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巨大ロボに乗って幼馴染みに告白し続ける話  作者: みつつきつきまる


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第57話 幼馴染みと体育祭②

 とうとう時間になり、スタート地点に移動。


 男女混合二人三脚は学年ごとの競技で、それぞれクラスは二つのグループがあるので、クラス対抗戦が別の選手で二度行われる事になる。


 男女混合二人三脚と言えばポップな競技にも聞こえるかもしれないが、実際には四百メートルの校庭のコースを一周するという、なかなか過酷な競技だ。


『まずは一年生の競技からです!』


 午前中最後の競技だからか、放送部による実況にも力が入る。


 選手それぞれに特徴的なキャッチコピーをつけて紹介しつつ、躍動する選手の一挙手一投足を伝えている。


『一組の山本君と佐々木さんコンビがリードしています!話によると、二人は中学校からの友人同士だとか。それに続くのは四組の双子である霧島兄妹!さすが双子!』


 その二組が鍔迫り合いしているが、その背後ではマイペースに足を進める三組と、さっきからつまずきまくっている二組。コンビネーションやら相性やらが大事だと思い知らされる光景。それでも楽しそうだからいいんだけど。


 競技的にも興行的にも盛り上がり、ついに僕ら二年生の出番。


「集中してね隼君!」


 姫香はそう言って気合を入れて来るけれども、姫香の体操着姿が僕の集中力の邪魔をしない事を願う。ここでジャージ着ろとは言えないし。


 とにかくどうにか集中しないと。勝てないの別にいいが、穂乃果の前で恥をさらすわけにはいかない。


 こっそり少し重めのため息をつきつつ、紹介の始まった二年生第一レースを眺める。


『そして二年二組、『クールビューティなガキ大将』山中美潮選手と、『最速の天然ストライカー』高坂健太選手!』


 随分失礼なキャッチフレーズだな。怒ってもいいと思うぞ。


「きゃー!高坂くーん!」


「高坂センパーイ!」


 そんな黄色い声援に応えてないでさ。ほら、隣の冷たい視線にも気づいた方がいいと思うぞ。


 そんな僕の心配をよそに、それぞれの足をしっかり結ぶと、がしっと大胆に肩を組む。ピュアに手を繋ぎたいと言っていた割には大胆だな。


 反面そっと健太の腰に手を回す山中の様子が初々しい。


 二人の背景を知っている僕としては、その光景が感慨深くある。


「美潮達が順調そうで安心した」


 二人と長い付き合いである姫香も同じ気持ちらしい。


 しみじみした気持ちのまま、スタートを見守り、そして、


『一位は二年二組、山中さん高坂君の『隠れ幼馴染みコンビ』!大差をつけての圧勝です!』


 まるで一人で走ってるのではないかと思うほどのスムーズな動きで、他の追随を許さず、その影すら踏ませず。スタートからゴールまでの独走。


 そしてゴールした瞬間、健太は山中の手をとって声援に応えるようにその手を掲げる。


 これは手を繋いだって言えるのか?


 まあ、健太が満足そうだから、いいか。





 そしてとうとう僕らの出番。鼻息荒くしている姫香を脇目に見つつ、足を結ぶ。以前と違ってお互いハーフパンツなので、素肌が触れ合うのが少し恥ずかしい。でもそんな事を言っている場合でもない。


 今の僕にとって、煩悩が最大の敵。


 そんな煩悩を振り払う意味もこめて、応援席に目を移す。


 いろんな意味で盛り上がる僕らのクラスのエリア。そんな中で同様に盛り上がっている幼馴染みの姿が見える。


 うん。やっぱり可愛い。


 そんな穂乃果の期待に応えたい。いい恰好したいという気持ちが芽生える。


 それでいて隣の金髪ギャルに魅了されてはいけないという、困難なミッションに挑まなければならない。


 よし。気合を入れよう。僕の穂乃果への想いが試されている。


「ねえ、隼君」


 スタート時間が近づく中、姫香が声を潜めて言って来た。二人の足を襷で結んでいるせいで、どうしても距離が近い。


「私がどうして隼君と二人三脚する気になったかわかる?」


「どうしてって・・・押し付けられたからじゃないのか?」


「まあそうなんだけどね。でもさ、ほら・・・」


 姫香が指さすのは、応援席にいる穂乃果の姿。さっきまで一緒に盛り上がっていたものの、こっちを見て憮然とした表情をしている。


「私と隼君が仲良くすれば、穂乃果がやきもち妬くでしょ?そしたらさ、穂乃果が自分の気持ちに気づくんじゃないか、ってね」


「自分の気持ち?」


 姫香がふふっと笑う。


「まあまあ。あんまり気にしないで。私が今恋愛出来ないから、ひとの恋愛事に口出したいだけだから」


 悪戯っ子のような、それでいてどこか寂しそうな笑顔を見せる。


 その辺の事情は分からないが——僕ぐらいの関係性では聞けないような話かな。


『それでは続いての選手です!』


 姫香の事情はともかく、そろそろ出番。


 相も変わらず特徴的なキャッチフレーズで呼ばれる。


『続いては、二年二組の『跳ねる!ゴールデン・ダイナマイト・ガール』新内姫香選手!』


 うおー、という今までで一番の歓声。注目度の高さを感じて気おくれしてしまう。


『そしてそのパートナーは、『史上最強の幼馴染みキラー』柊木隼選手!』


 それやめろ。


「おおおおお!ひっこめ柊木!」


「地獄に落ちろー柊木!」


「和泉さんは俺に任せろー!」


 勝手な事を言いやがって。


 姫香はともかく、僕には味方は多くないらしい。


 何度も言うが、僕を姫香のパートナーとして押し付けたくせに、何で文句言われなきゃならないんだか。


 いいやもう。こうなりゃ開き直ってやる。


「じゃ、穂乃果にやきもち妬かせちゃいましょ」


 そういう姫香の肩を強く掴んで——脇腹に当たるふわふわした感触はどうにかして頭から追い出して——歓声とブーイングが入り混じる中スタートが切られたが——


 惜しくも二位だったのは、僕の力不足に違いない。





 そしてお昼の時間。教室で食べる者や、生徒席で食べる者。校庭の日陰に場所を確保する者など、各々が時間を過ごす中、僕は穂乃果と教室でお弁当を広げていた。


 穂乃果が朝早くから準備したお手製のお弁当。しょっぱい卵焼き。やっぱりこれがなきゃ。


「借り物競争っていつだ?」


 穂乃果の出番である借り物競争は、午後に設定されている。


「お昼食べたらすぐみたい。どうしよう。ちょっと緊張してきた」


「なんで緊張すんだよ。指令を見て何か借りるだけだろ」


 練習らしい練習も必要なかったし。


 すると穂乃果は歪なおにぎりを頬張りながら難しい顔をする。


「クラスごとの点差が小さいから、借り物競争の結果によって優勝できるかもしれないんだって」


 体育祭はポイント制で、各競技の上位者にポイントが振り分けられ、その合計点によって総合優勝が決まるシステム。今年はうまいことポイントが分散していて、どのクラスにも優勝のチャンスがありそうな、そんな塩梅らしい。


「そうよ。穂乃果」


 近くでお弁当を食べていた姫香が同調する。姫香も自作のお弁当らしい。彩り鮮やかな、おいしそうでヘルシーなお弁当。悔しいが(?)おいしそう。


「借り物競争の結果如何によっては、最後のクラス対抗リレーで勝っても優勝出来なくなるんだから。穂乃果には頑張ってもらわないと」


「あんまりプレッシャーかけるなよ」


 穂乃果の動きが止まったじゃないか。


「リレーに出る私だってプレッシャーあるんだから。穂乃果にもプレッシャー感じてもらわないとね」


 何気なくいいながら、プチトマトを口に運ぶ姫香。そう言えば、姫香は何競技出てるんだか。


「でも、隼は全然プレッシャー受けてないじゃない。ズルいよ」


「そんな事はないぞ。あの二人三脚は結構重かったぞ」


「嘘だ。姫ちゃんとくっついて喜んでただけでしょ」


 そんな訳あるか。喜んで——無かったぞ。なかったはずだぞ。きっぱり言えないのは自信が無かったからじゃないぞ。


「ふふふ」


 そんな僕と穂乃果の様子を見て笑う姫香。


「その様子なら大丈夫そうね。穂乃果には隼君がいるから、何も心配する事はないわね」


 満足そうに言う姫香だが、どういうわけか拗ねてしまった穂乃果が大丈夫と言えるのか、僕にはわからなかった。

 









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