な岩山があるのだけれど、洞窟はその岩山の方向に続いている。場合によっては岩山の内部に続いていて、そこに遺跡があるのでは、という予測が立てられているのだそうだ。
とはいえ海底の洞窟を通過しなくてはいけないためなかなか手が出せずにいたのだが、魔導具研究チームに依頼していた水中探索用の魔導具の完成の目処が立った。それを使って遺跡研究チームと共に調査に行く予定、と。
本当に様々なチームとの協力関係があるようで感心したが、ザルツの研究室は元々共同研究先が多いため、色々なチームに顔が利く。それを利用して横のつながりの薄いチーム同士の橋渡し的な役割も担っているらしい。
東の調査は森林探索。迷いの森と呼ばれる広大な森が東に広がっているのだが、その先に遺跡や、あわよくば世界樹があるのでは、と調査の予定はずっとあったのだそうだが、確証や根拠に乏しく優先順位が低いために先送りされていたのだとか。
そんなわけで、今はこの2つの調査予定が同時進行中、と。
3人が丁寧に説明してくれたお陰で、私の研究に対する熱意はうなぎ登りだ。初日からこんなにわくわくするとは思っても見なかった。
「さて。そろそろ移動しましょうか」
「お、予定の時間じゃん。いこいこ」
席を立つ3人を、どこに行くのかと座ったまま見上げていると。
「カナデ、ほら立って立ってー」
ウルドに急かされて席を立つ私。ささっとテーブルの上を片付けるロッシュ。
そして、私の手を引いて研究室を出ていくザルツ。
「歓迎会をする、って昨日言ったでしょう?」
ザルツはそう言って、私の手を引いたまま研究棟を出て、そのまま街へ。
ミーティングの内容に夢中になりすぎてすっかり忘れていたが、そういえば昨日確かに聞いている。ザルツが手を繋いだまま先頭を歩いて、後ろからロッシュとウルドがついてくる。早速メンバーと街を歩けるなんてなんて楽しい時間だろう。
予めお店を予約してくれていたようで、到着したのはおしゃれなカフェバーのようなお店だった。お酒が出るお店なのはご容赦くださいね、と謝るザルツだが、未成年は私だけなのだからそれは全く構わない。
ただ・・・
「お待たせしました」
足を踏み入れた途端、店中から歓声が上がった。
「え?」
遅いぞ主役ー、とか、ようこそー、とか色んな声が掛けられる。中には手を繋いだままなのをはやし立てるような言葉もあったが、ザルツが手を離すことはなく、そのまま奥へと引っ張られた。
「え?え??」
訳もわからずわたわたする私に、ロッシュもウルドも楽しそうに笑っていた。
「今日は貸し切り!」
「共同研究、多いって言ったでしょー?」
つまり、他の研究チームの人たちもわざわざ集まってくれたということ?
「ティエラ、ご挨拶」
ザルツに促されて改めて店内を見渡すと、そこには若い人からかなり年配の方までたくさんの人が私の方を見て、待ちきれないような表情をしていた。
「あ、あの、フォルティエラ=カナデ=アルディアと申します!
よろしくお願いします!」
挨拶して頭を下げると、たくさんの歓迎の言葉が掛けられて。
「ではー、全員グラスを持ってー」
「はい、これカナデの分ね」
「準備はいいですね?
では・・・新しい仲間に、乾杯!」
「「「かんぱーーい!!」」」
高らかに持ち上げられるグラス、グラス同士をぶつけあう軽やかな音。
私の近くまで来て、よろしくねとグラスをぶつけていくたくさんの人。
歓迎会とか、転生前には年に一度はやったっけ。
でもあのときはこんな暖かな感じはなかった。上辺だけのものだった。
自分が歓迎される番でも、こんな風に嬉しい気持ちになったことはなかった。
あのときと、今と、何が違うのかわからない。
でも、何かが違う。
私の心境だけじゃなくて、ここに集まってくれた皆から感じられる何かが。
「えっ、ちょ、嘘でしょ!?」
「ごめんね暑苦しい大人ばっかりの歓迎会でごめんね!!」
自分でも気づかないうちに、大粒の涙が頬をつたっていた。
焦る皆の言葉に大きく首を振って、涙をぬぐって。
このときの私の笑顔は多分、人生史上一番の笑顔だったと思う。
「よかったね、カナデ」
「レイ、うん、私、スーリヤに来てよかった」
「うん」
レイと短く会話を交わした後、皆に順番にもみくちゃにされた。頭をわしゃわしゃされたり、また乾杯をしたり、抱きしめられたり、そしてそれをザルツが引き剥がすのを見て笑ったり。
あまりにうれしかったから、もう一度言った。
「みなさん、よろしくお願いします!」




