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3章スタートになります。
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「よし!」
鏡の前。髪型よし、襟元よし、スカートに皺もない。
今日は高等学園の入学式である。制服を用意するに当たって、既製品には私に合うサイズの物はなかった。本来なら12歳以上しか入学しないのだから当然と言えば当然だ。仕方ないのでオーダーメイドで作ってもらったのだが、この制服に袖を通す機会は多くない。というか、今日が終われば殆ど無いだろう。
建て前上は高等学園に所属するので入学式には出席するが、明日以降は共同研究者としてザルツの研究室に通うことになる。そして研究棟では制服の必要はない。
何故ザルツの研究室に決まっているかと言うと、推薦書を書いたのがザルツだからである。推薦者以外の研究室に入ろうと思ったら別途そちらに宛てて推薦書を書いてもらわなくてはならず、尚且つそれが受理されなければならない。まあ考えてみれば当然のような気もする。推薦者であるザルツ以外は私のことを知らないのだし、どれだけの実力があるのかも、研究に向いているのかもわからないのに、他の人が推薦したからという理由だけで無条件に受け入れるのは無理があるだろう。
それに、私にとって都合がいいとも言える。なんせ興味のあることが多すぎて1つに絞ることなどできそうもない。その点様々な分野を研究対象にするザルツの研究室ならばなんの問題もないのだから。
そんなわけで今日は入学式を終えたらクラスに分かれることもなくすぐに研究棟に移動して、研究室に私の机などなどを配置する予定になっている。
スーリヤに移住したのは先週。無事兄2人の成人の儀が執り行われ、そこで私の婚約についても予定通り公表された。
余談ではあるが、それまではアルディアでは薬指の指輪は外してチェーンを通し、ペンダントにして首からかけていた。公表された以上その必要も無くなったわけだが、研究棟に所属するにあたり、ザルツと揃いのリングを付けているのは対外的にはどうなのだろうと悩んだ結果、今もペンダント状のままである。
アクセサリーの装着に関する校則があるわけでもないので、右手の小指には小さな指輪、左手には指輪型のマジックボックスといういつものセットは変わらないので、完全に手ぶら。しかしマジックボックスには既に設置する予定の机や椅子が収納されている。
そんなわけでなんの荷物もなく、ゆっくりと歩いて高等学園に向かう。
家から高等学園までは少し距離がある。六芒星の北西側にある高等学園に対して、家は街の中でも北東側に位置しているのだ。一方これから所属するザルツの研究室は研究棟の中でも東側にあるので、そちらに通う分には非常に便利。普段行かない高等学園まで多少時間がかかったところで痛くも痒くもないのである。
高等学園の近くになると、同じように入学式に出席するのであろう学生たちが新品の制服を着て歩いている。その数も結構なもので、軽い人の流れができていたので、私もそこに合流した。このまま流れに乗っていけば迷うこと無く会場である講堂にたどり着けるだろう。
もくろみ通り学園内の地図を確認する必要もなく会場に辿り着いて、待つこと十数分。入学式が始まり、偉いおじさまおばさまの無駄に長いお話をただただ聞き流して、式は終了した。
会場に集まっていた学生のほとんどはクラスに移動するのだろう、一気に移動を始めたものだからかなりの人混みになってしまっている。
少し落ち着いてから席を立つことに決めて、同じように様子を伺っていたり、あるいは私と同じくらいの年齢の学生がいないかと周りをきょろきょろと見回してみたが、それらしい人物はいない。飛び級自体それほど多くはないらしく、毎年いるわけでもないと聞いているし、今年は私だけなのかも知れない。
ドアをノックする。中からはザルツの声が聞こえて、ドアを開けようとノブを掴んだら内側から勢い良く引っ張られて・・・危うく転ぶところだった。
出迎えてくれたのはザルツ本人。
他にも数人が所属していると聞いているけれど、今は一人のようだ。
「おはようございます、ザルツ様」
「おはようございます、さ、どうぞ中へ」
かなり広々とした部屋だ。中央に丸い大きなテーブルが置かれていて、その周りに複数の椅子。部屋の壁には大きな本棚があって、窓際にはソファセット。ティーセットが置かれていたりもするので、ミーティングルームみたいな感じなのだろうか?
左右の壁にはドアが4つ。続き部屋になっているようだ。
「この部屋はメンバー全員の共有スペースになってます。
外部の方との打ち合わせに使ったりもしますけど」
なるほど、やはり間違っていなかったようだ。
「右側2つのドアはメンバー2人がそれぞれ使っていますが今は不在です」
となると左側のうち片方がザルツの個室になっているのだろう。もう一方を使わせてもらう形になるのかな?
「左手前は作業部屋兼資料室になっています。魔導具を作りたいときはこちらを使ってください」
あれ?
「左奥が僕達の研究部屋になりますので、机の設置とか早速はじめましょうか」
「ザルツ様」
「はい?」
「どうして室長が自ら相部屋なんですか・・・」
「かなり広いので問題ありませんよ?」
何を言っても無駄なのはわかっている。わかっているだけに、思わずため息をついてしまう。
「・・・これからよろしくお願いします、ザルツ様」
そう言うと、ザルツはにっこりと笑ってくれたのだった。




