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巨大ロボに乗って幼馴染みに告白し続ける話  作者: みつつきつきまる


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第19話 幼馴染みと外泊?

「どこかにカラオケボックスとか無いかな」


 帰る手段が無いのなら、どこかで夜を明かせればそれでいい。カラオケボックスでもいいし、ファミレスでもいい。


 そんな事を考えつつも、どう考えても何もなさそうな暗闇が包む商店街へ足を進める。


「すごーい。本当に何もやってない」


 どこか楽しげで、気分がよさそうな穂乃果。不安がっていないのが救い。


 反面僕は不安に苛まれている。とりあえず僕はいい。いざとなれば公園で夜を明かす事も薮さかではないし、歩いて帰ってもいい。


 でも穂乃果は違う。せっかくの誕生日だと言うのにそんな事はさせられない。


 ちなみに、二人とも両親へのSOSを送ったのだが、和泉家では父親である一郎おじさんは出張でおらず、志穂さんは自動車免許を持っていない。そして柊木家の二人は、仲良く晩酌中らしい。


 迎えは期待出来そうにない。


 そして見る限り、どうにか夜を明かせる場所もなさそう。


 困った。


「ねえ、隼」


 穂乃果が僕の腕を引っ張る。


「どうした?」


 僕が尋ねると、穂乃果がある方向を指差す。


「あれは?」


「あれ?」


 穂乃果が指差す方。


 いや、気づいてなかったわけじゃない。穂乃果の指差す方向に、塀で囲まれた白い建造物がある。その塀は何かから何かを隠す意図があると思うのだが、その割に派手なネオンで自己主張している。


 そして入り口には『休憩三千円』『宿泊六千円』と書かれた看板が掲げられている。


 つまりは、アレだ。


「あれはダメ」


 さすがに抵抗がある。


「何でダメなの?」


「あそこが何なのか分かってるのか?」


「分かってるよ。ラブホテルでしょ」


 知ってんのかよ。


 知ってて言ってんのかよ。


「だったらダメだろ」


「いいじゃん。あそこだったら泊まれるよ」


 多分心は休まらないし、本来の目的は休む場所ではない。


「いや、さすがに入れない。そもそも高校生は入れないんじゃなかったか?」


「聞かれなきゃバレないよ。それに、緊急事態だし」


「だからってラブホはマズイって」


「えー。大丈夫だよ」


 大丈夫って何だ。僕が何もしないから大丈夫って意味なのか、僕が何かしても大丈夫だって意味なのか。


 とにかくダメだ。


 僕としてはそこに入ったからと言って我を失うとは思えないし、指一本触れるつもりも無いが、僕の理性がどれだけの耐久力を持っているかは未知数だ。


 どういう訳か穂乃果は全幅の信頼を置いているようだが、その信頼に応えられるかどうか、はっきり言って確証がない。


 抑圧された気持ちがどうなるか、自分でも分からない。


 だから、そう言う状況に自分を置きたくない。


 そう思っているのに、穂乃果は僕の手を引いていく。


「ねぇ、ここカラオケもあるって」


 平気で入り口に近づくな。


「サウナもあるって!」


 嬉しそうに言うな。


 何でそんなに平気なんだ。ここが何する場所か知ってるのか?


「ねー、入ろうよ」


 何で穂乃果が誘って来るんだ。


「隼は何もしないでしょ?」


 その信頼の根拠は何だ。


 それにしても、やはり穂乃果は警戒心がなさすぎる。たとえ何もないとは言え、男をラブホに誘うとは、寝顔を見せるよりも無防備にも程がある。


 ・・・ここで連れ込んで襲いかかって、その言動の危険度をわからせてやろうか。いや、そうなったら僕は僕を止められるか?それが問題だ。


 それに、まかり間違って受け入れられたらどうする。後戻り出来なくなるぞ。


「ねー、入ろうよ。私一度入ってみたかったんだ。隼となら安心だし」


「なあ穂乃果」


「ん?」


「こういう場所に男を誘うのはやめろよ。そんな事言われたら、男は『ああオッケーなんだ』ってそういう気分になるものだぞ」


「そうなの?」


 あまりにも無防備すぎる。


 穂乃果は少し考え、僕の顔を覗き込んで来た。どこか挑発的な笑顔で、


「隼もそうなの?」


 む。はっきりとは言いにくい。だが、穂乃果の警戒心を構築するためには、言ってやる必要がある。


「・・・思うな。残念ながら」


「そ、そっか・・・」


 分かってくれたかな?


「でも、隼以外の人には言わないから」


 話聞いてたか?


 これでまた確認出来たが、やはり僕を男として意識していない。していたら平気でラブホに誘う訳がない。


 男としての理性に挑戦されながら、男として意識されていないという複雑な状況。


 とは言えこんなところでぼやぼやしている場合ではない。今のところ周囲に人は見られないが、誰が見ているか分かったもんじゃない。


 そう思いつつ、しばらく押し問答をしてラブホテルを離れる事に成功した。


 名残惜しそうな穂乃果。何でだ。


 まあどうせなら本来の目的のために訪れたいものだ。そんな機会があるかどうかは定かではないが。


 しかし、とにかく夜を明かす場所か、帰る手段を探さないと。


 この真っ暗な商店街に——ある訳ないよな。


 困った。


 本気でラブホか?


 だったら身動き取れないように縛り付けてもらわないと、安心して泊まれない。だから、やっぱりそれは最後の手段だ。


 とにかく他に手は——


 ピニョニョニョニョニョ


 いつか聞いた気持ち悪い音。


 ポケットに入れていたデバイスが音を響かせながら光る幾何学模様を描いている。


 穂乃果と顔を見合わせて表面を叩く。


『柊木隼サン、ADMの転送前兆シグナルを確認しました。和泉穂乃果サンと共に搭乗準備をお願いします』


 無感情な中性的な電子音声。ハルことハルピュリア・システムが言葉を並べる。


「搭乗準備って、ローレライはどこに来るんだ?」


 ここに来るのか?いや、ADMはどこに現れるんだ?


『いつもの公園ですが。柊木隼サンの現在地の方が都合がいいなら、そちらにしますが』


「転送場所は自由なのか?」


『ある程度は。ADMの転送場所もある程度はコントロール出来ます』


 よく分からないが、今は都合がいい。


「いつもの公園に僕らを飛ばせるのか?」


『ローレライのコクピットなら』


「それで、公園で解放してもらえる?」


『それがお望みなら』


 ハルの答えを聞き、穂乃果と顔を見合わせる。これで帰る手段が出来た。


「そーなんだ」


 どこかつまらなさそうな穂乃果。そんなにラブホに行きたいのかよ。


 ひとまず穂乃果は無視しよう。


「じゃあそうしよう。公園のローレライに僕らを飛ばしてくれ」






「すみません志穂さん。遅くなって」


 どうにか地元に戻って来れ、ADMとの戦闘も終了した後、ようやく穂乃果を志穂さんの元へと帰す事が出来た。


「んー。何だ。帰って来れたんだ。某ホテルに泊まるのも仕方ないかな、って思ってたのに」


 どうしてがっかりしてるんですか?


「泊まろうって言ったのに、隼に断られた」


 余計な事言うな。


 志穂さんは口元に手を当てて笑う。


「あらあら。やっぱり穂乃果が攻めるんだ。ふふふ。隼君が信用出来るって証明できたわね」


 違う結末だったらどうだったんだか。


 色々言いたい事はあるが、今日はさすがに疲れたので挨拶もそこそこに退散する事にする。


 和泉家のドアが閉まるのを確認し、大きく息を吐く。


 長い一日だった。


 楽しい一日だったし、最後も色々あったが、あらためて長い一日だった。


 さっさと帰って寝よう。体の疲れ以上に心が疲れた気がする。


 そう思って和泉家の隣の柊木家へと帰る。


 そんな柊木家のリビングでは、珍しく母親が僕を待っていた。ソファに座ってグラスを傾けている。


 父親は先に休んでいるようだ。母親の方が酒に強いから、いつものように潰されたのかもしれない。


「おう。おかえり。楽しかったか?」


 肩まで伸ばしたストレートな黒髪に、切れ長の目。僕に引き継がれたその目元は、クールだとか涼しげと言われるのに、僕の場合は目つきが悪いと言われるのが納得いかない。


「おとなしく帰って来たんだな」


「まあね」


「少しは期待してたんだがな」


「何のだよ」


 僕は短く答えて、自分の部屋に戻るために階段を上る。


 ふふっと母親が小さく笑うのが聞こえた。


「お前は昔から穂乃果が好きだったからな」


 ・・・


 ・・・


「何の、話かな?」


 ふいに言われた言葉の意味が一瞬わからず、聞き返す。


 誰にも知られないように気を付けてきたつもりだ。それなのに知られていただと?


「知られてないとでも思っていたのか?何年お前の母親やってると思ってるんだ。穂乃果を見る目だけ他と違うからな。バレバレなんだよ」


「・・・」


「ちなみに志保も知ってるからな」


 ・・・


 聞こえなかったフリして部屋に帰ろう。体力がなくなった今ではダメージが大きすぎる。


 そこへ母親の追い打ち。


「お前は昔から臆病だからな」


 そんな事、痛いほど分かってるよ。


 何も言い返せないまま、僕は自室に飛び込んだ。




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