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色々な店を見て回って、お土産を物色する私。といっても、アルディアとの違いはそれほど大きいわけではない。気候で言えば少しトリスのほうが北にあるというくらいで気温差がそれほどあるわけでもないし、アルディアもトリスもそれぞれ海を擁している点、鉱山を擁している点でも同じ。
ただ鉱山で産出される金属がトリス側では若干金が多いのだそうで、アルディアよりも金細工の製品が多く見られた。
両親にお揃いの金の懐中時計を購入し、ジルには風の魔法の活用法が主題の書物を。エイドは好みがまだよくわからないので、結婚する2人へ、ということでエルミラとお揃いのティーカップを購入した。
少し遅めの昼食を大通りから少し外れたお店でとる。路地の奥には大通りと違って木造と思しき建物が並び、雰囲気はだいぶ変わる。
「ご自分のお土産は?」
食後のデザートを食べながら、ザルツの言葉に少し悩む。トリスで特徴的なのはやはり魔導具の多様さだとは思うのだが、置いてある魔導具は参考にさせてもらって、自分好みにカスタマイズして作ることができるので購入する意味はあまりなし。となると・・・
「素材は、欲しいですね」
そう、金のインゴットとかね。我ながら8歳児らしくない発想だ。
「では宝石商ですかね」
「あ、あと」
ふと思いつく。
「革細工のお店が見たいです」
実はそれなりに自分で小遣い稼ぎができるようになってからというもの、一つ悩みがあった。
気に入ったお財布がないのである。財布と言ってもこの世界では紙幣は使われていないので、イメージとしてはコインケースだろうか。
それまでは買い物に出ることもなかったので財布自体の必要性を感じていなかったのだが、今では頻繁に素材やらを買いに行くようになった。その度に皮袋を持つというのは味気ない。自分で革製品は作れないので気に入ったものをひたすら探すしか無いのだけれど、アルディアでは未だお気に入りの一品には出会えていない。
「・・・僕に気を遣う必要はありませんよ?」
「いえ、気を遣っているわけではなくて、前に好きだと仰っていたのを思い出したら欲しいものも思い出したんです」
「それなら、いいんですけど」
疑わしい目で見られている。本当なのに。
しかし革細工が好きだと言っていたのは確かなので、いくつかおすすめのお店があるかもしれない。リクエストを追加する。
「可愛いものよりも、シンプルで機能性の高いもののほうが好きです。
ザルツ様のおすすめに期待させて頂いても?」
「では、張り切ってご案内致しましょうか」
店を出る前に、椅子に積んであったお土産の数々をさりげなくマジックボックスに収納する。これでこのあとの買い物も快適だ。作ってよかった。
通りに出て歩きながら、ザルツが不思議そうに私を眺めた。
「どうかしました?」
「マジックボックス、ですよね?
でも、それらしいものをお持ちではないので」
詮索するような真似をしてすみません、と謝られてしまう。別にザルツにマジックボックスのことを隠すつもりはない。
「これです」
そう言って左手を前に出した。人差し指に嵌っているのはザルツに贈ったのと同じ色の、でもそれよりもだいぶサイズの大きい霊石が埋まった指輪。ザルツにはそれが霊石であることはすぐにわかるはずだ。
「指輪、ですか?」
「はい。中に小さな空洞を作ってあって、そこをバッグ代わりに。
それで」
一度指輪を外して、ザルツに内側に霊石が露出しているのを見せた。
「指輪の内側で常に指に霊石が触れるようにしてあります。
あとはお渡しした小箱と同じ機能が付与してあるんです」
「なるほど、非常に実用的ですね」
自分で作った魔導具の解説をするのは楽しい。どういうことを考えてこうしたとか、たまには誰かに話したいものだ。その点ザルツは細かい点を理解してくれるし、話す相手としては文句のつけようがない。
小箱を使ってした実験のこととか、腕輪型のこととか、魔導具談義に花を咲かせながら王都観光は続く。
歩き疲れた頃にはもう夕方で、私達は王城に戻った。こんなに歩き回って買い物をしたのは初めてのことだけれど、歩き疲れた甲斐あって、素材もお土産も、お気に入りのお財布も入手できた。
夕食は居住区で4人で食卓を囲み、その後はザルツが部屋の前まで送ってくれて、丸一日遊び倒した充実感と心地よい疲れを感じつつ部屋に入ると、既に5人は揃っていて、今日どこに行ったとかどんなものを買ったとかを楽しそうに話していた。しっかり休暇を取ってくれたみたいで安心する。
大事なことをいい忘れたことに気づいて、寝る前にザルツに念話を送った。
ふかふかのベッドは今日もふかふかで、昨日とは打って変わって穏やかな気持ちで、眠りについたのだった。
『楽しかったです、おやすみなさい』




