表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巨大ロボに乗って幼馴染みに告白し続ける話  作者: みつつきつきまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
52/73

第52話 幼馴染みの風邪ひき


「あれ?柊木君、穂乃果は?」


 翌日学校へ到着するなり、金髪サイドテールが声をかけてきた。なぜなら、僕の隣に幼馴染みがいなかったからだ。


「風邪ひいたんだとさ」


 朝連絡が来て、熱が三十九度近くあるらしい。見事なフラグ回収。


「昨日の雨に降られたの?」


「まあ、そんな感じ」


 雨に降られて濡れたとしても、あのまままっすぐ帰れていれば問題なかったのかもしれないが、空気の読めないロボットに乗せられたせいで手遅れになった模様。ローレライを下りた頃にはすっかり冷え切ってたし。


 新内にそう説明しているうちに授業が始まり、無味無臭な一日が始まる。


 穂乃果がいないだけでこんなにつまらないのか。


 穂乃果の手作り弁当のない昼休みが味気ない事この上ない。久しぶりの学食が決して味が悪いわけではないが、僕としてはあのしょっぱい卵焼きが恋しい。


それから虚無とも言える午後の授業を終え、何の生産性も感じないホームルームを終え、光の速さで準備を終えて脇目も振らずに教室を出ようと——


「ねえ、柊木君」


 金髪ギャルに呼び止められた。


 穂乃果とは違う朗らかさ丸出しの、陽キャの代名詞のようなキラキラした美少女である新内姫香は、同じように金髪をきらきらさせながら僕を見ている。


「何だ」


「急いでるからって冷たくしないでよ」


「してないけど」


「またまた~」


 軽い感じでばしばし叩いてくる。距離の近さがギャルっぽい。


「穂乃果のお見舞い行くんでしょ?」


「お見舞い——まあ、行くけど」


 さすかに女の子のお見舞いに行くというのは恥ずかしいので、口ごもってしまう。


「じゃなくて看病なのかな?」


「そこまではね。志保さん——穂乃果のお母さんもそろそろ帰って来るだろうし」


「風邪ひいて弱ってる穂乃果を襲いに行くんでしょ」


「しないって」


「またまた~」


 などと言ってまたばしばし叩いてくる。


 なんなんだおい。


「もういいか?早く帰りたいんだが」


 穂乃果のいないこの教室にはもう用は無いんだが。


「まーまー、慌てなさんな」


 ぽんぽん肩を叩いてくる。ギャルはボディタッチが多い。


「私も穂乃果のお見舞いに行くから。一緒に行こうよ」





 結局押し切られて、新内と和泉家へ向かう。


 いつも穂乃果と歩いている道を金髪ギャルと歩く不思議。穂乃果よりも短いスカートがどうしても気になってしまう。


 どうにか平然を装って和泉家に到着しインターフォンを押すと、


「はいはーい。隼君いらっしゃーい。って」


 満面の笑みを浮かべた志保さんが顔を出し、その視線が僕の隣に佇む新内の姿で止まる。


「・・・隼君、浮気?」


「い、いや、浮気とか・・・」


「こんにちは。柊木君の浮気相手の新内姫香です」


 おかしな事言うな。


「あらあら。隼君も隅におけないわねー」


 からかってるのかな。


「で、あなたが姫ちゃんね。穂乃果から聞いてるわ」


 まあ穂乃果の親友なんだから、話は聞いているだろうな。なんとなくノリが似ている、陽寄りの二人。


 そのノリに疲れそうな気はするものの、志保さんに導かれて家に入る。


 その途中、肘でつついてくる新内。


「柊木君と穂乃果って、親公認なの?」


「何の公認だよ」


「ほら、ただならぬ関係の」


「その言い方やめろ」


「そうね。私達としては、隼君に穂乃果の面倒見てもらいたいと思ってるんだけど」


「やっぱり!もう、祝福しかされない二人じゃない」


 目をきらきらさせるな。


 そんな新内に向かい、


「だから、穂乃果から隼君取らないでね」


 くるりと振り向いて言う志保さん。


「穂乃果が素直になれば引き下がりますよ」


 新内は涼しい顔。


 やれやれ。二人とも初対面の割に相性がいいような。共通の話題として、僕をからかう、というネタがあるからかもしれないけど。


「じゃあ、穂乃果は部屋にいるから。寝てるかもしれないけどね」


 志保さんにそう言われ、階段を上って穂乃果の部屋に向かう。


「穂乃果入るぞー」


 いつものように一声かけてドアを開ける。


「返事なくても開けるんだ」


 あっさりドアを開けたのを見て、新内が目を丸くする。


「女の子の部屋なのに、気を使ったりしないんだね」


「そうか?」


 ちょっと躊躇した時期もあったものの、その時以外はこうだからな。今まで着替え中でしたとかいうサプライズは無かったし。


 実際、今も薄暗い部屋でベッドで横になっているだけだし。


「んー」


 声がして、穂乃果がぐるりとこっちを見る。


「はぁい。穂乃果」


 鼻にかかった穂乃果の声に応える新内。


 額に冷たいシートを張って少し虚ろで眠そうな顔をしていた穂乃果だが、新内の顔を見るとぱっと表情が和らぐ。


 と思ったら僕の顔を見て顔を曇らせる。


「一緒に来たの?」


 僕が来たのが嫌だったかな?風邪ひいて寝込んでいる時に男には部屋に入られたくないか。


「悪いな。早々に帰るから」


 悲しいが、 様子が見られればいい。


「そ、そういう事じゃないよ。けほ。けほ」


「無理すんなよ」


 風邪がひどくなったら元も子もない。


「うん。ごめん」


 穂乃果は言いながら体を起こす。身に着けているレモンイエローのパジャマは子供っぽいが、赤らんだ頬とのコントラストは、この場で口にするような事ではないとはおもうが、色っぽささえ感じてしまう。


「今日はずっと寝てたの?」


 新内が言いながらベッドに腰かける。妹でも見るような顔で穂乃果の頭を撫でる。


 穂乃果はくすぐったそうに目を細めると、


「うん。眠たくって」


 僕に見せるのとは違う甘えた表情を見せる。


 そんな様子に僕の中に芽生える嫉妬心・・・。何でだ。相手はギャルだろ。


「でも、何で二人で来たの?」


 僕に向けられる穂乃果の視線は、なぜか鋭い。海水浴場で向けられたような、責めるような視線。


「それは新内が——」


「柊木君がね、弱った穂乃果に興奮して押し倒しちゃわないか、心配になってついてきたの」


 変な事言うなよ。


「・・・大丈夫だよ」


 何が大丈夫なんだか。僕がそんな事しても大丈夫って意味なのか。そんな訳ないよな。


 しかも何でそんなに不満そうなのか。やっぱり僕に来てほしくなかったのかな?

 

「ふふふ」


 穂乃果と、それと僕の反応も確認した新内が含み笑いする。


「じゃあ、私は穂乃果のためにお粥作ってくるから。あとは二人でゆっくりね」


 新内はそう言いながら、短いスカートを翻して部屋を出ていく。


 それにしても新内がお粥作るって。あんまりイメージ出来ないな。


「姫ちゃんはすごい料理上手なんだよ。お弁当も毎日自分で作ってるんだって」


「そうなのか?あまり料理出来そうに見えないけど」


「姫ちゃんって家庭的なんだよ」


 人は見た目で判断できないもんだな。


「ずるいよねー。あんなに可愛くて、頭が良くて、料理も上手だって。おっぱいも大きいし」


「穂乃果も頑張れよ」


「そんな簡単におっぱいは大きくならないよ」


 そんな話はしてない。


「頭がいいとか、料理が上手だとか、その辺を言ってるんだよ」


「それも簡単じゃないよ」


 まあ、そうなんだけどさ。


 少しして新内が土鍋にいれたお粥を持って来て、ローテーブルに置く。ベッドから下りてテーブルにつく穂乃果。僕も対面に座る。


「ねえねえ柊木君」


 隣に座った新内が肘でつついてくる。


「ふーふーして、あーんじゃないの?」


 にやにやすんな。


「じゃあ、あーん」


 穂乃果も口を開けて待機するな。


「ったく・・・」


 仕方なく、僕もベッドに腰かけて土鍋に入ったお粥をレンゲですくう。卵の入ったシンプルなお粥。おいしそう。


 ついつい一口。


「うま」


 思わず口から洩れてしまう。素朴ながらもしっかりと味のする、それでいて濃すぎない味付け。何気ないが、繊細で美味。


「何で食べるのー!」


 穂乃果に責められる。


「ごめんごめん」


 謝りつつ、もう一度レンゲでお粥をすくって息を吹きかける。くすくす笑う新内の顔が目の端に映っている。


「はい、あーん」


 言ってはみるものの、金髪ギャルに見られていると考えると恥ずかしい。


「あーん」


 大きく口を開ける穂乃果。目は閉じなくていい。


 ぱくっと、レンゲにくいつく。


 もみもみと租借し、飲み込む。


「おいしいなぁ~」


 瞬間にだらしなく緩む穂乃果の顔、風邪をひいていると味覚がおかしくなる事もあ多いが、新内のお粥はそうでじゃないらしい。


「普通に間接キスはするんだね」


 新内が目を丸くしているのはともかく、


「もっともっと」


 穂乃果が要求するので、餌付けするように次々にお粥を穂乃果の口に運ぶ。あっという間に食べきってしまう。


「はー」


 満足そうに息を吐く穂乃果。食欲があるようなので一安心。


「この分なら風邪もすぐ治るだろうな」


 僕が言うと穂乃果は笑顔を見せた。


「じゃあ、フェアリーランド行けるかな」


「それはやめた方がいいだろ」


「えー」


「何々?デートの約束?」


「何でもいいだろ」


「えー?私に隠すような事なの?」


「新内は関係ないだろ」


「私にも優しくしてよ。柊木君」


「あんまり姫ちゃんに優しくしてほしくないなー」


 などと、盛り上がってきた頃、


 ビニョニョニョニョニョニョ


 ふいに気持ち悪い音が部屋に響き始めた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ