第11話 その人を知るということ①
来たる週末。教員寮に私たち三人は集まった。
「・・・今日はお集まりいただきありがとうございます」
と、瑠璃さんは言った。まるで何かのプレゼンのようだ。
ごぐり、と唾を呑む。
瑠璃さんはどう言うのだろうか。
『え?不死身って伝えるのを止めろって?』
昨日、私は瑠璃さんを夜呼び出して説得したのだ。
『佐野くんが、いくら良い人でも、混乱させて、余計な危険に巻き込んでしまうかもしれないでしょう?』
と言って。
『じゃあ何て説明すれば良いのさ』
『それは・・・これから考えましょう。まあある程度穴のある説明でも、瑠璃さんが言えば佐野くんなら信じそうな気がします。インパクトのある感じで・・・』
『・・・わかったよ』
と瑠璃さんは渋々了承してくれた。一応、広めたくはないと思っているのだろう。
「実はね、佐野くん・・・御酒先生・・・悠湖には言ってあるんだけど・・・」
瑠璃さんが私に目配せした。
「私は、超完璧超人なのです!」
思わず、吹き出そそうになった。
「実は私は全教科の教員免許を持っているし、大体の言語も話せる。何ならラテン語も話せる」
「ほえ!凄いですねえ!でも佐倉先生なら出来る気がします!」
良かった。何とか通じているようだ。まあ今のところ嘘は言っていないし。
膨大な時間を持っている瑠璃さんは全教科の教員免許を持っている。一応外見が外国人だから、それっぽい英語科を名乗っているのだ。でも人手が足りない時などは、ヘルプで教えたりもする。
そして大体の言語を話せるというのも真実だ。英語と日本語はもちろん、ドイツ語、フランス語などのメジャーなものからスワヒリ語まで、さらには失われた言語も話せるんだとか。
「あと、大体のことは出来る。陰陽道的なことも」
ん?話が逸れている気がする。大丈夫なんだろうか。
「陰陽道には神通力っていうのがあるんだけど、あ、知ってる?」
「い、いやあんまり・・・」
佐野くんも困惑しているようだ。私も困惑だ。
「それの一部の力で、過去とかがわかるのよ。だから生まれ変わりだの何だの、わかるの!」
・・・大分雑な説明過ぎないか。とか、とか何だの、とかあまり説明で使ってはいけない気がする。
「へー!凄いですね!僕も修行したら使えます?その陰陽道」
「んー、努力次第?」
「頑張ってみます!」
これもまた通じたみたいだ。というか、瑠璃さんは頑張って説明を考えたのだろうが、お兄さんの生まれ変わりを10回見た発言の理屈が通っていない。お願いだから、気付かないでくれ・・・と願う。
「じゃあ佐倉先生は、凄い力を持ちすぎて、その毛利さん?とかいう人に命を狙われてるんですね・・・」
何故か独自の解釈で納得したようだ。
「それで、本題なんだけど、私は、もともと戦場の兵士だった。だから、今までに沢山人を殺している。その前提で聞いてほしいんだけど・・・私は兄を殺している。」
空気が凍った。初めて聞く、瑠璃さんの過去だった。
「だから兄は・・・私を恨んでいるだろうね」
「・・・」佐野くんも黙ってしまった。
そりゃあそうだ。惚れた人が、いくら兵士だったからって人をたくさん殺していて、実の兄も殺している・・・と聞いて普通のリアクションを取れるわけがない。私だって、驚いている。
「・・・ああ、佐野くんも、こんな殺人鬼と一緒の建物で住むなんて嫌だよね・・・明日にでも出て行くから。いや、教員も辞めるよ」
何も言えなかった。でも、瑠璃さんが教員を辞める必要がないっていうことだけはわかる。流石に何百年も前のことだ。それに、兵士だったのなら仕方がない。でも・・・瑠璃さんを恐れてしまっている私がいる。
それに、不老不死を隠したことで余計、状況が悪くなってしまっていた。これなら明かそうとしたのも頷ける。私は余計なことをしてしまったんだ。
言うんだ。そんなことないって。瑠璃さんは恐ろしい殺人鬼なんかじゃないって。でも、言葉が出ない。
「悠湖も・・・ごめんね。気持ち悪いよね・・・」
子供時代がまるで走馬灯のように思い出された。
『あなたの子供を下さい』
あの日、私の人生の分岐点。瑠璃さんの、声。
続く




