第3話
「え、佐倉先生の、彼氏?」
「いるかどうかだけでもいいので・・・」
最近の子ってこんなに積極的なのか、と感心したけれど、「自分で訊いたら」と返した。
「本人の口から聞いたほうがいいよ」
彼の夢を壊すのが可哀想だから・・・というのが主な理由である。
実は瑠璃さんは遠い昔に結婚したことがあると言っていた。まあ彼女が遠い昔、と言うのならば何百年、あるいは何千年も昔のことなんだろう。だから今は当然未亡人だし、前に結婚願望とかを訊いてみたら、「もうこりごりだ」と言っていたので、確実にフリーではある。ただ彼が振り向いてもらえるかというと、それは天地がひっくり返りでもしないと起こり得ないだろう。
「そうですよね」
佐野くんは少ししょんぼりした。ちょっと可哀想ではあるが、仕方がない。
そうこうしているうちに搬入が終わった。
「お手伝いありがとうございました!」
「いえいえ。4月からよろしくね」
男性寮と女性寮の間にある食堂でお茶を飲む。
「お疲れ様!」
そこへ瑠璃さんが来た。暑いのか上着をパタパタしている。
「あちー」
そう言って瑠璃さんが上着を脱ぐと、Tシャツの袖が捲れて痛々しい傷跡が見えた。
「えっ・・・」
佐野くんも見えてしまったようで、目が動揺している。私は何度も見たことがあるけれど、どう言った経緯でその傷がついたのかは教えてくれなかった。
「ああ、これ?」
佐野くんの表情を見て瑠璃さんがさらに袖を捲った。
「この傷、肩まであるんだよねえ」
そう言うと瑠璃さんはへにゃりと笑った。佐野くんは俯いている。
「ごめんね、お見苦しいもの見せちゃって」
さすがに瑠璃さんは佐野くんを気にかけて声を掛ける。
「いえ、かっこいいです!」
いきなり、佐野くんがバッと顔を上げて言った。
「か、かっこいい?」
「はい!歴戦の戦士みたいです!」
目が輝いているので、本心みたいだ。
「そうかな?そう言ってもらえると嬉しいけど」
瑠璃さんは怯えさせると思っていたらしく、少し驚いていた。でも、口元が少しだけ、笑っていた。
「それじゃあ、また4月からよろしくお願いします!」
佐野くんと別れた後、瑠璃さんと瑠璃さんの部屋で話していた。
「どうだった、彼は?」
「まあいい子だと思いますよ、明るいし。瑠璃さんの学校モードを素にしたみたいな子ですね」
「素じゃなくて悪かったね」
瑠璃さんの口元がにやけていた。
「よかったですね」
「ん?」
「傷」
「ああ・・・」
今まで瑠璃さんは、傷を気にして生きてきたということを、私は知っている。もちろんそれは、目に見えるものだけではない。それを知っているのは、今現在瑠璃さんの周りでは私だけだ。
「いい子だね」
「ええ。あ、あと瑠璃さんに惚れたみたいですよ」
「は?」
瑠璃さんは頭を抱えた。綺麗な白髪が光を反射する。
「嘘だろ・・・」
そう、これが瑠璃さんの素。佐野くんみたいなのとはテンションが違いすぎるんだ。だから、瑠璃さんが佐野くんに振り向くことはない。そう言い聞かせて、ふと我に返る。
別に、いいじゃないか。瑠璃さんは誰かパートナーがいた方が幸せなんじゃないだろうか。なのに私は、なんでこうも彼が瑠璃さんに近づくのが嫌なのだろう。
──嫉妬、なのか?確かに私は、自分が誰よりも瑠璃さんを知っているという自負があるけれど、嫉妬は良くない。
本当に、自分の器の小ささが嫌になる。
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(切実に!待ってます!)
拙い文ですが、これからも頑張ります!




