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世界樹は夢を見る  作者: 深月
アルディア第一学園
118/201

117

二章終了です。

次回から三章に入りますが、更新ペースは1日1回か2回に落とす予定です。

今後共おつきあい頂ければ幸いです。

「ちょっと、お父様に相談させて下さい」


そうしてザルツの自宅からアルディアの屋敷に戻り、私の報告を待って屋敷にいたヴォイドに事の次第を相談すると・・・


「ザルツ殿の隣ならば安心だな、何かあったら頼れる者が近くにいたほうがよかろう。

治安も良いのだろう?」


まさかの賛成・・・味方はいなかった・・・




結局、ヴォイドがかなり乗り気になってしまったために、その屋敷を買うことに決まった。

お値段、60万ガレ。およそ3000万円と考えれば、屋敷の規模からすれば安めだな、とは思う。しかしそんなものをプレゼントさせる気はない。

断固としてザルツの申し出は拒否して、自分のお財布からキャッシュで払った。

自腹で、しかもキャッシュで3000万円の家を買う8歳・・・我ながらほんとうに可愛げのないことこの上ない。


しかしこれでスーリヤでの拠点は決まった。どの部屋を工房にするかだけを先に決めて、ザルツの家の一角を占拠していた工房をお引っ越し。

これから度々訪れて少しずつ、キッチン周りの魔導具の設置をしたり、家具を揃えたりするつもりだ。実際に引っ越してくる春までは少し時間があるからね。


私が自腹で屋敷の購入をしたことで、ザルツは工房の引っ越しをする間もずっと不満げだった。僕は婚約者なのに、とか理由になっていないことをぶつくさ言っていたので聞こえないふりをしておいた。



しばらくはアルディアで家具やら食器やらを購入してはマジックボックスに収納し、水道を設置するためのあれこれも購入し、弱火、中火、強火を切り替えられるコンロの作成にも成功してそれもマジックボックスに詰め込んで、必要なものはある程度揃ったかな、という頃。

学校の無いアルの日に、それらをまとめて設置するべくまたスーリヤに移動した。


水道の設置に時間がかかってしまって、全ての家具を配置し終えた時には夕方になっていた。これでいつでもこの家で生活が始められる。

まだ物が少なく殺風景すぎるが、暮らしていると荷物はいつの間にか増えるものだ。そのうちいつの間にこんなに物が!?という状態になるのは避けられないし、必要だと思ったものはその時に揃えればいい。戸締まりをしっかりと確認して、直接アルディアの自室へと戻った。




三の月。私と入れ替わりで戻ってくる形になった次男のカイトと三男のテオが屋敷に戻ってきた。今月の末にはテオとジル、2人の成人の儀という名のパーティーが行われる。主役になる2人はまたしてもお勉強地獄。

心の中で応援しつつ、テオは忙しいのでカイトにスーリヤの話を聞いた。


「ティエラが飛び級とはなぁ。しかも婚約したんだって?」


「ええ。お兄様達も婚約者がそろそろ決まるのでは?」


「うん、まあいくつか話は出ているね。

兄上も正式に結婚したし、俺も19になるし・・・」


カイトはそう言って少し面倒くさそうな表情を浮かべる。


「それはいいとして、高等学園では何の授業を?」


「授業はどうするかわかりません、研究棟に所属するので」


「ティエラ、そこまで優秀だったのか・・・」


「カイトお兄様は何の研究をされていたんです?」


「俺はテオと共同で転生者について調べてたんだが、仮説を立てるくらいしかできなかった。一応その根拠とか含めて論文にはしたけどね」


興味があれば、とカイトはその論文を貸してくれた。


「返すのはいつでもいいよ。向こうに行って暇な時間にでも眺めてくれればいいさ」


「お借りします」


その後はおすすめの食堂とかどんなものが流行っていたとか、暮らしていく上でのあれこれを教えてくれた。事前にこういう情報を得られるのはありがたい。それにわくわくしてくるしね。新生活が楽しみである。


「しかし、今の学校には友達もいただろ?」


「うーん、それはどうでもいいですね」


私の言葉に、カイトは少し驚いたような顔をして・・・


「それも飛び級した理由、か。

まあ、子供ってのは残酷なもんだよな。

あんまり気にするな、研究者ってのはそういうのを気にしない人が多いからさ」


もしかしたらカイトもアルディアの学校で同じような思いをしていたのかもしれない。すぐに察したようにそう言ってくれた。最後の言葉は、ザルツが気兼ねなくザルツと呼ばれていたことを思い出させる。身分を知っていて尚ああいう風に接しているのだとしたら・・・


「お兄様も、友達ができました?」


「友達、かはわからないけど。

研究者の多くが相手を評価する基準は、研究内容やら熱意やらであって、身分じゃなかった。

少なくとも俺はそう感じたよ」


ならば、私にとって新生活は希望に満ちている。


「行くのがますます楽しみになりました!」


私は思わず笑顔になった。

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