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「ああこれはいい・・・!最高ですね!」
便利グッズを堪能するザルツ。喜んでもらえるのは非常に嬉しいのだが、プレゼントはまだあるんだ・・・
私は霊石に触れて、本を回収した。
「読書はあとでごゆっくり」
起き上がったザルツは、もう一つの包みを手に取る。かさかさと音を立てて包みが開けられ、出てきたのは銀製の小箱猫バージョンだ。
「可愛らしいですね、猫の小箱・・・説明書?」
添えてあった説明書をじっくりと読み進めるに従って、ザルツの表情は固まって行った。
あれ・・・?なにかだめだった?
「ティエラ様」
「はい」
「この魔導具のことは?」
ああ、なるほど。
「2人の秘密ということでお願いします」
そう答えると、ほっとした表情を浮かべてくれた。まあ確かに、物がものだけに公表できる品物ではないことは流石に私もわかっている。電話型のほうは万が一何かあった場合は公開してもいいが、他はダメだ。小箱も腕輪型のほうも。
ザルツは小箱の霊石に触れて、おお、と声を洩らした。多分、中に入っているものが何なのか、頭の中に浮かんだのだろう。
そしてすぐに、テーブルの上に出現する2つの魔導具。
「うわぁ、本当に出た・・・
ほんとにマジックボックス作っちゃったんですねティエラ様・・・」
「や、プレゼントの本命はその小箱じゃないので!中身の2つなので!」
マジックボックス作成の衝撃で影が薄くなってしまった2つの魔導具をアピールする私。だって小箱はおまけというかなんというか・・・お蔵入りしてた物ですし・・・
私の言葉を受けて、改めて2つをまじまじと見て、ザルツがまずは腕輪を装着した。腕輪と説明書を交互に見て、ふむふむと頷いている。そして、霊石に触れて。
『聞こえます?』
私も自分の腕にはめられた同じ魔導具の霊石に触れる。
『はい、いかがです?』
「おお、頭に声が響くような、不思議な感じですね」
うん、ちゃんと聞こえたようだ。次に2人でもう一つの魔導具も試すことにした。私が魔導具を起動すると、ザルツの手元でチリンとベルの音が鳴る。部屋の端と端同士でテストしたので、これで使い方も把握してもらえたはずだ。
「これは便利ですね。
でもティエラ様が帰ってしまったら使えないのが残念です」
「え?使えますよ?」
「え?」
ああ、そうか、言ってなかった。
「長距離テスト済み、です」
「つまり、アルディアからここまで届くんですか!?」
最上級の大粒霊石の実力を甘く見てはいけないのだ。
「え?でもどうやってテストしたんですか?
もう1セットあるんですか?」
「いえ、これだけですけど」
あ、まずい。自分の言葉の、失敗に気づく。いやでも嘘はつきたくないし、どうしようか。
「どうやって、テストを・・・?
あ、いや、すみません。答えたくなければそれでも大丈夫です」
気を遣わせてしまった。うーん、まだ隠しておくべきかもしれないけれど、それだと有事の際に頼ってもらえないだろうか。折角緊急時にヘルプコールが出せるようにと通信機を作ったのに、それで意味はあるだろうか?
「・・・今のところ知っているのは両親とジルお兄様だけなんですが、秘密にして頂けますか?」
「それは勿論ですけど、無理はなさらなくていいですよ?」
「いえ、それでは通信の魔導具を作った意味が半減してしまうので」
そう前置きして、私はアルディア王城の工房に、空間をつなげた。入り口は少し大きめに、ザルツも余裕で通れるように。
そして、ザルツの左手を取って、空間の歪みを通る。
「心配いりませんので、ついていらしてください」
ザルツには、私が歪みの中に消えていくようにしか見えないだろう。初めて通るときは怖かったしなぁ・・・
私が完全に工房側に移動した後も、右手は歪みの向こう側のままだ。躊躇っているのだろう。ザルツはまだ動かずに居る。
手を引いて無理やりこちらに引っ張ることもできなくはないけれど、そこまでするのは気が引ける。入り口が閉じないように集中しながら、しばらくそのまま私は待った。
数分は経っただろうか。意を決したようにザルツが歪みの向こう側で私の手をぎゅっと握ったかと思うと、一気にこちら側へと移動した。そして、息を呑む音。
「・・・ここ、は?」
「私の魔導具工房・・・と言っても訓練所を間借りしているだけですけど」
そう言って窓の外を示す。私にとっては見慣れた、アルディア王城の尖塔が見える。
「アルディアの、王宮ですか・・・?」
「ええ。自室に出ることもできるんですが、アルディア王宮は訓練所以外魔法が使えないので、入り口を閉じてしまうと戻れなくなっちゃうので。
こんな風に、一度行った場所ならば行き来できるんです」
そうして、私はもう一度、今度はザルツの部屋を思い浮かべて空間を接続する。
「部屋に誰か来てしまうと困りますし、質問は戻ってから」
再び手を引いてトリスに戻ると、今度はためらいなくザルツはついてきてくれた。なかなか肝が座っていらっしゃる。




