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トリス城は、内部に王族の居住区があるらしかった。晩餐の準備が整いました、と呼びに来てくれた執事の案内でその居住区にある会場に向かう。
ドアを開けてくれたので、一歩足を踏み入れると、そこにはザルツを含め3人が席について待っていてくれたので、私は両手でスカートを摘んでカーテシーをして、ご挨拶を。
「お招き頂きまし・・・」
「ティエラ様!」
挨拶を遮って、ザルツが席を立って駆け寄ってくる。きっと心配してくれたのだろう。
「ティエラ様、お怪我はありませんか?痛いところは?」
捲し立てるように言うザルツに、少し苦笑を混じえて言う。
「私は大丈夫ですから、ご挨拶をさせてください」
そして改めて3人に向き直り、再びカーテシーを。
「お招き頂きましてありがとうございます。
フォルティエラ=カナデ=アルディアでございます。
それから、私の精霊のレイです」
「うむ、ザルツの兄のモーガンだ。
この度は我が国の失態、本当に申し訳ない」
トリス国王・・・モーガン様は髭をたくわえたダンディなおじさまである。アッシュブラウンの髪は後ろに流されており、紫の瞳がザルツによく似ている。
「モーガン様、私にも伴のものにも大事ありませんので、どうかお顔をお上げください」
「わたくしからもお詫びをさせて頂戴。
姉のアルメリアと申します。
怪我がなくてなによりです、こんな可愛らしい子に傷がついてしまうところだったなんて・・・」
「ご心配ありがとうございます、アルメリア様」
アルメリアはいい意味で健康的なふくよかさを持った色白のおばさまである。決してぽっちゃりという領域ではない、女性的な柔らかさを感じさせるふくよかさ。
「ティエラ様・・・本当に、よかったです・・・」
今にも泣きそうな顔のザルツは、やはり色々と兄王と打ち合わせてくれたようで、王城前でのあのお芝居も予定通りのものだった。
とはいえ私が、迎えが無いことを切々と訴えるというのが想定されていたシナリオだったようで、まさか証人を連れて悠然とやってくるとは思っていなかったのだそうだ。それでもアドリブをきかせてくれたおかげでバルドは捕らえることができたし、騎士団の方でも早速調査が行われているらしい。
何度も謝罪に頭を下げてくる3人に、どうすれば本当に気にしていないことを伝えられるのかわからず困惑してしまう。うーん、困った。
「本当に気になさらないで。
もう、そんな風にされてはいつまで経ってもお義兄さまとお呼び出来ないではありませんか」
拗ねた風に言ってみる。不敬と取られるかどうかのぎりぎりの台詞だ。
「アルメリアよ、聞いたか・・・?
そうだ、私たちにもついに義妹ができるのだぞ・・・」
よかった。話題を変えることに成功。王に向かって失礼な!とか言われなくてよかった。
「ザルツ、本当によかった・・・よくぞこのような姫を妻に・・・」
涙もろい方なのだろうか。
「ええ、お兄様。義妹になる子が素敵な方でよかったわ。
ザルツもなかなかやるものですわね?」
「姉上、僕だってやるときはやるんです」
仲の良さそうな3人は、ようやく笑顔を見せてくれた。そうして食事が運ばれてくると、道中の話をしたり、ザルツが視察から帰ったときの得意げな様子を話してくれたり。
アルメリアは世話好きらしく、用意した部屋はどうかとか、明日の準備に手伝いは必要かとか、たくさん気にかけてくれた。この人たちが家族になるのなら、トリスに嫁ぐのはいつでも大丈夫そう。エイドの都合や学校の都合があるのでそんなすぐになるわけもないので、今から心配するようなことでもないのだけれど。
晩餐はとても楽しかった。部屋に戻る途中、レイが肩の上で、よかったね、と囁いてくれた。うん、とても良かった。2人で笑いあってから部屋のドアを開けると、5人もしっかり寛いでいたようで尚更安心した。
明日の準備もあるし、早めに休もう。
5人におやすみを言うと、私はベッドに潜り込んですぐに眠ってしまった。
パーティー当日。疲れていたせいかいつもより遅くまで眠ってしまって、起きたのは10時過ぎ。紅茶とクッキーを頂いて少し小腹を満たしてから、マジックボックスから今日着る予定のドレスやらアクセサリーやらを取り出して、ハンガーに掛けた。もしかしてシワになっていたらと思って早めに出してみたのだけれど、全くそんなことはなかった。
パーティーは夕方4時からという少し早めの時間なので、昼過ぎには着替えたりの準備を始めなくてはいけない。それまで1,2時間は猶予がある。となれば、やることは一つ。
ええ、勿論魔導具作りです。




