第15話 今度こそ
今回は前回の続きです
「…え?」
「それだけは、言いたくて」
じゃあ、と言って佐野くんは立ち去った。
「は?」
佐野くんは今何と言った?
それまで考えていたことも一瞬忘れて、顔が一気に熱くなるのを感じた。
混乱しながら自分の部屋に戻ってソファーにどかっと座る。
今までも私を好きだと言ってきた人は何人もいたけれど、彼らの末路は決して良いものではなかった。そういう運命なのだ。
私は何度も運命を変えようとしたけれど・・・手を加えれば加えるほど、手に負えないものになってしまう。その度に、嘆き、悲しみ・・・もうどうにもならないものだ、と諦めている。
──ならば、ますますこの学校には居られない。私は押入れからスーツケースを出して、必要最低限のものだけを中に詰めた。本当は離れがたいものも沢山ある。けれど──今度こそ、守るんだ。
『今日から貴女の名前は佐倉瑠璃よ。ほら、あなたにぴったりでしょう?』
あの子は、もう居ない。そして、私の大切だったあの人、あの子──失ったものを振り返り、手を伸ばしても、そこにあるのは悲しさと虚しさ、そしてどうすることも叶わない後悔だけだ。戻りたい日々が沢山ありすぎて、でも、あの日、あの時があったから私は今ここに居る。
「・・・リュカ、ヴィオレッタ・・・」
どうしてだろう、悠湖や佐野くんを見ていると、懐かしい君たちを思い出すよ。君たちに伝えたいことがいっぱいあるんだ。嬉しくなって、ふと振り返った時には、もう居ないのに。君たちはもう死んでしまって、もうどこにも居ないのに。・・・今更気がついても遅いなあ。
やはり運命というのは残酷だ、と思った。
寮を出て、門をくぐる。学校を離れることで、田中ちゃんたちに迷惑がかかるのは承知の上だ。でも、死人がまた出るよりはいいでしょう?
「ごめんね」と学校を振り返らずに言った。
君との約束も、破ってしまうな。
すると、走ってくる足音と荒い息が聞こえた。
「る、瑠璃さん!」
悠湖だった。
「ああ悠湖、迷惑をかけるね。じゃあ・・・」
出来るだけ、悠湖の顔を見ずに別れを告げた。
「行ってしまうんですか」
悠湖が言う。
「うん、まあ長居しすぎたかな。こんなに一つの場所に留まったことなんて無かったよ。もう悠湖も立派になったし・・・」
言っていて、言葉に詰まりそうになる。でも、平気を装って声を振り絞った。
「だから、もうお別れだ。私の人生の短い間だったけど、私は悠湖と過ごせて楽しかった。元気でね」
悠湖、君のことは守るよ、今度こそ・・・




