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臨終速報  作者: 紅小豆
8/10

第8章「次は貴方」

殺人犯の姿が見えない。その後私達は無言のまま、警察署を出て帰路についた。玄関を開けるとリビングに音が流れていた。まただ……もう嫌だ。姿の見えない犯人に怯えながら扉を開けると——。

「臨終速報です。結城志保さん。次は貴方です」

 私の名前を呼ぶ声が聞こえた。このテレビに呼ばれたら全員……『死』。

 足に力が入らず座り込んでしまうと、後ろから——。

「結城さん?」

 私は声を上げて意識が飛んでしまった。

 ……。

 あれからどれくらいの時間が経過したのだろうか?  私は気付いたらベッドで横になっていた。

「あれ?どうして?」    

 訳も分からず混乱していると、リビングからテレビの笑い声が聞こえる。そして人の気配も——。

 意を決してリビングに向かうと、そこには——神蔵さんが居た。

「あ!起きたんですか?良かった~ 扉開けて不用心ですよ~」

 神蔵さんはそう言うと、私にお茶のペットボトルを渡してきた。

「どうしてここに?」

 私が聞くと、神蔵さんは仕事でこっちに来たけどスマホのバッテリーが切れそうでどうしようかと悩んでいたら、私を見かけ後を着いてきたらしい。 そして私が家に入って少し経過してからインターホンを鳴らそうと待機していたら、扉が開けたままでそのまま入り声をかけたとの事だった。

 私は先程の光景を思い出し、心細かったのもあり神蔵さんを責められなかった。 神蔵さんには充電の許可と一緒に夕食を食べる事となり、料理を作る事にした。

 その間にも神蔵さんは「今月の通信速度もう限界なんです。Wi-Fi貸して下さい」と懇願されるも家にはそんなもの無いと一蹴した。

 正直今夜泊まって欲しいなとも思ってしまう。ただまだ神蔵さんには伝えていない。言葉にしたら本当になってしまいそうで……。

 …………本当に偶然なのだろうか?頭の中で疑問が湧き始めた。タイミングが良すぎないか?私が臨終速報を見た直後に出会っているあの人……。唯一、死者の名前を当てられた人。何故信用しているんだ?普通に考えたら一番……。今、この状況下が一番危険ではないか?

 スマホは……リビングだ。取りに戻ろうとしても……“犯人だったらいつ襲う?“私が考えているとリビングで神蔵さんが私の名前を呼ぶ。

「結城さん!すぐに来て下さい!」

恐る恐るリビングに戻ると神蔵さんはテレビを指さすも私には何の違和感を感じなかった。

「何処か変なの?」

「いや!このテレビネット接続してますよ」

「いやいや、ありえない。だって契約してないんですよ?」

私がそう言っても神蔵さんは一切信じてくれない。

「ならこれは?」とリモコンのボタンを押すとネット番組が映った。それでも何がおかしいのか分からない。

「もし接続してないなら、これは映らないんです」

「ならどういうこと?」

 要領を得ないからか神蔵さんは家中を探し始めた。

「どこかにルーターがあるはずです」

 もう何を言っているのか分からないので黙って見てるしかなかった。そうして部屋中を探した結果、テレビ台の裏から機械が出て、コンセントを抜くとネット番組も消えてしまった。

「やばいですよ。家主も知らないのに...」

神蔵さんは先程の雄姿はどこへ消えたのか、本気で怯えていた。

「...なら次はどうすればいいの?」

「そんなの分かりませんよ。取り敢えずこのルーターが何の為にあったのかについて調べないと」

そうは言っても得意だった伏見さんは署に居るし...

「津田なら分かるかもしれない」

私がそう言うと神蔵さんはスマホを取り出し電話をかける。

「もしもし!神蔵です。今結城さんの家に来てるんですけど!ストーカーです!来てください」

 電話先の相手にいきなり嘘をついて切ってしまった。

「ちょっと。まだ確定してないのに...」

「絶対にストーカーです。絶対に監視カメラとか盗聴器とか仕掛けてますって」

そう言って押し問答しているとインターホンが鳴った。

私がインターホンに出ると、そこには津田が居た。

「津田だけど、発見機を持って来た」

そう言われたので招き入れると、ケースの中から機械を取り出し、家中のあらゆる所に近付けてた。

そして「ビンゴだ」寝室近くのコンセントを向けると機械から何やら音がする。

「調べてみなければ分からないが、ストーカーは現にいる」

そう言いコンセントを外すと小さな機械が出て来た。

「外見だけじゃ、分からないな」津田は私の家から発見された装置をじっくりと観察しながらそう言った。

短時間に多くの事がありすぎて頭を抱えていると神蔵さんは手を取り、「怖かったですよね?ストーカーされてたかもしれないなんて……」と同情してきた。

「いや……まぁ……」

津田はこのまま署に戻って鑑識に提出してくれる事になった。

 神蔵さんがそっと手を握ってくる。あの装置が見つかった直後のこの状況なら、誰だって怖くなるだろう。私自身、まだ心の整理がついていない。

「やっぱり怖いですよね?」神蔵さんは今晩は一緒に居ると宣言し、リビングで寝ていた。眠っている神蔵さんを見て私は少し自分が可笑しい事に気付く。『犯人だったらいつ襲う?』もし犯人だったら気を失ったあの時が一番好機であった。それなのに一切危害を加えなかったのは彼女が犯人ではないと言う意味になる。少し囚われすぎているのかもしれない。日常が近付いた気がして、その日は薬も飲まずに眠れた。

翌朝、熟睡している神蔵さんを起こし、一緒に朝食を食べ私は出勤する事にした。

署では津田が先に居て検査結果を教えてくれた。最初に見つけたのはWi-Fi機器でこれは先払いする事で契約も無しに仕える物だったらしい。残る機会は感知式センサーとそれの送信機だった。送信機とWi-Fiによって何処へでも送れる仕組みになっていると教えてくれた。

「でもよ。お前の家に入るってかなり無理があるぞ?このオートロックのマンションで、神経質で細かい奴がそう侵入させるとは思えん」

津田には喧嘩を売られた気がするが、スルーするとして

「でも今まで違和感を感じてはいなかった」

「そうなのか?最近変なテレビが流れてたぐらいで他はないか?」

「ええ……なかった」と思ったが一回だけあった。浅井さんが見つかる直前に私は鍵をかけ忘れてしまった。でもそれだけだ。津田に言うと

「……でもよ。本当にかけ忘れたのか?」

「あの時は寝不足だったし、閉め忘れだとは思うけど……」

「もし、鍵をかけ忘れたんじゃなくて盗まれてたら?お前は忘れたと勘違いしてただけでストーカーの野郎が侵入して要件を済ませた後、鍵を落としたように細工したって事はありえるよな?」

確かにそれはありえるかもしれない。なぜならその日の記憶ははっきりとしていない。落としたと勘違いしていた……そう思い込んでいる可能性もあるが。

「もし貴方がストーカーで同じ状況だったら何をする?」

私の問いに津田は驚いたような顔でこっちを見たが、すぐに考え

「……だったら、盗聴器か余裕があればカメラだな」

そう。私も同じ考えだ。だったら何故”感知式のセンサー”にしたのだろうか?仮にストーカーなら生活音や日常行動を知りたくなるはず。小型カメラや盗聴器の方が確実性がある。なのにこのストーカーは敢えて一定の場所に移動した時だけ反応する物を設置した事になる。

そう伝えると津田は「確かに……」とまた考え込んでいた。

センサーを設置する目的が“監視”だとしても、選ばれた手段がどうにも引っかかる。

盗聴器やカメラであれば、もっと多くの情報が得られたはずだ。

にもかかわらず、動きを感知するだけの、しかも特定の場所限定。

「しかも鍵が無かった時は途中で引き返してるから鉢合わせのリスクもあった」

仕事中だから必ず家にはいないはずだったが私は一度家に帰っている。そのタイミングで装置を取り付け設定も完璧に終了できるのか?

「正直ストーカーの運が良かったって事にはなるな・・・」

津田のトーンが少しずつ落ちて来た。納得はできないが私の家に誰かが侵入しこれを取り付けたのは事実で、これが何を意味するのだろう。

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