表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巨大ロボに乗って幼馴染みに告白し続ける話  作者: みつつきつきまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
68/70

第68話 幼馴染みと長い一日②

 寝ていたわけではない。


 ただただ目を閉じて、ぽかぽか陽気の下で潮風と穂乃果を感じながら時間の流れを眺めていただけだが、気が付くと三十分は過ぎていた。


 穂乃果の頭を支えている腕がしびれて感覚がなくなっている。その腕の上では、


「すー」


 僕とは違ってすっかり寝てしまった穂乃果が無駄に無防備をさらしまくっている。今なら胸を触る事も、お尻を触る事も、唇を触る事も、鼻を押し上げて変顔にする事も何でも可能。


「んー。隼のえっちぃ・・・」


 可能ではあるが、穂乃果に先を越されてしまったので今回はやめておこう。


 ひとまず起こす事にする。


「おーい。起きろ。寝てたら夜になるぞ」


 肩をゆすってみる。


「んー」


 もぞもぞしはじめる穂乃果。顔が近づいたり遠ざかったりして、ドキドキさせる。


 パチッと目を開ける。


 何度かゆっくりと瞬きをして、


「えっちな事した?」


「してないよ」


「ふーん」


 つまんなそうにするなよ。


 そんな穂乃果は子犬のように両手を伸ばして大きく伸びをする。


「水族館にも行くんだろ。あんまりのんびりしてると、全部回れないぞ」


「そうだね」


 なんて言いつつ、二人とも起き上がろうとしない。穂乃果の顔を見ると、どうやら僕と同じような気持ちだろう。


「分かってるんだけどさ。気持ちいいよね」


「穂乃果もそう思ってるんだ」


 この眠気を誘う陽気の中、大好きな幼馴染みとまどろんでいるだけで幸せを感じてしまって、永遠にこのままでいられそう。大好きな幼馴染みと——という部分は定かではないが、穂乃果も同様に幸せを感じているらしい。


 そんな訳で、特に何をするでもなく、何を話すでもないのに時間が過ぎて行く。あっと言う間に三十分。


「いやぁ、危ない危ない」


 このままだと本当に永遠にごろごろしていそうだったので、気合を入れて体を起こす。ついでに穂乃果の体も引き起こす。


 油断してると時間に身を任せてしまう。


「今日はあのままでも、私はいいんだけどね」


 僕もいいんだけど、それだと永遠にここから動けなくなる恐れがあるんでね。




 

 日曜日の水族館は家族連れでにぎわっていた。だが、薄暗い雰囲気のせいか周りの人たちはあまり気にならない。ちょっと湿度があがったような気がするくらい。


 そう言えば水族館で穂乃果とデートなんていつぶりだろうか。


 中学生の頃?小学生の頃?もっと前かな?穂乃果とはあらゆる場所へ一緒に行っているはずだが、水族館に来た記憶があまりない。


 穂乃果は昔からアクティブな遊びが好きだったから、じっくりと魚を眺める事が苦手だったのかもしれない。


 そんな訳で、管理棟にあるロッカーにバスケットを預けてから水族館にやってきたのだが、穂乃果が最初に食いついたのは、


「わー。隼、見て見て。クラゲがいっぱい」


 大型テレビくらいの大きさの水槽にひしめいているクラゲを指さして、穂乃果が笑う。それぞれ右に行ったり左に行ったり、自由に漂ってあちこちぶつかって波に身を任せている様子を眺めていると、少し羨ましくも感じてしまう。


「きっと何も考えてないんだろうな」


「この中で恋したりするのかな」


「どうだろうな」


 クラゲに『恋』という概念があるのかどうだか。それはわからないが、とにかく自由で幸せそうに感じる。


 穂乃果はクラゲが気に入ったようで、じっくりゆっくりとその動きを眺めていた。その間僕は、水槽に映った穂乃果の顔をずっと眺めていたのは内緒だ。


 そして次に穂乃果が足を止めたのは、『波打ち際体験プール』。波打ち際の浅瀬に生息する生き物に触れる事が出来る、体験型の水槽。


「あ、カニがいる!」


 すばやく逃げるカニに手を伸ばすが、触れる事も出来ずに岩陰に隠れてしまった。


「ほら、ヒトデだぞ」


「いや、やめて!」


 ヒトデをつまみあげて穂乃果に示してやると、水槽の水をぶっかけかねないほど嫌がられたので、おとなしく放してやる。そう、これで昔嫌われかけたからな。


 それから小魚を追いかけたりしつつも、子供たちが増えてきたのでその場を離れる。次の場所を目指して薄暗い回廊を並んで歩いていると、穂乃果がそっと手を繋いできた。この雰囲気のせいか、心臓が一度大きく跳ねる。


 その小さな手をしっかりと握り返してやりながら、魚達が優雅に泳ぎ回る水槽を眺めて回る。小さな熱帯魚がイソギンチャクと戯れていたり、愛嬌のある容姿をした魚が水槽の底でじっとしていたりする様子を眺めていると、時間を忘れてしまいそう。


「ねえ隼、あれ何?大きいダンゴムシみたいの」


「あれ何だっけ?」


「可愛いね」


 可愛いんだ。あれ。


 穂乃果の意外な美的感覚に驚きながらも、魚だけでない水槽を通り過ぎる。


「水族館って時間がゆっくり流れてるみたいだね」


「魚達には時間の概念は無いんだろうな」


 そんなゆったりとした時間が流れる中で、手のぬくもりを感じながら過ごしてるこの時が永遠に続けばいいのに。





 水族館を出ると、そらは薄っすらと茜色に染まり始めていた。思ったよりも長い時間回っていたみたいだ。


 時間のせいなのか、公園内には家族連れよりもカップルの姿が多くなっているような気がする。暗くなれば園内でライトアップなんかがされるから、デートコースとしては悪い選択ではない。


「で、これからどうする?もう帰る?」


 隣で手を繋ぐ穂乃果に問いかける。このまま園内で時間を潰してもいいし、疲れたと言うなら帰ってもいい。僕の本音はと言うと、このままカップル達が通るようなコースを辿って、日が落ちていい雰囲気になったら——いや、考えてたら緊張してきた。


「うーん」


 反応を見るに、帰りたいわけじゃなさそう。


「今日——って言うか昨日から、いろいろあったじゃん。いろいろさ」


 うん。いろいろあった。それは間違いない。


「それに楽しかったしね。もうちょっと一緒にいようよ」


「いいよ。穂乃果がいたいというならいつまでも」


 僕が答えると穂乃果は抜群の笑顔を見せる。でもその笑顔の向こうに、少しの緊張が見て取れるのは僕の気のせいだろうか。


「じゃあ、あれ乗ろうよ」


 そんな穂乃果はある方向を指さす。この海浜公園のランドマークとも言える、巨大な観覧車。まるでこちらを見下ろすようなその巨体に向かって、恋人達をかき分けて歩き出した。

 


 


 



 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ