第14話 憧れは昔から
今回は瑠璃目線の話です
「…佐倉先生、出ていかなくて良いですよ」
と佐野くんが言った。悠湖が帰ってしまった後だった。
「ていうか佐倉先生、僕のこと舐めてますよね、基本的に」
そう言うと佐野くんは私を壁に追い詰めた。
「『どうせ佐野くんはアホっぽいから、適当なことを言っておけば信じるだろう』…合ってますか?」
…ギクリ。駄目だったか。こりゃまた悠湖に怒られるな、と思ってふと思い出す。ああ、悠湖は…
もう会ってくれないかな。あの子は優しいから、気にしない、と言ってくれたけれど、私が兄を殺したと告げた瞬間の表情は、怯えに他ならなかった。知っていた、そんな顔させることくらい。
「不老不死…なんですか」
佐野くんはポツリと言った。思わず顔を上げて佐野くんを見る。出会ってから初めて見せるような、真剣な顔だった。
「覚えてますか、僕と佐倉先生が初めてあった日を」
「…やっぱりあの少年か」
心当たりばあった。あれは…そう、7年前のことだった。
私は珍しく外出していた。大体そういう時はろくなことがない、とは分かっていたが、寮の食料が尽きたのだ。
道を歩いていると、悠湖と出会ったあの公園の前に差し掛かった。
すると公園から喧嘩の声が聞こえてくる。
『舐めた口きいてんしゃねえよコラァ』
いまの世の中では珍しい典型的な不良だな、と思って覗いてみる。
髪を金髪に染めた少年が2対1で殴り合いをしていた。1の方の少年の後ろには、黒髪の地味な男子が立っている。
『あ?だからテメェがなにやってんのか聞いてんだよ』と少年が言うと、
『ちょっと絡んだだけじゃねえか、関係ない奴は引っ込んでろ』
『怪我したくなきゃ帰んな』と2人の不良が口々に言った。
『こいつはうちの学校の生徒なんだわ。こいつに非が無いなら…その喧嘩、俺が買ってやるよ』
そして殴り合い。子供って何故こんなにも下らないことするのかしら…と頭を抱える。
『うわぁ』
黒髪の子が叫んだのを聞き、もう一度見るとその子が殴られかかっていた。卑怯な、と間に割って入ろうかとしたその時、殴り合っていた少年が庇って殴られた。
『お前、生意気な口きいた癖に弱っちいなぁ』と2人の不良が口々に言った。
ちょっと見てられないな、と思った。
『…うっせえな』
と殴られた少年が言う。
『そんなに弱い奴虐めて楽しいか?そうか、てめぇらは弱いから、もっと弱い奴探さないといけないのか』
『じゃあ俺らにボコされてるお前はそいつと同類だな』
『そういうのは自分が勝ってから言うんだな』
『…違えよ』
少年は立つ。
『俺は強えから、てめえらに手出ししねぇんだ、精々吠え面かいとけ』
そう言って少年は笑った。
『…痛快だな』
気が付くと私は少年の肩に手を置いて、間に入っていた。
『あ?』
『誰だてめ』
私は2人を制圧して、2人に振り返った。
『大事ないか、少年たち』
その後、公園のベンチで金髪の少年と話した。不良たちは逃げ帰った。
『…俺は別にあんたに助けてもらわなくても本気を出せば勝てる自信があったし、実際勝ってたと思う。あれは俺の相手だった。でも…ありがとう』
とその少年は言った。
『なかなか礼儀正しいじゃないの』
と感心して言う。
『…俺は世の中の理不尽が嫌いだ』
『私もよ。でも、暴力じゃ解決しないことも沢山ある。まあ、そういうのを正すのは…ある意味教師の仕事だね』
『あんた、教師なのにあんなに強いのか?』
少年は顔を上げた。
『ふふん』
『その棒っきれで…3秒もかからずにあいつらを倒しただろ?俺にはそんなこと出来なかった。』
『まあ剣は昔から得意なんだ』
棒はそこらへんに落ちているのを拾っただけだが、運が良かった。
『…俺を舎弟にして下さい!』
公園の地面に土下座する。
『嫌だね。暴力で訴えかけるやつは嫌いだ。10年くらいしてから出直しな』
私がそう告げると、少年は落胆したものの、気を取り直してこう言った。
『…わかりました。待ってて下さい!!』
『えー…』
生きてきた中でトップクラスに面倒くさい奴だ、と思った。
「あの時佐倉先生に出会ったことで、僕は教師になろうと思ったんです」
と佐野くんが言った。
「それにしても、言葉遣いとか大分良くなったね」と私が言うと、
「じゃあ僕、佐倉先生に言いたいことがあります」
と佐野くんは顔を赤らめた。
どうせ今度こそ舎弟にしてほしいとか言うのだろう。と思って「どうぞ」と言う。
「僕…佐倉先生のことが好きです!」
「…え?」
続く




