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その後の神殿 〜マリアver.14〜

 わたしは複雑な気持ちになった。

 わたしに言わせれば、エスニャ様だって充分第二王子と同じ枠に入る。弟情報だと、第二王子が子分から巻き上げたカネの行方はエスニャ様に貢ぐのに流れてるって話だし、それにーー。


「ファティマ様、ちょっとお人好しすぎますよ。わたし達『平民聖女隊』は、エスニャ様から散々身分マウント取られてるじゃないですか。セシルのことだって平民だからってけちょんけちょんな言いようで!」


「マリア様、セシルのこと庇って下さいましたものね」


 ファティマ様はアルカイックじゃない笑みでわたしを見上げた。小柄なファティマ様と、同世代女子の平均身長よりちょっとだけ高い(って、自分では思ってる)わたしとだと、いつだってこうなる。ファティマ様の琥珀の瞳は、祈りの間の床のほのかな光の照り返しに映えて金色みたいにも見えた。綺麗だ。


「正確には、庇おうとしたけどファティマ様に先手を取られた、ですけどね」


 セシルが来てすぐのアレはホントに酷かった。わたしはうつらうつらしてるセシルを見た。こんな可愛い小さな子によってたかって集団イジメみたいなことして許せない。何か言ってやんなきゃって思ったら、ファティマ様がお上品な先輩達に強烈なアッパーキメてくれてスカッとしたけど。


「マリア様はとても正義感がお強い方なのですね。なるべくして聖女になったということでしょう」


「それ言うならファティマ様ですよ」


 わたしは心から言った。

 わたしは最早、神の娘というよりファティマ様信者だけど、わたしに限らずドサ回りで1日でもファティマ様と一緒に行動すれば戦闘員は皆、ファティマ教に入信するようになる。ケガしたり毒受けたりで回復治癒してもらった人、危ないトコを絶妙なサポート受けて無事だった人、体力魔力が回復するっていうあの薬膳クッキー分けてもらった人。ファティマ様のいる『現場』は、いわゆる「尊い犠牲」とかいう文言とは無縁だ。何しろファティマ様がその都度癒して全員が五体満足魔力満タンで意気揚々と凱旋できるんだから。

 慣れない瘴気に怖気づく新米兵士が、あらあらうふふ大丈夫ですわよって励まされてオチるのはお約束の通過儀礼。それで、神々しいまでのあのちょっぱやな浄化作業でも見せつけられれば一発だ。

 浄化に赴く聖女の付き添いは言ってみれば瘴気に向かって突き進むわけだから本来なら嫌がられる仕事だ。なのに、ファティマ様について行きたい! って志願するのは、何もあのやたら鼻息荒い騎士団員だけじゃない。

 ファティマ様のこと、慈愛の聖女だって崇める人達の一派を、わたしは知ってる。っていうか、何を隠そうファティマ教筆頭信者はこのわたし、マリア・ガストンだ。そこだけは譲れない。


「ねぇマリア様。私達は、せめて私達だけは、セシルを守って差し上げましょうね」


「はい、もちろんです!」


 わたしは即答した。


「わたし達『平民聖女隊』は、絶対負けません! 神殿長の理不尽な言いがかりにも、身分マウント頭にコロネの失礼な言い草にも、第二王子の邪な野望にも、ありえないだろって量のお努めその他にも! いっちょやったろかの精神でやったりますわ!

 わたし達の可愛い妹セシルは、絶対絶対守り抜きます! 聖女として、神の娘として、マリア・ガストン、ここに誓います!」


「マリア様、前半はともかく結びの一文は充分『聖女の誓い』として聖女試験で通用しましてよ?」


「はい! いつ神殿長が試験やる〜って無茶ブリしてきてもいいように毎日唱えて練習してますから!!」


「うふふ、頼もしいこと。その意気ですわ」






 ファティマ様はそうやって、笑ってくれたけど。

 わたし、バカだった。何よりも真っ先に守られなきゃいけなかったのは、ファティマ様だったのに。






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