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巨大ロボに乗って幼馴染みに告白し続ける話  作者: みつつきつきまる


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第31話 幼馴染みはうまくいく?

 ゲームセンターの近く、エレベーターホールにあるベンチに並んで座り、時間を過ごす僕と穂乃果。


 今頃別の時空でローレライに乗った健太と山中がADMと戦っていると考えると不思議な気持ちだが、それよりもぴったりと体を寄り添わせて腕をがっちりと胸に抱えつつ、僕の太ももをさわさわする穂乃果に困惑している。


 穂乃果はTシャツ姿だから物理的に僕たちを遮る布は薄いし、ショートパンツ姿の生足をさわさわし返す訳にもいかないので困ってしまう。


 恐るべし吊り橋効果。ツリバシ・エフェクト。


 休日のショッピングモール。それなりに人目があるので濃密な接触は控えてもらいたい。嬉しいけど。


「二人は今どうしてるかな」


 上目遣いでこっちを見ながらそう言う穂乃果の言葉は、『邪魔者はもういないね』と煽情的に煽っているようにも聞こえる。


「まあ、戦ってるんだろうな。もしかしたらその辺にいるかも」


 なるべく無関心を装いつつ返す。実は心がざわついて仕方ないんだが。


 とは言え実際今どこでローレライがADMといちゃついているかは定かではない。違う次元ではあるらしいが、いつものようにあの公園かもしれないし、もしかしたらこのショッピングモールの中かもしれない。転送場所は自由らしいし。


 そう言えば、


「でも何でローレライもADMも自由に場所選べるんだろうな」


 単純な疑問。以前ハルの言っていたセリフから考えると、ローレライの転送場所をある程度コントロールできるのは理解分かるのだが、ADMの転送場所もコントロールできるのは意味が分からない。


 ADMが転送されてきたから、ローレライが転送されてくるんじゃないのか?


「何でだろうね。次元の関係でうまいことやるんじゃない?」


 穂乃果は興味なさそうに適当に言う。まあ、穂乃果が興味を持ちそうな内容でないけども。


「よく考えるとおかしくないか?ADMの転送場所を何でコントロール出来るんだか。だったらもっと都合のいい所に転送すればいいのに」


「そうだねー。ローレライのいる場所にADMが転送されて来るんじゃないの?」


 特に興味も考えもなしに言う穂乃果。そんな事を言うよりも僕の腕に頬を擦り付ける事にご執心。


 適当な穂乃果のセリフだが——よくよく思い出してみれば、いつもローレライの後にADMが転送されて来る事を思い出す。案外真をついていたりして。


「それなら自分たちのテリトリーに転送させて集中的に討伐すればいいのに。そう言えばローレライを運用してんのは誰なんだろうな」


 考えてみればローレライについても知らない事だらけ。誰が作って誰が運用しているのかなど。ローレライに関わる『人』と接した事もないし、関係者と言えばハルしかいない。


「ローレライはどこから来るんだろうね。で、戦ってる次元はどこなんだろう。こことは違うのかな?」


「三つの次元を行き来してるって事?すごい技術だねぇ」


「それで僕らがパイロット?自前で用意すればいいと思わないか?」


「そうかも」


 分からない事だらけ。


 そんな不確実なものに命——は別に賭けるほどではないが、恋心を賭けて戦うのは何だか納得いかない。


 今度詳しく問い詰めないと。


 穂乃果と言えばそんな事は興味がなさそう。


「そんな事より、美潮ちゃんと高坂君はどうしてるかな」


「苦戦はしてないと思うけどな」


 僕も訳も分からず操縦させられても何とか出来たくらいだから、よっぽど不器用で要領が悪くなければどうにかなるはずだから、その点については心配していない。


「そっちじゃないって」


「わかってる」


 穂乃果が二人の操縦技術を心配したわけではない事は理解してるぞ。


 マーメイド・エフェクトを放つためのあの『儀式』がどうなるのかが気になるんだろう?


「なあ、穂乃果。山中に何か聞いたか?」


「え?え?な、な、何の事?」


 見るからに動揺する穂乃果。山中に秘密的な事を聞いて、僕に知られちゃいけないという思いがあるのだろうか。バレバレだよ。


「いや、山中が健太の事どう思ってるのかとか、聞いたんじゃないのか?」


「そそそそ、そんな訳ないじゃん。ひゅ~」


 素知らぬ顔でとぼけて鳴らない口笛を吹く穂乃果。『私誤魔化してます』って全力で主張しているようだ。


「隼こそ高坂君に何か聞いたんじゃないの?」


「聞いたからローレライに乗せたみたいなもんだよ」


「そっか」


 それだけで察しの悪い穂乃果も理解した模様。


「じゃあ、あとは言葉にすればいいだけ?えー!なんかわくわくする!」


 興奮するのはいいけど、僕の腕をぎゅうぎゅう強く抱き締めるのは控えてもらいたい。何かしら感じるから。


「でもさ」


 興奮したと思ったら不安そうな目をする穂乃果。


「告白したとしても答えを言っちゃダメなんじゃないの?想いが通じ合わないとしたら報われないよ」


 つまりは僕らと同じ状況になるって事だろ?それを考えていない訳が無いだろうに。


「それはハルに頼んである。僕らが後は背負うから、二人の思い通りにさせてくれって」


「そっか」


 僕の言葉にほっとした様子の穂乃果。でも次の瞬間少し悲し気に、


「私たちは変わらないんだ」


 そう言って僕の腕に頭を預けた。


 まあ、僕としてもどうにかしたいと思っているけども。取り合えず今日のところは友人達の門出を祝いたい。祝えるだろう。多分。


「今日は仕方ないか。二人のためだもんね」


 そう言って穂乃果は納得してくれたが、結局は離れてもくれない。離れてほしいわけでもないけど。


「うまくいくといいね」


「そうだな」


 恐らく普通に進めばうまくいくはずだが、油断は出来ない。僕も穂乃果も何かしらの思い違いをしている可能性もある。


 まあ僕は健太に気持ちを聞いており、穂乃果もどうやら山中に気持ちを聞いたっぽいので大丈夫だとは思うが。


「長い幼馴染みが恋人に変わる瞬間って、どんなだろうね」


「経験無いからな」


 せっかくなら僕たちで確認したかったけどな。その日が来るのかどうか。


 穂乃果の体温を感じながら、そう思う。


 その時、ゲームセンターから見知った二人が歩いてくるのが見えた。憑き物が取れたような微笑を浮かべた健太と、俯いて少し距離を置いてついてくる山中。


 二人はつかつかと僕達に近づいてくると、それぞれデバイスを僕らに差し出す。


「何て事やらせるんだよ」


「余計なお世話だったか?」


 デバイスを受け取りながら言うと、健太は頭をかきながら目を逸らす。


「一応礼は言っておくよ」


「すっきりした顔してるな」


「まあな」


 どうだったか・・・まあ、聞かなくてもいいか。


「美潮ちゃん・・・大丈夫だった?」


「まあ・・・ね」


 穂乃果が問いかける山中は、困ったように眉を顰めている。


「穂乃果も大変なのね」


 ローレライの操縦の事か、それ以外の事か。山中が言及したのは何か。


「じゃあ、帰るか」


 相変わらずぴったり僕に密着している穂乃果を引っ張りあげるように立ち上がる。


「隼、もっと優しくしてよ」


「くっついてんのが悪いんだろ」


「いいじゃん」


 手を放そうともせずにそう言って笑う穂乃果に笑い返していると、二人がこっちをじっと見ているのに気付く。


 健太と目が合うと、健太は頬を指でかきながら、


「なあシオ」


 山中の方を見た。


「ん?」


 山中も健太の方を見る。よく見ると少し視線をずらしている。直接見られないなんて初々しい。


 そんな山中に健太は意を決したように言う。


「手を繋いでいい?」


「・・・バカ」


 山中はそう言うと舌を出した。



   <><><><><>



 開けて月曜日の朝。


 今さら誤解を解く気もない穂乃果に腕をとられて教室に入ると、


「あ!隼、見て見て!」


 穂乃果が声を潜めて指を差す。


 まだ生徒の少なく、ゆっくりと時間の流れる薄暗い教室。その窓際に二つの影が並んでいる。


「学校で話してるの初めて見たな」


 意図的に学校では離れていた健太と山中が微妙な距離感で笑い合っていた。


「まだぎこちないなぁ~」


「昨日の今日だからな」


 ぎこちないが、幼馴染みから関係が変わろうとしている二人を目撃しているんだな。感慨深い。


「でも、お似合いだよね。二人」


 そう言って感極まった様子の穂乃果は僕の腕を抱きかかえる。


 いいけど、学校ではやめてくれないかな。


 そこへ、


「あれ?あの二人・・・」


 やってきた金髪サイドテール。健太と山中を見て目を丸くしている。


「学校でも仲良くする事にしたんだ」


「姫ちゃんは知ってたの?」


「二人とは中学が一緒だからね。黙っててほしそうだったから黙ってたけど」


 だから山中と仲がいいのか。


「あっちも心配してたのよ。どうせ両想いなのに」


 そう言って大きく息を吐く。


「私の周りはじれったい人が多かったのよ。あんた達も含めてね」


「悪かったな」


「悪くはないけどさ。私がひとりぼっちにならないかだけが心配ね」


 新内は寂しそうに言って、金色のサイドテールを揺らした。



 

  



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