表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巨大ロボに乗って幼馴染みに告白し続ける話  作者: みつつきつきまる


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
42/69

第42話 幼馴染みと海④

 照りつける太陽。青い海。白い砂浜。弾ける水着ギャル達。


 隣町の海水浴場は賑わっていた。


 そんな海水浴場を、僕はこことは違う別の次元からローレライに乗って見下ろしている。


 背景は薄っすら赤いものの、向こうからは認識されないから水着ギャルも見放題。安全性が確保され、ナンパ野郎も少ないこの海水浴場は女子比率が高い。


 白いのやら黒いのやら。大きいのやら小さいのやらがふわふわゆらゆら揺れている。


 ・・・最近は随分と大胆な水着があるようで。


 眼福眼福。


 いやいや。この海水浴場には穂乃果を含めた同級生がいるのだ。あまり鼻の下を伸ばしている場合ではない。


 しかも穂乃果はおそらく水着姿。彼シャツとは趣が違うが、これはこれで心が踊らずにはいられない。


 とは言えまずは目の前に現れたADMをどうにかしないといけない。水着の穂乃果はまだ来ていないが。


「一人でどうにか出来ないかな」


 なんて思いつつ、ADMと対峙する。これがローレライの成れの果てだとは思えない、ずんぐりとしたヒトデのような姿。海なので違和感がない。訳はない。


 現状ローレライを動かす事は出来るが、穂乃果はいないので照準をつける事が出来ない。と言う事は、


「体を正面に向ければいいのかな?」


 ADMと真正面で向かい合い、パンチを繰り出してみる。狙いが定まらず、ADMの頭の横を拳が通り過ぎる。同じようにキックを繰り出してはみるが、やはりADMの横を通り過ぎる。



 拳や足の動きを予測して体の向きを考えなければならないのか。出来ない事はないだろうが、難しい。


「これぐらいかな?」


 体の向きを少しずつ調整しながら、ようやくパンチが直撃。


 出来なくはないが、これを繰り返すのは大変。パイロットが二人いる理由が分かったような。


 でもそれならば一人でどうにか出来るように訓練でも積ませて、パイロットを自力で調達すればいいのに。そうすれば現地調達しないで済むだろうに。


「ハル、そっちの次元にはパイロットいないの?」


 聞いてみる。


『こちらの次元の人類は滅亡してしまっているので、人間はいないのです』


「さらっとすごい事をいうな」


 あまり深く掘り下げたくない。


 気を取り直して。せっかくなのでいろいろ試してみよう。


「ハル、今マーメイド・エフェクトは撃てる?」


『出来ますが・・・ダメージの蓄積が足りないため、おそらくADMを消滅させる事はできませんよ』


「まあ、試しだよ」


 言うと、目の前のデバイスが銃に変化する。


 ADMに照準を合わせて、


「穂乃果、大好きだよ」


 放たれたマーメイド・エフェクトの淡い光ははADMに直撃したが、ADMに吸収されるようにその光は収束した。


 なるほどね。やっぱりある程度のダメージの蓄積は必要なのか。


 ともあれ、


「世界中の誰よりも穂乃果の事が好きです」


 もう一度マーメイド・エフェクトを放つ。また同じように光は放たれ、収束した。


 それよりも。


 抑圧された気持ちを解放させる事が、どうも気持ちをすっきりさせてくれるような気がする。素直に穂乃果への想いを口にする事が妙に癖になる。


 ハルはいるが、他には誰も聞いていない。思う存分穂乃果への気持ちを口にしよう。


「穂乃果、誰よりも好きだよ」


 光は常に淡い。


 体が少し熱くなる。


「大好きだから——」


「って、もう。いつも乱暴なんだから」


「穂乃果を僕のものにし——」


 突然の事ながら、どうにか言葉を飲み込む。


 淡い光の中ふいにコックピットに現れた穂乃果と目が合う。


「・・・」


「・・・」


 聞かれた。


 聞かれてしまった。僕の素直な気持ちを。わずかに零れた本能と、ほんの少しの下心。


 水着を着た穂乃果。水色のセパレート水着。胸元に大き目のフリルがついているせいで、膨らみも谷間も見えないのが残念。


 以前の『彼シャツ』と比べると露出度は確かに高いが、どちらがいいかと聞かれると十年位は迷う事になるだろう。


 ではなく、


「隼、どういう事?」


 汚らわしい物でも見るように、穂乃果。


「えーと。いや、あの」


 恥ずかしいと言うよりは、抑圧された気持ちを晒した解放感が心地よい。ああ、これがマーメイド・エフェクトか。


 ただ、下心を覗かれた穂乃果にどう言い訳しよう。


「隼って、そんな事考えてるんだ」


 穂乃果の半眼が怖い。軽蔑されたかも。


 そんな不安をよそに、


「ふーん。そうなんだ。ちょっと安心した」


 おや?安心した?軽蔑されてない?


 ドキドキしてほしいって言ってたけど、それも関係あるのかな?


 とは言うものの、もっと踏み込んだ事を口走らなくて良かった。





「あんまり見ないでよぉ」


 穂乃果の方を見ながらローレライを操縦していると、穂乃果がくすぐったそうな顔でそんな事を言う。


 様々な機械に溢れたコックピット。そんなSFチックな光景に、水着美女。この非日常感は不思議と言うか、正直ちょっとエロい。


「見たらダメなのか?」


「ダメ。恥ずかしいから」


 無理言うな。大好きな子が水着姿でいるんだぞ。そりゃ見るだろ。


 幸い、穂乃果が照準を合わせる役割をしてくれているので、僕はわき見運転が可能。多少の下心は許してほしい。


 丸みを帯びた肩だとか、しっかりくびれた腰だとか、決して太くないのに健康的な太ももだとか、つい見てしまうのは仕方ない。これは本能だ。


 胸元が隠される水着をつけているのが残念ではあるが、これはやっぱりその大きさを気にしているからだろうか。


「もう・・・見ないでって」


 『彼シャツ』の時もそうだったが、恥ずかしそうにしているのが何かイイ。僕の中の何かがくすぐられる。


「ああ、ごめん」


 なんて言いつつ目が離せない。


『柊木隼サン、そろそろマーメイド・エフェクトを放つ頃ですが』


 どこか申し訳なさそうなハル。


 仕方ない。目の前で銃の形になったデバイスを握ってやるか。


 目指す先にはいつの間にやらズタボロになったADM。わき見運転でもここまで出来る。二人なら。


「じゃあ、そうだな・・・」


 いつものように穂乃果への想いを——と思ったが、何を言おう。


 さっき色々言ったからなぁ。いまさら好きだとか大好きだとかで満足出来る気がしない。


 少し頭がボーっとする。


 少し膨れる穂乃果をチラリと見ながら、


「穂乃果の事を愛しています」


 様々な感情が乗った言葉と同時に引き金を引く。


 さっきと同じような淡い光。先ほどは何事も無く収束した光は、今度はADMを優しく包み込むと、空気に溶けるようにそのヒトデのような姿を消滅させてゆく。


 抱き締められるような優しい光が薄れゆく中、目を丸くした穂乃果と目が合う。信じられないくらい真っ赤になって、言葉を失っている。


 それに反して僕は解放感に包まれている。おそらくそれは、夏の海のせい。





『パイロット離脱コード』


 ハルの無機質で無感情な声がして、視界が一瞬ぼやける。


 瞬きしたくらいの時間。次に視界がはっきりした時、目の間に穂乃果がいた。


「うおぉっ!」


「きゃっ」


 目の前も目の前。


 どうやら二人入るにしては狭すぎる小部屋。一メートル四方ほどの広さの空間で、ほとんど抱き合うほどの距離で穂乃果と向かい合っている。


「・・・ここはどこだ?」


「ここは・・・あの・・・」


 目の前で体を密着させるほどの距離感にいる穂乃果は、この小部屋のある部分に目を向ける。


 見えたのはシャワーヘッド。シャワールーム?


 耳を澄ませてみれば、寄せては返す波の音。そして、女子達がはしゃぐ声。となるとここは海水浴場のシャワールーム?僕は家から跳ばされたのに、戻ってきてみれば海水浴場?


『別々の場所に戻すのは手間なので、同じ場所に戻しました』


 僕の思考を読んだようなハルのセリフ。


 だとすると、狭いシャワールームにて穂乃果と二人きり。改めて考えると濃密な空気に咽返りそう。酸欠になる。


「や、やっぱりダメだっ」


「もう無理っ」


 同時に限界に達した僕と穂乃果が同時に扉を蹴破るようにシャワールームを飛び出る。


 真っ白な砂浜に目を眩ませながら、煩悩の無い空気を思い切り吸い込む。隣では真っ赤な顔をして深呼吸する穂乃果。


「はあ・・・」


「はあ・・・」


 息を整えて前を見る。


「——!」


「——!」


 すると目の前には同年代位の知らない水着女子が三人。口を押さえて目を丸くしている。


 最初はどうしてそんな反応をしているのか分からなかったが——隣の穂乃果と顔を見合わせて、やはり二人同時に理解する。


 狭く外部と遮断されたシャワールームから息を切らして出てくる男女二人。


 はてさて。中では何が行われていたでしょうか。


 て、事だよね。


 理解した僕は、何事も無かったフリをして穂乃果の手を引いてその場を立ち去る事にした。


 穂乃果の手がやけに熱く感じるのは、きっと夏のせいだ。


  




 






 






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ