表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂鏡〈たまかがみ〉〜古代変身ディスクを宿せし者たち〜  作者: 月乃 そうま


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/73

魂鏡七〇、剣技


 燈里が乱入したことで、攻撃役の長い『七支刀レプリカ』の男が叶和から離れた。

 叶和としては、燈里が攻撃役の男を引きつけることに一抹の不安があったが、チャンスはチャンスである。

 なんとか防御役の女を速攻で片付けて燈里の援護に向かわなくてはならない。


 坂本中尉は冷静に戦況を読んでいた。

 河童星人は水野少佐が片付ける。これは時間の問題だ。

 水野少佐は自分よりも強い。さらにしたたかで賢しい面がある。

 任せておけばいい。

 佐々木中尉は強さをかさにきて、突出してしまうきらいがあるものの、攻撃力で言えば水野少佐にも匹敵する。兎人間は戦闘慣れしているとは言い難く、太刀を持っていても、その重さに振り回されているような感じにも見える。

 まず、佐々木中尉が負けることはないだろう。

 つまり、ここも任せていい。


 問題は二刀流の猫人間だ。荒削りだが、基礎はある。

 しかも、天性の素質だろうか、感が良い。

 変身して能力が倍加しているのもあるのだろうが、少々危険な相手だ。

 だが、負けるとは思わない。

 技量ならば、こちらが上だ。慎重に戦えば、まず問題はないと見た。


「考えてる場合かニャ!」


 佐々木中尉が離れて、ここを好機と見た叶和が一気に攻めかかる。

 坂本中尉は考えながらも、ほぼ無意識レベルで叶和のケペシュを受けきっている。

 叶和の二刀を持って左右様々な角度から放たれる攻撃は、たしかに見事な腕前ではあるが、坂本中尉からすれば、全てがフェイントだと見抜ける程度の攻撃だった。

 殺気のこもらないフェイントは、スポーツならば及第点かもしれないが、命のやりとりをしたことがある側からすると、ぬるすぎだった。


「もしかして、私、舐められてます?」


 坂本中尉が猫人間の神経を逆撫でるように言った。


「舐めてるのは、そっちニャ!」


 叶和の攻撃が苛烈さを増した。

 だが、坂本中尉からすれば、願ったりの展開だ。

 苛烈さは増したが、隙も多くなった。

 坂本中尉が本腰を入れて、猫人間の甘い一撃を受け流す。

 身体が泳いだところに一撃。

 だが、やはり天性のモノがあるのか、身体を捻って浅い一撃に留まる。

 これを繰り返していけば、相手は疲弊して、更なる大きな隙を晒すだろう。

 坂本中尉は勝ちを確信し始める。


 叶和は坂本中尉がフェイントに全く掛からず、それどころか反撃を入れてくるようになって、苛立っていた。

 マズい、マズいと思いながらも動きは次第に追い詰められていく。五回目の反撃で胴薙ぎに来た『七支刀レプリカ』を痛手を負いながらケペシュで受け止めたところで、一度、坂本中尉から距離を取った。

 敵わない。そういう意識が、じわじわと這い上がって来る。

 坂本中尉は防御の達人と言ってよかった。

 叶和がどれだけ攻めても、片手間で受けられてしまう。本気で防御すれば、カウンターが返って来る。

 このままでは傷が増えるばかりだ。


 坂本中尉が攻めて来ない。

 叶和が今の状態を嫌がって距離を取ったにも関わらず、坂本中尉は待ちの形を崩さない。

 叶和が辛いのは、ここから相手の攻めのターンに切り替わることだったが、攻めて来ないのならば好都合だった。

 もしかして、攻めて来ないのではなく、攻めて来られない? 叶和の直感がそう告げていた。

 叶和は大きく息を吐く。


 すると、脳裏には雄大なるナイルが浮かぶ。

 夜から朝になろうとする紫色の空に一条の光が差し込む。

 それは重いまぶたをゆっくりと開くような動きで太陽が昇っていく。

 紫に赤みが増して、桃色の空になったかと思えば、太陽は一気に上昇してナイルを睥睨する。

 赤は太陽へと集束して、空は澄み渡るスカイブルーへと変化する。

 その赤い太陽の中心から人影が降りて来る。

 太陽の光に埋もれていた人影は、次第に陰影をはっきりとさせ、その頭部にはふたつの三角耳が見えてくる。

 赤い太陽は空気を焼き、地を焼き、その照り返しが空を焼く。

 黒猫と人の融合。その肌は黒曜石のような光沢を持ち、全ての熱を吸収するかのように艶やかだ。


「我こそはラーの目。破壊者なり」


 猫人間が両手を広げる。

 黒曜石の艶肌に貯め込んだ熱気を一気に放射していく。

 世界が溶ける。オアシスは干上がり、木々が炭化していく、砂が煮えてマグマと化していく。

 太陽だけが赤々と燃え、世界は黒く変色していく。

 猫人間は、その肌色を世界に転写するように黒く染めていく。


 湧き上がるイメージと共に、叶和の魔凱が全身黒に統一されていく。


「【破壊者の顔(バステト)

 我、ラーノ目トナリ、世界ヲ焼キ尽クサン!

 とと、なんか持って行かれそうニャ……けど、力が湧いて来るニャ〜!」


 叶和の言葉と共に、周囲を熱波が襲う。


「くっ……熱っ……」


 防疫服越しでも、坂本中尉は危険な熱さを感じる。


「次こそ防御を突破してやるニャ!」


 叶和がケペシュを振るう。

 坂本中尉は熱波に晒され集中できないどころか、頭まで、ぼうっとしてくる。

 ガインッ! 一撃受けただけで『七支刀レプリカ』を取り落としそうになる。


「くっ……剣技なら負けないのに……」


 朦朧とした意識をどうにか奮い立たせて、坂本中尉が構えを直す。


「甘いニャ!

 勝てば良かろうもんなのニャ!」


 叶和の天性の才能は、剣技に拘ることなく、ただ勝ちに拘った。

 その差が明暗を分けたといって良い。

 叶和の剣が『七支刀レプリカ』を巻き取る。

 坂本中尉の手から『七支刀レプリカ』が落ちた。

 と、同時に叶和の蹴りが坂本中尉を捉えた。

 大きく吹き飛ばされた坂本中尉の鳩尾には、黒く焼け焦げた足跡が残り、坂本中尉はそのまま気を失った。


「よし、勝ったニャ!

 望月は……?」


 叶和が周囲に意識を向けると、燈里は佐々木中尉を拾い上げて熱波から逃げている最中で、水野少佐は河童星人を斬り捨てたところだった。

 河童星人は熱に弱かったらしく、熱波にやられたところを狙われたらしい。

 また、斜子も慌てて変身して熱波から逃げていて、叶和はやりすぎたことを反省するのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ