表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
古の庭で  作者: 槍田歩馬
第一章 幕開け
PR
7/24

第4話

一瞬過去編です

「どうしたの?」

 この一言で、私の人生は変わった。


 私は幼少期のほとんどを、陽の入らない家で過ごした。

 私の母はシングルマザーで、父の顔を知らずに育った。そして、母は、いわゆる毒親というやつだった。

 「あんたなんか生まれて来なければよかったのに」と母は私に何度言ったことだろうか。

 ありきたりな台詞だったが、当時の私にとって、家は世界だったから、苦しい日々だった。

 母が家に帰って来なくなって一週間ほど経った頃、家の食料も尽きて当てもなく外を彷徨い、近所の公園に辿り着いた。ベンチに腰掛け、楽しそうに遊ぶ子どもたちを虚な目で見ていた。彼らと自分の住む世界の違いと、そこにあるどうしようもない溝に絶望していた。

 その時、

「どうしたの」

と声を掛けられた。

 顔を上げると、目の前に長い白髪に、薄いシャツを着ていて、靴は草履を履いている大人がしゃがんでいた。

 確か、私は首を振ってこの大人を追い払おうとした。そうしたらその瞬間、お腹が盛大に鳴った。

「お腹が空いているんだね」

 するとその大人はポケットからお金を取り出して、しばらく考え込んでから仕舞った。余計な絶望を味あわされて怒りを覚えた。

 その人は手を差し出した。

「これからお昼ご飯を食べるんだけど、一人だと寂しいんだよね」

 その大人の優しい目に、勝手に涙が溢れた。

「ここで食べてもいい?」

 彼女に手を引かれて行ったのは例の教員寮だった。その頃はあと3人の人が住んでいた。

「えー、──先生、その子どうしたんですか」

「私の新しい友達」

「え」

驚きのあまり掠れて出なくなっていた声を上げた。

「お、ようやく喋った」

「誘拐は犯罪ですよー。なんつって」

太ったおじさんが笑って私の頭を撫でる。

「おじさんたちの分まで食べていっていいからね」

「・・・ありがとうございます」

 そこまで言ってから咽せた。「水持ってくるね」といなくなった女の人を待ちながら、彼女の『一人だと寂しいんだよね』が私を連れてくるための嘘だったことに気がついた。そうか、この大人は()()()()ではなく、()()()()()という理由にすることで、私を連れ出しやすくしたのか、と遅れて気が付く。

 ほれ、と水をたっぷり注がれたガラスのコップを渡される。

「ありがとう」

コップを受け取って飲み干す。

「何か食べたいものとかある?」

 何て答えるのが正解なんだろう。答えに迷っていると、私のお腹が盛大に鳴った。

「はは、じゃあ色々つくってあげる」

その人は驚きの手際で料理を何品もつくってしまった。

「すごい…」

「でしょ」

その人はドヤ顔をしていた。

 全部の料理を平らげて、このひとときの幸せを噛み締めていると、

「またおいでよ」

とその人は言った。

「え…」

 「そうそう、うちらも若い子がいると楽しいし」とおじさんたちも微笑む。

「…いいの?」

「もちろん」

 それから私の手を引いてくれた人が公園まで送ってくれた。

「お昼頃にこの公園にいるから」

「…うん」

 そうして、私のくらい生活に光が差し込んだのだ。

「ああ…私の名前は佐倉瑠璃。あなたは?」

 そう、その人こそ──瑠璃さんなのである。今と全く同じ姿でそこに立っていた。

「長田悠湖…です」

「ふぅん…ハルコ、ね。素敵な名前だ」

 その瞬間、私は魔法にかかった。瑠璃さんがとても愛おしく思えて、夢中になった。

 それからもひと悶着あって──


「…おーい、悠湖?」

「ふぇ?」

 昼寝から目覚めると、目の前に瑠璃さんの顔がある。

「なんでうちにいるんです?」

「だって合鍵あるし」

 答えになっていない…と内心ため息をついて起き上がった。

「ほら例の新任が寮にいるから、迂闊にくつろげないっていうか。やっぱり悠湖が一番だわー」

「…ふーん」

「どうしたの?何か嬉しそうだけど」

「…別に?」

 えーどうしたの?と笑う瑠璃さんを見て、私はなぜだか、とても嬉しかった。

まずはこの作品を手にとって(クリックして)下さりありがとうございます。

もし、「面白そう」「続きが気になる」と少しでも思っていただけたのなら、ぜひ 「ブクマ」や「評価」 を押して頂けると幸いです。

(切実に!待ってます!)

拙い文ですが、これからも頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ