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世界樹は夢を見る  作者: 深月
アルディア第一学園
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作るのはザルツの誕生日プレゼントだ。はい、まだ作ってなかったんです。自分のマジックボックスを作るのに時間をかけすぎて、旅の前に間に合わなかったのだ。しかし言い訳をさせて欲しい。もっとゆるーい旅になるはずだったのだ。旅の途中で作る余裕が十分に持てるはずだったのだ!


当初は趣味的な道具を作ろうと考えていた。普段研究をしているザルツだから、本をふよふよと浮かせて寝転んだまま読める!みたいなそういうあると便利なグッズ。まあそれも作るけれども。


ただ、今回のことで通信機器の必要性を痛感したので、急遽作ることに決めたのだ。簡単な実験も必要なので時間はかけられない。作るのは二種類。1つは腕輪型で念話が可能なもの。もう一つは身につけられなくてもいいので周囲の音をそのまま届けられる、いわゆる携帯電話のようなもの。

便利グッズは構想も全て終わらせていたので、さくっと作る。霊石に触れると本を開いた状態で浮き上がり、もう一度触れるとゆっくりと降下する。念じるとページをめくる機能があればもっと便利なのだろうけど、それは今後の課題にしようと思う。


まず道具の方を作ってしまうことにして、プラチナの塊を取り出した。腕輪型にするけれど、いつも触れていられるようにする必要はないので、普通の球状の霊石を使う。

シンプルなバングルをサイズ違いで2つ。道具作りも慣れたものであっという間だ。

2つの魔導具が呼応するように作らなくてはいけないので、霊石を2つ並べて置いた。霊石に触れた状態で相手に届けたいと思ったことだけを意識に直接届ける、という機能を考える。言いたくない秘密とかがダダ漏れになったら嫌だものね。


付与を終えて一先ずこちらの魔導具は完成させてしまって・・・


もう一つの携帯電話型は、できれば呼び出し音みたいなものが欲しいよね。携帯電話というよりも、トランシーバー?霊石に触れている間だけ音の送受信がされるようにすれば、いきなり音が流れてくるという事態は避けられそう。

んー・・・霊石を2つずつ使おうか。1つは受信を知らせるためだけのもの。対応する霊石が起動したときに、ベルの音が鳴るようにしよう。もう一つは最初に触れたときに呼び出し音をならして、触れている間は音の送受信ができる、と。


うん、取り敢えずやってみるしかない。


そうして出来上がった魔導具をジェーンを呼んで1セットもってもらった。部屋の中で実験すると・・・


「きゃっ」


念話で話しかけると、部屋の反対隅でジェーンが驚いて声をあげた。うん、聞こえたみたい。


『霊石に触れながら、頭の中で私にこんにちは、と言ってみて』


『こ、こんにちは・・・?』


うん、成功。今度は電話型。


ジェーンにまず大きい方の霊石に触れてもらう。すると手元の魔導具からチリン、と言う音が響く。びっくりしない程度の程よい音だ。

こちらも大きい方の霊石に触れる。それを口元に近づけて、小声で


「聞こえたら触れている霊石に向かって小声で返事を」


「あ、聞こえます!」


うんうん、大丈夫。


「ありがとうジェーン。

今の実験を別の部屋同士でもう一度やりたいのだけれど、いいですか?」


ジェーンが頷いてくれたので、私は洗面所へ。

勿論そこから空間転移で第三訓練所にある自分の工房に向かった。自室に移動すると空間転移で戻れなくなるからね。

同じ実験を繰り返したが、ジェーンの声はしっかりと届いた。納得の出来だ。


転移で戻ると、ジェーンにお礼を言って、テーブルの上をきれいに片付ける。

銀の小箱猫バージョンに電話と念話の魔導具を収納して、中に魔導具が入っていることと、使い方の説明を書き添えた。直接手渡すのは便利グッズと、この小箱だけ。ラッピング用の包装紙は用意してあったんだけれど、やったことがなくて綺麗に包むことができないでいると、スイが見かねて手伝ってくれてとても華やかな2つの包みが仕上がった。もつべきものはメイドさん。


プレゼントの準備はできた。

そろそろ着替えて会場に向かう準備をしよう。



昨日の晩餐の時と同じ執事が迎えに来てくれた。そういえば段取りとか全く聞いていなかった。

私は最初から会場に入るのではなく、ザルツと一緒に、彼のエスコートであとから入場するらしい。うっかり会場に向かうところでした・・・

そのため、居住区のザルツの部屋へと案内された。

執事がドアをノックすると、中からザルツの返事。

中から準備を手伝っていたと思しきメイドさんがドアを開けてくれた。


部屋の中にはインテリアの類はなくて、本棚が壁面を覆うように設置されていた。その中を埋め尽くす本の数々に、ザルツらしいと思って少し笑ってしまった。

黒いタキシードを着てぴしっと決めたその姿は、視察のときとも少し印象が違う。あのときは正装ではあったけれど、ここまでしっかりとした服装ではなかったからなぁ。少し長めのアッシュグレイの髪がさらさらと梳かされ、胸ポケットの赤紫のハンカチーフがワンポイントになっている。うん、とても似合っていると思う。


執事が私が持っていた2つの包みを預かってくれた。パーティー会場で直接手渡せるようにあとで持ってきてくれるらしい。


準備が整ったようで、私達はそのまま控室に待機。会場に入るまでは、あと30分くらいはあるだろうか。

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