第64話 幼馴染みと長い夜②
今までの人生で食べた中で一番おいしかったハート型のハンバーグを食べ終え、星型のハンバーグを食べ終えた穂乃果としばらくのんびり。
リビングにいようかどうか迷いつつ、結局僕の部屋に戻り、二人でベッドでごろごろする。
「食べてすぐ寝たら、太るよ」
穂乃果は頭をこつんとぶつけてくる。
「穂乃果はもうちょっと太っても大丈夫だろ」
「おっぱいの事?」
「そういう訳じゃないって」
大きくなって悪いわけじゃないだろうけども。
「でもさ~」
穂乃果がにやにやとこっちを見てくる。
「隼、太ったんじゃない?いつもいつもおいしいお弁当食べてるから」
「ををっ。脇をつつくなっ。えいっ」
「や、やり返してこないでよぉ」
「穂乃果は・・・あんまり変わらないか」
仕返しに穂乃果の脇腹をつついてみるが、ひきしまっていい脇腹。
「ほら~前はこんなに肉無かったよ。もっとすっきりして筋肉質でカッコよかったのに。あ~あ、幸せ太りかな?」
「だったら穂乃果のせいだろ」
「ふーん。幸せなんだ」
いや、幸せだけどさ。食後に好きな子とベッドに寝ころんで、脇腹をつつきあう一時。このためだけに太ろうかと悩むくらい幸せ。
いや、待てよ。こうして脇腹をつつきあっているどさくさで、もうちょっと上をつんつん出来ないだろうか。太っているかどうかを確認する必要のない、あの場所をさりげなく触れられないだろうか。
穂乃果がどちらかと言うとウェルカムなんだから、どさくさに紛れる必要は無いのだが、そのどさくさは穂乃果に向けてと言うよりは、僕に足りない勇気をごまかすため、と言える。
「ほらほら~。胸板も薄くなってない?」
おあつらえ向きに穂乃果が僕の胸をつつき始めた。これで、自然な胸つんつんが可能になったぞ。
「ほ、穂乃果の方こそ——」
緊張で声が裏返ったが、どうにか手を穂乃果の膨らみに向ける。が、
「ぎゅぅ」
穂乃果が僕の胸に顔を埋めてきたので、行き場を失う。
「んー。やっぱり変わらないか」
頬で僕の胸板を確認した穂乃果が、はにかんだ笑みを受ける。
そんな穂乃果が可愛くて、抱きつかれたのが嬉しくて、手の行先などどうでもよくなってしまうのだった。
「それじゃあシャワー浴びて来るから」
ひとしきり僕の胸板を堪能した穂乃果は、僕の手の行先などつゆ知らず、置いてあった予備の白い下着と、適当に選んだ僕のシャツを手にしてシャワーへと向って行った。
穂乃果が消えて行った扉を眺めながら手をにぎにぎ。まあ、そこには何もないんだが。
ついでに穂乃果がごろごろしてた場所に触れる。ぬくもりが残ってる。
揉んでみる。いや、代わりになるかよ。
少し悲しくなりながらも、穂乃果の残り香とぬくもりに悶々として、しばし。
「あがったよー」
シャワーあがりで頬を上気させた、彼シャツ姿の穂乃果。相変わらず太ももがまぶしくて刺激が強い。サイズ感は以前と同じくらいだが、二度目だからか妙に堂々とした立ち居振る舞い。
僕はそうはいかないので、
「だったら髪乾かしておけよ」
そう言い残してシャワーに向かう。
自分を落ち着かせるため、そして心の奥にある勇気を呼び出すため、ゆっくりとぬるめのシャワーを浴びる。
そして改めて決心。
今夜中に決める。今夜中に、穂乃果のおっぱいを触る。
・・・我ながらおかしな決心。でも、それぐらいしないと触れない気がする。
自分の度胸の無さを恨みながら部屋へ戻ると、ベッドに腰かけた穂乃果が憮然とした顔で待っていた。髪は乾いているよう。
「ん?どうした?」
さっきと全く違う雰囲気に戸惑いながらも、彼シャツ姿の穂乃果の隣に腰かける。
「んー」
口をへのじにして僕を睨む。何なんだ。どうした。
「何かあったのか?」
穂乃果の頭をぐしゃぐしゃと撫でてやりながら言うと、シャワーのせいではないほど頬を赤くした穂乃果が口を開いた。
「あの・・・この前のアニメ見ようと思ってソフトを探してたのね」
「うん」
「そしたらアニメじゃなくてさ、こんなのが」
言って穂乃果が傍らから取り出したDVDソフト。
「それは——」
血の気が引く。
浮気の証拠みたいに僕に見せつけてくるのは、『巨乳美女大集合』と言う、いかがわしいDVD。ジャケットに映る、上半身裸の女性の数々。
瞬時に頭を巡らす。汗を流したばっかりなのに、冷や汗が前身から流れる。どう誤魔化そう。
「巨乳——やっぱりそうなんだ」
穂乃果の目が怖い。
「いや、違う。そうじゃない」
「何が違うの?みんなおっきいよ」
「いや、だから、大きいからってこれにしたわけじゃなくて・・・って言うか、確か僕が手に入れた訳じゃなくて、確か、そうだ、誰かが持って来て——」
「でも見てたんでしょ?見て、興奮してたんでしょ?」
「いや、だから——」
見たかどうかも定かじゃない。
「やっぱり大きい方がいいんだ。小さいのは興味無いんだ」
穂乃果はそう言ってごろんと横になって、背を向ける。パンツ丸出しも気にする事なく、ベッドに横たわって口をとがらせる。
怒った?いじけた?やきもち?
どれかは分からないが、気分を害してしまったらしい。
だから・・・小さいのに興味が無いとかじゃなくて、大きいのが好きとかじゃなくて、こういうDVDの大部分は大きい人で成り立ってるから、趣味嗜好に関係なく巨乳に当たる可能性が高い訳で。
でもそれを言ったところで穂乃果の機嫌がよくなるとも思えない。
ここで穂乃果の機嫌を直すにはどうすればいいか。
こういう時に必要なのは勇気。
ぐっと丹田に力を込め、穂乃果の後ろで添い寝するように横になる。シャンプーとボディーソープの匂い。
「ごめん、穂乃果。何だか分かんないけど、ごめん」
「・・・」
返事をしない。
「いやあの・・・変なDVDの事は謝るけどさ」
「・・・」
答えない穂乃果に手を回す。後ろから抱き締めるように。
手を回して——膨らみに手を乗せる。
「やっぱりこっちの方がいい」
手をにぎにぎ。麓の部分から、五合目、それから頂上付近へと段階的に。優しく包み込むように。確かに小さめだけれども、ブラジャーの感覚の下に潜むとんでもなく柔らかなその膨らみ。思っていたよりも存在感があって、柔らかい。
今僕は穂乃果の胸を——おっぱいを揉んでいるのか。こうでもしないと触れないのは情けなくもあるが、ようやく決心が身を結んだ。
そして触れてみると、今度は手放すのが惜しい。
ドキドキとした心臓の鼓動がダイレクトに伝わってくる。
「やっぱり時間かかったじゃん。ここまでしないと触れないって、世話がやけるなぁ」
茶化した言い方だが、伝わってくる鼓動がだんだん早くなる。
それもまた心地よくて、ついつい手に力がこもる。
「ちょっ・・・強いって・・・」
「ご、ごめん」
ちょっと調子に乗り過ぎた。慌てて手を放す。いくら何でもひとりよがりになってはいけない。
「まったく・・・いくら好きだからって乱暴はダメだよ」
体を起こして胸元を押さえる穂乃果に軽く睨まれる。
「ごめんって。触り心地が良くってさ」
「で、どうだった?私のおっぱいは」
気を取り直して穂乃果が胸を張ってそう聞いてくる。こう見てもやっぱり大きくはない。
大きくはないけれども、
「うん。やっぱり柔らかいもんだね。大きいどら焼きくらいの大きさだった」
「・・・酷い」
上目遣いで睨んでくる穂乃果。そんなに酷い事言ったかな。
「だったら罰として、隼には責任をもっておっぱいをサイズアップさせる事を命じます。拒否は許しません」
なんだよそれ。罰なのかご褒美なのか、よくは分からないが、その役割を担う事に文句はないけども。
「もし私が巨乳になったら、巨乳揉み放題だよ?」
うむ。それも魅力的。




