第62話 幼馴染みのバストサイズ
「私のおっぱいが小さいのは、隼のせいだと思うんだ」
今さっき幼馴染みに愛の告白を受けた穂乃果は、照れ隠しなのかどうなのかよく分からない事を言う。なぜ穂乃果のバストサイズに僕が関係しているのか。言いがかりにも程がある。
「ずっと一緒にいるのに私のおっぱいに注目しないから、成長するのをやめたんだ」
「んな訳あるかよ」
告白してしまった余韻が残る僕は、穂乃果をまともに見る事が出来ない。
対して穂乃果はベッドに座った体勢で僕を見ている。
「見られたら成長するって言うでしょ」
「言わないよ」
「だから、隼のせい」
「んな訳あるか」
幼馴染みの胸を四六時中見てたら変態だろ。
「触っても来ないし」
「触るわけないだろう」
何で不満そうなんだよ。どういう理由で幼馴染みの胸を触るんだよ。
「好きな女の子のおっぱいなら、触りたいんじゃないの?」
「触りたいとか触りたくないとか、実際に触るかどうかは別だろう」
決して穂乃果の胸を触りたくないという意味ではない。むしろ——いや、やめておこう。
「マッサージしたら大きくなるって言うよ?」
自分の胸を鷲掴みにするな。
「だったら頑張ってマッサージしろよ」
何が言いたいんだよ。
「やっぱり誰かにマッサージしてもらった方が効果があるんだって。ナントカってホルモンが分泌されて」
「胡散臭いな」
「操ちゃんが言ってたよ」
門脇操——確かに立派なものをお持ちだったが。
「姫にでも頼めよ。仲いいんだから」
「でもさあ・・・おっぱいを大きくするために姫ちゃんにマッサージしてもらうって、ちょっと屈辱的じゃない?」
想像すると確かにそうかも。
「志保さんとかは?娘の成長のためなら喜んでマッサージしてくれるんじゃないのか?」
「ママに頼むって・・・恥ずかしいじゃん」
そういうモンなのか?つーか、さっきから何の話をしてるんだか。
「だからさ、隼、マッサージしてよ」
「・・・え?」
意味がわからない。
「好きな女の子のために、協力してよ」
「志保さんに頼むのは恥ずかしいのに、僕には頼めるのかよ」
「隼のせいだから!」
「違うって言ってるだろ!」
穂乃果の頼みとは言え、それはさすがに出来ない。決してやりたくないという意味ではないが、今の関係性ではそこに踏み込む事は出来ない。今のところ僕が穂乃果に告白しただけの一方通行な関係。
無遠慮に体を触れ合う関係ではない。はず。
「むー」
不満そうに頬を膨らませる穂乃果。何が不満なんだか。
「じゃあ、私のおっぱいがずっとこのままだったら、隼のせいなんだから責任とってよね。来年までにBにならなかったら」
Bって何の話だ。
「責任って何だよ」
その文言はどきっとする。
「それは自分で考えて」
強気なようで、どうして俯くんだか。おかしな事考えちゃうだろうが。
でも、穂乃果のバストサイズが目標に届かなかった場合、僕は責任を取らなければならないのか(ワクワク)。
その後、ゲームに飽きた穂乃果はベッドでごろごろしながら漫画なんぞを読み始める。その傍らに腰かけて、僕は別のゲームを始める。
「体育祭の打ち上げ楽しかったなぁ」
「そうだねー。そう言えば、加賀山君に姫ちゃんの事聞かれたけど、どういう意味だなんだろう?」
「え?何だよそれ」
などと何でもない話をしつつ時間を過ごしていると、穂乃果からの返答が返って来なくなった。
振り向いてみると、
「すー」
読みかけの漫画を顔面に落として眠ってしまっている穂乃果がいた。
そうか。眠っちゃったのか。
・・・・・・
相変わらず平和そうな寝顔してるな。
・・・可愛いな。
それに、相変わらず無防備だ。ついさっき告白されたばっかりだって言うのに、下心を持った男の前でよく眠れるな。あらぬ場所を触られたり、唇を狙われたりするかもしれないのに。
これはやはり、僕が何もしないと安心してるからなのか、何かされてもいいと思っているのか。いや、まさか。
いや、おそらくは僕がどうせ何もしないとバカにしているな?そりゃあ、今までも分からせてやるとか言って迫ったり、雰囲気にのまれて顔を近づけてみたりしたものの、結局なにも出来ないままだったから、穂乃果の判断は間違っていない。
「でも、このままじゃいられないよな・・・」
穂乃果の寝顔を見ながら呟く。
僕もそろそろやる時はやるんだと思い知らせてやらないと。寝てるけど。
ひとまずゲームを中断。
手を伸ばす。
・・・伸ばしてはみたものの、どこに触れようとか考えてなかった。
やっぱり、お——いやいや、さすがにスタートダッシュで突っ走りすぎか。もうちょっと助走が欲しい。
それならばと小さな手に触れてみる。毎日のようにつないだり、触れられたりしているのに、なんだか妙にドキドキする。細い指一本一本確かめるように触れて、絡めるようにつないでみる。
改めて確認してみると、小さくて柔らかい手だな。子供の頃の感覚とあまり変わりない。
ひとしきり穂乃果の手に触れて——
「すー」
まだ目覚める気配はない。
続いて頬に手を伸ばす。柔らかくてすべすべしている、大福のような頬。少し前にキスマークつけて怒られたのも含め、何度か唇でも触れた事がある。
つんつん。つついてみる。
「むみゃむにゃ・・・」
何か食べているかのように口をもごもごさせる。かわいい。
そこまで触れてから、改めて穂乃果を見下ろす。仰向けになって、バンザイするような姿勢。『そこ』はがらあき。
じっくりと観察。「注目しないから成長をやめたんだ」とよくわからない言いがかりをつけられた、その場所。穂乃果の胸。そんなに言うのなら注目してやろうじゃないか。
うむ。やはり小さめなのは隠しようもない。薄手のTシャツを押し上げるそれは確かに控え目だが、それでも確かになだらかなふくらみを形作っている。
穂乃果の言うように、こうして注目していれば大きくなるんだろうか。いやいや、別にそうなってほしいとか思ってる訳では・・・訳ではない。
ともあれ、好きな人の一部分なのだから、見てもいいと言われれば見てしまうだろう。
そうして無防備な穂乃果の姿を堪能して——ふと興味が湧く。
どんな感触なんだろう。
確かに腕を組んでいる時に当たったとか、おぶった時に背中に押し付けられたとかは案外ある。その時の感触もよかったから、手で触れた時の感触はどんなにいいものなのだろうか、という好奇心。あくまで好奇心。
寝ている穂乃果を見下ろしつつ、手を伸ばしてみる。
触らない事に文句を言われたし、マッサージしてって言うくらいだから、触ってもいいよね?
さっきは意地張ってマッサージを拒んでたけど、そりゃあ触りたいさ。
だからって寝てる間に触るのはどうなんだ、っていう議論はおいといて。
両掌を穂乃果の二つの膨らみに近づける。
「んー。隼のえっちぃ・・・」
穂乃果の寝言にびくっと手を引っ込める。いや、今の僕はえっちぃ事をしようとしてるのだ。穂乃果の夢の中の僕と一緒だ。だから躊躇ってはいけない。
ごくっと喉を鳴らして、手を近づける。
と、
「・・・」
ふいに目を覚ました穂乃果と目が合う。
「・・・」
僕の手は穂乃果山脈上空五センチくらいで待機中。
「・・・」
「あ、あの。ほ、穂乃果・・・」
「やっぱり触りたいんだ?」
やけに真っすぐな目だ。邪な事を考えた僕の精神を破壊してしまいそうな、真っすぐすぎる目。
「えーと・・・」
汗をかきながら言い淀むが、この手がはっきりと答えている。
ふふんと穂乃果。大きな目で挑戦的に見上げてくる。
「やっぱり隼は私のおっぱいが好きなんだ」
得意げに言う穂乃果は襲いかかりたいくらい可愛いが——この手はいつまでこうしてればいいのやら。このまま着陸させてもいいのか、ひっこめればいいのか。
「どう?触りたい?」
もう素直になるべきか。
「そりゃあもちろん触り——」
ビニョニョニョニョニョニョニョニョ
そんな時に響く気持ち悪い音。響いてはいるのだが、
「ちょっと無視しようか」
「触りたいんでしょ。仕方ないなぁ」
『無視しないで下さい』
無機質な電子音声が紛れ込んでくる。
『お楽しみのところ申し訳ありませんが、ADMが現れますので』
「見てたのか?」
『いえ。何も見てません』
言い方が怪しいな。
『とにかく、転送しますので』
そうして僕らは転送され、僕の掌は柔らかな穂乃果の柔肌ではなく、味気ない操縦桿に触れる事になる。つまらん。
転送してきたADMと対峙しながら、
「早く終わらせて、触らせてもらおう」
「えー。隼はえっちぃだな」
楽し気に言っているから、無くはないかも。
今回は今までよりもスムーズにADMの処理は出来たかもしれない。




