表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/19

その後の神殿 〜マリアver.9〜

 わたしが皇国の悲劇の皇女にして前側妃セイラ様についてまくし立ててたら、ファティマ様からのストップがかかった。


「マリア様、お子様の前でするお話ではなくてよ?」


 わたしは、ハッとしてセシルを見た。セシルは涙目で、きぞくってこわい……とか呟いてる。ファティマ様が取りなすように、


「前側妃様が悲劇の皇女様だったかどうかはご本人にしか解りません。

 私個人と致しましては、当時の皇国の方々は至極良心的なご判断をなさったと捉えております。不敬になるかも知れませんが、クラウン陛下はその……少しばかりお考えが足りておられなくて、そしてその……とても女性の方がお好きでいらっしゃるでしょう? そんなボンクラ息子、いえ失礼致しました、凡庸な王子にみすみす手中の珠を渡すより、多少の年齢差には目をつぶり賢王と名高い先代国王に委ねるが善とした当時の皇国の中枢の方々は、充分セイラ姫を愛しておられたのではないでしょうか。

 当時、王国唯一の『殿下』でいらしたクラウン様は隣国の可憐な皇女様がご自分の花嫁になるものと思い込み、当時の婚約者様との婚約を一方的に破棄なさるくらいのうっかりさんでしたもの」


「そうそう、バカですよねー!」


 わたしはまたしても首がもげるほど頷いた。


「国王陛下の婚約者だった人って、聖女だったんですよね⁉︎ それ蹴って皇女様待ちしてたら皇女様はお父様のお妃になっちゃって! んで、気づいたら周りはみーんな売薬済みたいな? そんで結局、どっかの女伯を慌てて正妃に据えたって」


「現正妃マイカ様は、当時辺境伯領主としてお父上から家督を継いだばかりでした。マイカ様が女伯爵として、マイカ様の弟君は私設警備隊の隊長としてということで領内は上手く回っていたそうなのです。それなのにクラウン陛下は随分なことをなさったものですわ!

 先王とマイカ様のお父上がご存命でしたら、そんな暴挙はお許しにならなかったでしょうに……」


「後ろ盾を無くした女伯爵を、未婚だからってだけで無理矢理お妃にするとか、ありえないんですけど!」


「まったくですわ。私もマリア様に同意致します。

 けれど、マイカ様がお妃様にならなければクラウス第一王子も存在しなかったのですから、システィーナ王国の為には善き選択ではあったものかとも思います」


 ファティマ様は第一王子を随分買ってるみたいだ。わたしに言わせれば第一王子も充分変人の域に入る。

 わたしと第一王子は学園の同級生だった。1回生の時は学園で時々見かけた。金髪碧眼の王子様みたいな人がいる、って思ったら正真正銘の王子様だったっていうね。周りの子達がきゃあきゃあ騒いでたから、よく覚えてる。2回生の頃も多分、いたと思う。3回生の頃にはもういるんだかいないんだかわからなかった。でもそれも別に不思議なことじゃなかった。

 貴族学園の生徒は1回生から3回生まではいわゆる一般教養と呼ばれるモノを中心に学ぶ。クラス分けも家柄でざっくり雑に分けられる。Aクラスは高位貴族、Bクラスは下位貴族と平民、みたいに。クラスが違えばよっぽどじゃない限り会うこともない。第一王子は王子だから当たり前にAクラスで、限りなく平民に近い男爵家のわたしは当然Bクラス。こっちが一方的に知ってるだけで、むこうはこっちのことなんか知ったこっちゃないだろう。何たって王子だし有名人だし。

 成績がクラス分けに反映されるのは4回生からだ。そして、4回生からはそれぞれの進路によって選択科目も増える。わたしは実家が商家だから商業科を選択したけど、長男長女で家督を継ぐ人にはそれ専用のコースがあるし、次男三男とかなら騎士科、魔術科、文官を目指す人はそっち方面を重点的に学ぶとか。女子は淑女科が圧倒的多数だった。

 クラウス殿下は成績優秀だから、下位貴族でも頑張っていい成績取って4回生に上がる時のクラス分けでAクラス入りできればクラウス殿下にお近づきになれる! みたいなノリで、わたし達の年、特に女子は熱心に勉強する人が多かった。……なのに当のクラウス殿下は飛び級に次ぐ飛び級を連発し、3回生の頃には貴族学園卒業資格を取得して、魔術学院に編入してた。何ソレって感じでしょ⁉︎

 フツーの人が6年かけて学ぶことを3年かそこらで終わらせて、さらに本格的に魔術を学びたいから魔術学院に入るって? 魔術学院って、魔法に特化した化け物(褒めてますよ!)の集団だよ⁉︎ 貴族の家柄と相応のお金があればほぼ無試験で入学できる貴族学園とは違うのだよ貴族学園とは!(例外は平民の特待生。めっちゃエグい試験があるって聞いてる)

 魔術学院に賄賂の類は通用しない、頼みは己の知識と魔力のみ。将来性に賭けるパターンもあるけど入学するのも卒業するのも狭き門とか言われてる、あの魔術学院に編入って……あの王子様何考えてんだろ、ちょっと意味わかんない。周囲の頑張ってた女の子達、ガクーッときてたよ。貴族学園のAクラスなら努力で何とかなるかもだけど、さすがに魔術学院までは追いかけていけないわ、って。

 つくづくわたしの周りって、化け物しかいない(褒めてます、褒めてますよ!)。クラウス殿下なんて遠目で数回見ただけだけど。




 むしろ学園にいた頃よりも、聖女になってからの方が第一王子とのエンカウント率は高い。クラウス殿下、魔法剣士枠でドサ回りにちょくちょく参加するから。民の暮らしと瘴気の害を直接自分の目で見て知っておきたいんだって。意識高い王子様だね。

 クラウス殿下、王子様なのに当たり前に『現場』にいる。で、文句なく強い。戦闘員としてはもちろんだけど、指揮官としても凄い。背中に目ついてる? ってぐらいに気が回る。野営でちゃっちゃとこさえる漢飯、引くぐらいにウマイ。……王子様? 王子様だよね??

 ひとつ確かなのは、クラウス殿下が『現場』にいるとべらぼうに士気が上がる、彼には人望がある、ってこと。

 人望は財産だ。この人のために何かしたいって自然に思わせてくれる人って貴重だ。そして、そういう人の下で働けるのはとっても幸運なことだ。

 ウチも商売やってるからわかる。上に立つ人が「器じゃない」と、家も国も成り立たない。第一王子が『王の器の人』でよかったと思う。王様に怪鳥仕留めて調理するスキルはいらないかなとかは言っちゃダメだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ