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巨大ロボに乗って幼馴染みに告白し続ける話  作者: みつつきつきまる


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第4話 幼馴染みは愛想尽かす

「あわわわわわわわ」


 穂乃果は飛び込むように自宅の玄関に飛び込み、靴を放り出すように脱ぎ捨てると、大騒ぎするように階段を一足飛ばしで駆け上がると、自室に飛び込んだ。


「穂乃果どうしたの〜?告白されたみたいな慌て振りだけど」


 呑気な母親の声も聞こえるが、無視。


 部屋に飛び込んだ勢いのまま、布団を頭から被る。


「あわわわわわ」


 それ以外の言葉が出てこない。


 ほんの数分前、あおの大きなロボットの小さなコクピットの中で行われた一連の出来事が、穂乃果の頭から離れない。


『穂乃果の事が大好きだ』


 親友であり、兄であり、幼馴染みである隼の言葉が頭の中をぐるぐるまわる。


 今までの人生で受けた、最大の衝撃であった。


 もちろん、穂乃果は隼の事は好きだし、仲良くしていたいと思う。でもそれはただの親愛の好きであって、恋愛の好きではない。と、思う。


 隼の方もそうだと疑った事はなかった。


 でも、それが事実ではないと思い知らされた。頭を鈍器で殴られたような衝撃に思わず走って逃げて来てしまった。


 しかし、


「どうしよう・・・」


 顔を埋めたクッションに吐き出す。


「今まで通りでいられなくなるのかなぁ・・・嫌だなぁ・・・」


 恋愛感情関係なく、穂乃果が一緒にいて一番心地良いのが隼である事は確かだ。一番気兼ねなく付き合えて、一番自分が自分でいられる存在。そんな幼馴染みと一緒にいられなくなるのではないかという不安にかられる。


「だから隼も言わなかったのかも」


 心地よい関係が壊れる怖さ。それを今嫌でも実感させられている。


 それと同時に疑問もある。


「でも、何で私なんだろう」


 穂乃果自身、自分に足らない部分が多くある事は自覚している。勉強は出来ないし、要領は悪いし、家事も出来ないし、片付けも苦手。学校にも同じクラスにも、自分よりも可愛くてしっかりした女の子はたくさんいる。


 そんな自分が、しっかり者の隼に異性として好かれる理由がわからなかった。世話の焼ける幼馴染みに呆れているとばかり思っていた。


 今も部屋には脱ぎ散らかされた服が散乱している。


 そう考えると不安になる。


「愛想尽かされたらどうしよう」


 今までは幼馴染みだし、妹みたいなものだしと気楽に構えていた部分があった。だが、隼が自分を一人の女の子として見ている事が分かると、そんな不安が沸き起こる。他の女の子と比べられる立場になったのだ。


 もっとも、そんな不安を抱えていたのは穂乃果だけではないようで——


『和泉穂乃果サン』


 声がして、体を起こす。スカートのポケットが仄かに光っている。


 ポケットに突っ込んでいた手のひらサイズの端末——ハルピュリア・デバイスを取り出すと、薄緑色の表面に白い幾何学模様が走る。


 デバイスから無感情な中性的な声が響く。


『和泉穂乃果サン。我々には懸念している事があります』


「懸念?何を?」


『和泉穂乃果サンの社会性の無さと、女子力の低さです』


「そっ・・・そんなひどい事言わなくていいじゃない!」


 自覚している事を改めて言わなくてもいいじゃないか——穂乃果は思う。


『いえ、これが懸念なのです。和泉穂乃果サン、マーメイド・エフェクトには何が必要か、覚えていますか?』


「えーと・・・気合いと根性?」


『内包型デルタエネルギーです』


 ハルは穂乃果の言葉をまともにとりあわなかった。


『抑圧された恋愛エネルギーが、マーメイド・エフェクトの強さに直結します。つまり今現在、柊木隼サンが和泉穂乃果サンを愛する気持ちがあればこそ、マーメイド・エフェクトは強さを発揮するのです』


「改めて言われると・・・恥ずかしい・・・」


『ですから、柊木隼サンが和泉穂乃果サンを愛してい続けてくれる事が必要なのです。しかし、和泉穂乃果サンの生活パターンを分析すると、柊木隼サンが愛想を尽かす可能性が限りなく高い。それでは困るのです』


「やっぱり酷い事言われてる気がする」


『ですから、和泉穂乃果サンには柊木隼サンに愛してもらい続ける為に努力して頂きたいのです』


「愛してもらい続ける為にって、具体的にはどんな?」


『私には分かりません』


 がくっと力が抜ける。


『しかし、これが世界を救う為には必要だと言う事は覚えておいてください。世界を救う為には。和泉穂乃果サンには柊木隼サンに愛され続けているのが必須条件なのです。愛され続けるよう、努力して下さい』


「努力・・・愛される努力って何だろう?」


 はっきり言ってそんな努力はした事がない。その上、好かれようと思った事すらない。しかし、世界を救う為だと言われたら考えざるを得ない。


 隼に——ひいては一般的な男子に好かれる為には何をしたらいいだろうか。


 もしかしたら、同世代の男女が異性にモテようと努力する事と一緒だろうか?


「うーん」


 よく分からない。しかし、自分を好きだと言ってくれる人に愛されようとする、って何だろう。


「意味わかんないよね」


 思わず口元を綻ばせながら呟いていると、ふいにインターフォンが鳴った。


「はーい」


 母親の声が聞こえる。


「あらー、隼君どうしたの?」


 びくっと穂乃果の体が跳ねる。


「え?穂乃果が鞄を忘れて?あらあら。しょうがない子ねぇー、まーまー、上がって上がって!そんな事言わないで!うちで晩御飯食べて行って!佳代子も今日も遅いんでしょ?いいからいいから!穂乃果〜穂乃果〜隼君来たよー!」


 半ば強引に隼を連れ込む母親の声が聞こえる。母親はしっかりものの隼を気に入っていて、どうも二人をくっつけようとしている気配がある。


「えー!どうしよどうしよ!」


 ベッドから飛び起きて部屋をうろうろする。心の準備ができていない。今どんな顔をして隼に会えばいいのか。


 そうは言っても無反応でいるとこの部屋に来てしまうかもしれない。今まで何度となくこの部屋には来た事はあるし、片付けを手伝ってもらった事もあるが、今この部屋で二人きりにされるとどうしていいか分からない。


 急いでそこに落ちていた部屋着に着替えて部屋を出る。


 恐る恐る階段を下りてリビングを覗くと、隼と母親がソファで話していた。どちらかといえば母親が一方的に喋っているようだったが。


「ほら、穂乃果は何も出来ない子でしょ?料理ぐらい出来た方がいいなって思うけど、あんまりその気はなさそうなのよね」


「はあ」


「それに、部屋の片付けとかね。しょっちゅう隼君が手伝いに来てくれるから、穂乃果は甘えてると思うんだ、私は」


「はあ」


「でも隼君は甘やかすばかりじゃないもんね。ちゃんと穂乃果を怒ってくれるし、ちゃんとダメな事はダメって言ってくれる。出来ない事は全部教えてくれるしね。それ、大事な事だと思うんだよね」


「はあ」


「だから穂乃果にはね〜しっかりものの隼君がいいと思うのよ」


「はあ」


 穂乃果が階段でもじもじしながら何度目かの生返事を聞き流していると、隼に気づかれた。その視線を追いかけるように、母親にも気づかれる。


 そんな母親がため息をつく。


「もうちょっと身だしなみに気を遣ってもらえるとねぇ・・・いくら部屋着と言っても隼君の前でスウェットはちょっと・・・」


「むっ・・・こ、これしか無かったんだもん!」


「ちゃんと洗濯出さないからでしょ。まあ、部屋着だから仕方ないのかもしれないけど、女の子だって事を忘れてると、隼君に愛想尽かされるんだからね」


 そう言ってキッチンに消えた母親の言葉が心にひっかかる。先程ハルに言われた事と一緒だ。



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