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巨大ロボに乗って幼馴染みに告白し続ける話  作者: みつつきつきまる


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第17話 幼馴染みの誕生日④

 それからまたいくつかのアトラクションをこなし、そろそろ日が傾きつつある。


 穂乃果が言った通り、一通りの激しい絶叫系のアトラクションは早めに済ませてあったらしく、ゆったりとした物が多かった。


 いわゆるメリーゴーランドだったり、ぶら下げられたブランコで振り回されたり、ゆっくりとトロッコに乗って地底探検するような物など。


 それからキャラクター達が大立ち回りするステージを見て回ったり、時折現れるパレードを眺めたり、一緒に踊ったり。


 そうして無邪気にはしゃぐ穂乃果が可愛くて、ついつい見惚れていたら怒られたり。


 本当にただのデートみたいな瞬間に、時間も忘れて楽しんだ。


 そして今は、園内をぐるりと囲む人工池を進む、遊覧船に揺られている。


 甲板から外に見えるフェアリーランドの全景を並んで眺めている。


「ちょっと疲れたかな」


 穂乃果はそう言って、僕に頭を預けてくる。


 夕焼けに照らされれる穂乃果の顔。疲れているようで、満たされているような微笑み。今日見た中で一番可愛い。


 僕らの他には誰もいない甲板。


 本当だったら——本当のカップルであったならば、ここでサプライズのプレゼントを出してプロポーズなんかするんだろうか。雰囲気に飲まれてキスしたりするんだろうか。


 僕にはまだ縁は無いかな。


 ただ少し勇気を出して穂乃果の肩を抱くと、そっと身を寄せてきた。


 感じる穂乃果の体温。


 こちらを見上げてくる潤んだ瞳。物憂げな表情。僕の大好きな人。


「あ、も、もうそろそろ終わりかもね。もうあらかた乗ったし」


 僕と同様に雰囲気に飲まれかけた穂乃果が慌てて遠くを見る。そうだね。雰囲気に飲まれて勘違いしちゃいけない。


 穂乃果は幼馴染みで、僕の事を兄のように思っている。決して恋人じゃない。


 こうして仲睦まじくしていても、大部分は『隼の心を繋ぎ止めておく作戦』の一環に過ぎないはずだ。


 それを勘違いしてしまうと、ただ悲しくなるだけだ。


 僕はそれらを心に留めて、ひとりで頷く。


 とにかく今日は穂乃果を楽しませるためだけに動くんだ。僕の気持ちを満たすためじゃない。


 とは言え、穂乃果のために一日中振り回されるだけなのは癪だ。こちらからも何か仕掛けたい。


 そう言えば、僕が先ほど自分が絶叫系の乗り物が苦手だと思い出した時に、同時に思い出した事がある。


「なあ穂乃果」


「な、何よ」


 少し落ち着かない感じの穂乃果。相変わらず僕に肩を抱かれたまま、振り解かずにいる。


「あそこは行かないのか?」


 僕が指さしたのは、遊覧船が丁度目の前を通りかかった、仄暗い建造物。古くてボロボロな、廃墟にも見えるそれは、


「お化け屋敷は行かないのか?」


 言うと、穂乃果の動きが止まる。


 これまで穂乃果はまるで僕に気づかれないように、見つからないようにお化け屋敷は避けてきたのに僕は気づいていた。


 そう思い出したんだ。穂乃果はお化け屋敷が苦手だって事に。


 幼い頃地元の小さな遊園地で僕が激しい乗り物が苦手だって揶揄われた後に、穂乃果がお化け屋敷で泣きべそをかいたのを覚えている。


 僕と同じように、苦手が克服できていないに違いない。


「ん・・・あそこは行かなくても・・・」


「全部乗るんじゃなかったのか?」


「む、無理に乗らなくても・・・隼も疲れたでしょ?」


「僕は大丈夫だよ。膝枕のおかげで元気だよ」


「もう時間が・・・」


「まだ五時前だし、時間はあるよ」


「で、でも」


「いいから行くよ」


 遊覧船はおあつらえ向きにお化け屋敷の真正面の船着場に着いたので、僕は渋る穂乃果の手を引いてお化け屋敷に向かった。


 日が暮れてきていい時間だし。





「い。きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」


「うるさいぞ。穂乃果」


「う。いぁぁぁぁぁぁ!」


「うるさいって」


 小さなトロッコの中で取り乱す穂乃果とは対称的に、僕は冷静に穂乃果を制す。


 薄暗い通路をトロッコで強制的に連れていかれるタイプのお化け屋敷。歩かなくていい代わりに、一度トロッコに乗ったらゴールまで離脱が許されない。


「あぁぁぁぁぁあぁ!犬がっ!」


「犬だな。コミカルで可愛いじゃないか」


「でもお化けぇぇぇ!」


 可愛らしくディフォルメされた犬がアニメーションで表現されていてホログラムで浮かび上がっている。確かに幽霊のような表現をされているが、愛嬌があってさほど怖くないと思うのだが。


 ここは小学生ですらほどほど楽しめる程度の怖さなので、高校生が本気で怖がる程ではないぞ。


 そもそも『お化け屋敷』という響きから嫌なのか。何でもない燭台をも怖がってるし。


 穂乃果にちょっとした仕返しをするつもりだっただけなのだが、ちょっと可哀想になってきた。


「うう・・・」


 涙目の穂乃果。何か僕が悪い事をしてるみたい。


「ほら。もうちょっとだから」


「うん・・・い、やぁぁぁぁぁ!」


 僕が慰めた途端、横から飛び出してきた猫のお化けに驚いて、僕に抱きついてくる穂乃果。


 ・・・


 いろいろ感じるけど。いや、これを狙った訳じゃないぞ。


 いくら控えめとは言え、ちゃんと存在する穂乃果の柔らかい二つの膨らみ。それを感じられるほどの密着。それだけじゃなく、穂乃果は全身全てが柔らかい。


 大好きな人を強く抱きしめている。こんな幸福があるだろうか。


 怖がっているからか、穂乃果の体が熱くなっている。早くなった心臓の鼓動もはっきりと伝わって来る。それが伝わって来て、僕の体温まで上がってしまう。


 穂乃果の頬がすぐ近くにある。大きく息を吸い込むと、シャンプーでもないボディーソープでもない艶かしい匂いが鼻の奥に広がって、おかしな気分になる。


「ああ・・・怖かった」


 どうやら終わったらしい。それどころじゃなかったのでよく分からなかった。


 ただ、最高だった。


「えっと、隼、あれ?」


 ようやく僕から離れる穂乃果。呆然としてる。


「あのさ、穂乃果」


 頭がぼーっとする。


「もう一回乗ろうか」


 さすがに拒否された。






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