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巨大ロボに乗って幼馴染みに告白し続ける話  作者: みつつきつきまる


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30/73

第30話 幼馴染みと吊り橋効果

 丁度先週から上映の始まった、どのレビューを見ても怖いと評判のホラー映画。


 世間にはわざわざ怖い思いをしたい人も多いようで、ショッピングモールにある映画館は人でごったがえしていた。


 それでもどうにか並びの四席を確保し、並んで座る事が出来た。


 出来たのだが。


 映画が始まって早々、


「いっ・・・うっ・・・・」


 声を殺した穂乃果の悲鳴。


 そう、穂乃果が失念していた事。フェアリーランドのお化け屋敷でもあったように、穂乃果は怖いものが苦手。


 スクリーンいっぱいに不気味な顔が大映しになったり、暗闇から人ならずものが飛び出して来たり、果ては犬がわんと鳴くだけで声にならない悲鳴をあげる穂乃果。声を出しちゃいけない事は理解しているらしい。


 それはいいのだが。


「こ・・・こわいよぉ・・・」


 肘掛けを乗り越えて抱き着いてくるのはやめてもらいたい。いやいいんだけど。思い切り体に手を回して胸に顔を埋められると、僕としても見えない以前にホラー映画どころでない。


 密着した穂乃果の体からぬくもりと共に心臓の音やら何やらが伝わって来る。


 これが吊り橋効果か?


「おい・・・ちょっと離れろよ」


 耳元で囁くみたいなかたちになっちゃうけど。


「いや。怖いもん」


 穂乃果はそう返事をすると、僕の体に回した手に力を込める。

 

 どうしたもんか。


 穂乃果に抱き着かれて当然悪い気はしないが、いくら暗がりとは言え公共の場所で密着してるのはいかがかと思う。


 困って反対側を見ると、平然とポップコーンを食べながらスクリーンに目を向ける山中と、開始五分で夢の中に旅立った健太が見える。


 この時点で、穂乃果の思惑は潰えた事になる。


 ポップコーンを頬張る山中がこちらを見て呆れ顔をする。そりゃあそうだろう。映画を楽しんでいたら、隣で過剰にいちゃいちゃする幼馴染み二人。

 

(何やってるのよ)


 口の動きだけでそう言う山中。少なくとも吊り橋効果にかかっている様子はない。


「ねー隼、終わった?終わった?」


 終わってないけども。


 こうして密着されると、いろんなものが感じられて我を失いそうなんだけど。柔らかいしいい匂いなんだけども。このまま抱き締めていたいんだけども。


 そうして映画が終わるまで二時間弱。穂乃果のいろんなものを堪能して脳が沸騰しそうな僕。


 当然、映画の内容なんて全く覚えていない。






「怖かったねー」


 どちらかと言えば終わった安堵感にほっとしながら笑顔を浮かべる穂乃果。


 映画館を出るところからいつもに増して僕の腕にぎゅっと強く抱き着いてくる。穂乃果の視線が熱を帯びているようにも見える。


「おもしろかったわね」


「そうだな」


 健太、お前はずっと寝てたろ。


 とにかく、見る限りどちらも吊り橋効果とやらにかかった様子はない。


「もー、怖くて見てられなかったよ」


 言いながら穂乃果は僕の顔を見上げてくる。なんだか、穂乃果だけが吊り橋効果にかかったみたいだ。腕から伝わってくる鼓動は心地よく、甘えるような顔は酔っているよう。


「それより、二人が終始いちゃいちゃしてて見てられなかったわよ」


 いやまあ——僕も分かってるんだけど。抗えなかった僕も悪いんだけども。


「やっぱり仲いいよな、柊木と和泉さん」


 ほのぼのした目をする健太。


 この二人をどうにかくっつけようとこの計画を立てた穂乃果は、なんだか潤んだ目で僕を見ている。それ以上そんな目で見られたらキスしちゃうかも。


 ともあれ、映画館を出てショッピングモールをぶらぶら。もう引きちぎろうとしているかの如く僕の腕を抱き締める穂乃果。控え目だけども、確実に感じる胸の感触。


 そんな僕らの様子を眺めて感化されないかなと思って二人を見るが、山中と健太は適度な距離感で談笑している。そんな二人を放っておいて穂乃果だけが吊り橋効果にかかったようで、僕としては悪い気はしない。思えば、あのラブホテル事変の時も吊り橋効果にかかってたのかな。


 とは言え二人をどうにかしようという計画はどうなったんだ。


 すると、


 ピニョニョニョニョニョニョ


 お馴染みの気持ち悪い音。なんていいタイミング。


「何の音?」


「電話じゃないのか?」


 二人にも聞こえたらしい。


 どこか、人目につかない場所はないだろうか。


「隼、どうするの?」


 ハルからの呼び出しに、穂乃果が不安げな顔で僕を見上げる。


「えーと」


 周囲を見回すと、ゲームセンターにたどり着いていた。数々のゲーム筐体やら、クレーンゲームが多数並んでいて、その数以上の客であふれかえっている。


 どう見たって人目につかない場所などないように見える。


 そこである筐体が目に付く。


「ほら、四人で写真撮らないか?」


 ゲームセンターの傍らに幾つも置いてある、プリントシール機。よく分かっていない様子の三人を連れて、カーテンの開いている筐体に入る。


「写真って何だよ、柊木」


「いいからいいから」


 狭い空間に四人が押し込まれ、カーテンを閉める。


 それを確認し、ポケットからデバイスを取り出す。


「穂乃果も出せよ」


 言うと、穂乃果もポケットからデバイスを取り出す。


「ほら、健太」


 僕のデバイスを健太に手渡す。


「何だ?これ」


「いいからいいから」


 詳しくは説明はしない。


 それから穂乃果のデバイスを山中に手渡す。


「どういう事?」


「いいから持ってろって」


 二人が手にしたデバイスに注目していると、


『パイロット転送コード』


 ハルの声が響き、その瞬間健太と山中の姿が忽然と消える。


 今頃ローレライのコックピットの中。


「そっか・・・そうするんだ」


 穂乃果も理解した模様。


「無理矢理じゃない?」


「そうかもな」


 そんな事を言いながら、写真も撮らずに穂乃果と共にプリントシール機から出るが——


 入った時は四人で出てきたのは二人だと、気づいた人はいただろうか。





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