第19話 クビ
第二章「潜入編」が始まります!
どうぞ引き続きよろしくお願いします!
ある職員会議でのことだった。
「…よくもこの忙しい時期に有給取ってくれたわね」
と有給明けの瑠璃さんに校長が言った。
「有給は労働者の正当な権利ですよ」
と瑠璃さんは言う。
それはそうだ。でも、中間テストと採点をすべてパスするのは良くない。皺寄せが全て私に来たのだから…。
「それはそうだけど…まあ本題はこれからなんだけどね。まああなたが休んでいる間に事情が変わりました。だから…」
「だから?」
「あなたクビね」
えええー!!と職員室中にどよめきが広がった。私も驚きだし、佐野くんなんて校長に掴みかかった。
「どういうことですか…!」
「そうだよ田中ちゃん。ちゃんと説明しないと他の皆が有給取りづらくなるでしょう」
瑠璃さんは佐野くんを引き剥がして言った。
「あ、他人事と思わないようにね、御酒先生、あなたも関係する話だから」と校長がこちらを見て言う。
「ええ…」そんな、無職になるなんて、と半ば冗談めいて返す。
校長はまあふざけた人ではあるが理不尽なことはしない。
…え、そうだよね…?と少し不安になる。沈黙が長いよ…。
「言い方が悪かったね…まあ二人とも、異動ってこと」
「なーんだ、って…今の時期にですか?」
と私が尋ねる。
「ちょっとヘルプが来てね」
「…ということは、雲雀ヶ淵ですか?」
雲雀ヶ淵学園は、中高一貫校で、うちの学校──鶯川学園の姉妹校だ。偏差値はうちよりちょっと低い。あまり差がないようで、雲雀ヶ淵のほうが治安が良かったりする。まあ学費が違うのだが…。うちの娘──十和も行っている。
「教師が今年度に入ってから10人辞めたんですっけ」
「そうなのよ」
娘から少し話は聞いていた。今年いきなり10人の教師が辞めていったのだ、と。原因は正式にはわかっていない。が、娘曰く──
「かわいい妹の頼みじゃ、ね」
そう、雲雀ヶ淵の校長は田中ちゃんの妹──結婚して苗字はちがうが、横田さんという人で、田中ちゃんより真面目ではある。そして田中ちゃんは妹さんに弱い。
「じゃあ、僕も連れていって下さい~」
と佐野くんが言った。
「御酒先生は僕の教育係なんですよ?だからいいじゃないですか」
これは絶対瑠璃さん目当てだ、と思った。でもふざけているようで、顔は真面目だ。
「そう言うと思って、佐野くんも異動です」
職員室が再びざわついた。
「一体何人送るんですか!?」
「それじゃあこっちが教員不足ですよ!」
「佐倉先生がどれだけ業務をしていると…」
と皆口々に言う。
「はい、だから大江先生が復帰されます」
と校長が言った。
「快く引き受けて頂きました」
おお、と歓声が沸いたが、でも一人か…という落胆も聞こえる。
「はい、皆さん頑張ってくださいね。私も教壇に立ちますし、ね?」
と校長が言って教員会議が終わった。




